セイレネス・ロンド/歌姫は幻影と歌う

作者 一式鍵

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★★★ Excellent!!!

おお、赤毛の少女よ、汝は神を殺す金枝であるか

 温度を感じる作品と出会った。

 冷徹なまでに終焉を予感させるストーリー、兵器から繰り出される無慈悲な炎の熱さ、武器のひやりとする硬質な手触り、次々と失われていく命の温度。
 境遇からくる感情の烈しさ、淡い恋も大切な絆も、日常を照らす陽の光のような柔らかな温もり。

 歌姫が奏でる調べの流るる先。
 ロンド――輪舞曲。
 物語は繰り返し、運命の輪を回す。
 少女は、全てを失い抱擁と共に再生す。

 ああ。高みより、外れた枠より世界を描く者たちよ。失うことが、少女の過酷な運命だと言うのか。

 星を、大地を焼く核さえ凌駕しながら、人間はどこへ行き着くのか? 黄昏を待つ終末か、狂気の果てか、それとも神の座か。

 321,273文字98話、重厚というより重唱と呼ぶべきだろう。
 オペラなのだ、この作品は。
 遊びはあっても無駄を感じない、密度の高い構成。登場人物たちの個性や配置の妙もさることながら……旧きあの日に置き忘れた中二病をくすぐる言葉の数々。

 イタイ? いいや。あの頃、私達は本気で格好良いと思っていたはずだ。その感情を喚起させる、この歓喜よ!

 Web向きではないのかもしれない。読者に問い、試し、或いは要求する作品かもしれない。だが、それだけのクオリティであることは保証させて頂く。

 もうひとつ、温度と出会った。
 それは、作者のこの作品に込めた熱量である。