#09-エピローグ

#09-0:フィーネ

三人目のディーヴァ

 ジョルジュ・ベルリオーズは、バルムンクの形成した闇の中に立っていた。


 まったくもって独創性のない。


 そこには大きな落胆があった。


 アーシュオンによる大量虐殺。そしてセイレネス。


 持ち上がる反撃の機運。専守防衛を旨とするヤーグベルテが、その主張を翻す。


「そうであるなら、僕は僕のやり方で介入させてもらうことにするよ」


 ベルリオーズは虚空に囁いた。


「ふふ、いいだろう」


 そして、右手をついと持ち上げた。


「バルムンク発動アトラクト


 呟きと同時にその指先から光が始まり、やがて空間全てを白に塗り替える。そこには黒髪の少女が浮かんでいた。見た目の年齢はヴェーラやレベッカと変わらない。美しく輝く黒髪に、暗黒色の瞳、白磁のような肌――その黒一色のドレスを含めて、全てが作り物じみていた。


ARMIAアーミア活性化アクティヴェート


 そのつぶやきに反応して、少女――ARMIAは、ベルリオーズの顔を見上げた。まるで機械のようなその動きを見て、ベルリオーズは薄い笑みを浮かべる。


 ARMIAとは、Ante-Reviced Meta-Intelligence, Apprecator、即ち『変異する知性、そして鑑賞者たる者の新しき鋳型』の頭字語アクロニムである。


 ARMIAはその可憐な唇を動かした。


「おはようございます、創造主デーミアールジュ


 その硬質な声こそ、彼女の初めて発する音だった。ベルリオーズは赤い目を細めた。笑ったようにも見えた。


「おはよう、待たせたね」


 三人目のディーヴァ――。


はミスティルテインにはなれなかった。でも、エキドナにはなるだろう」

「エキドナ?」

「そう。だよ」

「母?」


 首を傾げる少女。ベルリオーズの左目が微かに輝いていた。


「セイレネスの発動アトラクトが、第二世代の歌姫たちの目を覚ます。そしてそれは――」

創造主デーミアールジュよ」

「なんだい、ARMIA」

「世界は、変わりますか?」


 その問いに、ベルリオーズは思わず声を立てて笑った。


「面白いことを訊くね」


 ベルリオーズのその皮肉めいた言い方にも表情を変えず、ARMIAが問い掛けを続ける。


「永劫なるツァラトゥストラの回帰の環は――」

「君たちが」


 ベルリオーズはその言葉に割り込んだ。そして、ゆっくりと、言った。


「それを破壊するのが、君たちなのさ」


 ベルリオーズの左目の輝きが強まり、白の世界を赤く塗り潰していく。


「さぁ、始めよう」


 ベルリオーズは短く、そう宣言した。

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セイレネス・ロンド/歌姫は幻影と歌う 一式鍵 @estzet

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