セイレネス・ロンド/歌姫は幻影と歌う

作者 一式鍵

★★★ Excellent!!!

湖面上、輪舞を踊る白鳥のように美しい作品。その水面下では……

 まず、クールでそつのない美しい文体、一見なにげない表現の選択のセンスに魅せられました。そして、その文体や表現を実現するための、一式さんの確かな知性と膨大な知識、人生において積み上げてきた並大抵でない努力の痕跡に、心が震えました。美しい白鳥が華麗に泳ぐとき、水面下で必死に足を漕いでいる。よく使われるメタファーですが、一式さんのためにあるような隠喩です。

 参照している既存のテキストすべてを把握したわけではありませんが、神話、哲学、文学等への、中二病的な(褒めてます)アプローチは、知識欲を刺激し、知っている人にとっては心の中でほくそ笑む楽しさもあろうかと思います。

 構成としては序盤の引きが若干弱く感じられたのですが、その日常的な空気が、中盤において常軌を逸脱してくる際の衝撃と興奮をお膳立てしており、その逸脱ぶりが後半にかけて天井知らずにエスカレートしていく様は、凄まじいの一言に尽きます。だから序盤で見切りをつけずに、最後までちゃんと読んで欲しいです。

 未知のOSを駆使し世界を支配する超越的な一人の人間は、繰り返される永劫の回帰の中、どのような決着を望んでいるのか?彼の左手と右手に座し、彼の思惑に干渉する悪魔(のようなもの)と天使(のようなもの)の存在は何を起源(ヒントはある)とし、彼を、人間を、そして世界をどうしたいのか?必死に足掻きながらも、今はそれらに翻弄されているだけのように見える少女たちと、彼女らを取り巻く登場人物たちの運命は?第2部以降に引き継がれるこの尋常ならざる物語を、一ファンとして見守りたい。そんな気持ちになりました。

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