セイレネス・ロンド/歌姫は幻影と歌う

作者 一式鍵

★★★ Excellent!!!

奥深い知識と洞察で世界を根本から再構築した超本格SF!!

神話や古典文学のふんだんな引用が格式高い雰囲気を醸し出す本作品。
哲学、物理学、情報科学の非常に深い造形を軸に世界を再構築する試みが、単なる「らしさ」の演出ではなく、一本芯の通ったどっしりした読み応えの超本格SFを下支えしています。
ストーリーの骨格においては、民主主義の末路として生み出された自信過剰な愚者たちのマジョリティを巧みに利用した政治的駆け引きから、最前線における刺激的な戦術のぶつかり合いまで、極限まで練り込まれた高度な応酬を全レイヤーでたっぷり楽しむことができます。

頂点に君臨するのは、人々が当たり前に受け入れている倫理の裏に隠れた身勝手さ、蒙昧さを丸裸にし、巧みに付け込んで世界を思いのままに操る超越者たち。
森羅万象の理を見抜き、巨視的に無謬の論理を備えた彼らは、まさに王であり、神であり、悪魔と呼ぶに相応しい存在。
愚者に彼らは刺せない。鋭利な知性を以て迫らなければ彼らには届かない・・・
しかし恐らくそれだけでは駄目なのだと思います。
原始的で、感覚的で、論理が意味をなさないもの・・・彼らにとって微視的な揺らぎこそが、一矢報い得る刃となるのでは・・・少年少女たちの繰り広げる心温まる人間ドラマに、そんな予感を抱きました。

赤毛の少女のために催された「儀式」。
計画の最終段階において、彼女にはさらなる供物が用意されるのではという不吉な予感も抱いてしまう展開ですが、自棄にならず、生きている者が互いに支え合って、迫りくる危機をどうにか乗り越えて欲しいと願わずにはいられません。

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