357 夢幻戦記 14 総司紅蓮城(下)
2005.12/ハルキ・ノベルス
<電子書籍> 無
【評】 う
● ホモ小説じゃなかったの!?
芹沢鴨暗殺に成功した土方は、続いて隊内に潜む間者を一掃すべく、楠小十郎を原田に暗殺させる。だが何者かによって暗殺の現場に呼び出された総司は、町娘にその姿を発見され、土方は総司に娘の始末を命じる――
というわけで、自分が初めて読む巻に突入である。
芹沢鴨をあっさりと暗殺して「え、とりついていた蛙の妖怪(ただし蛙ではなくアメーバ)はどうなったの?」という気持ちのまま、丸々二年刊行されず、惰性で読んでいた読者離れを起こしていよいよ誰が読んでいるのかわからなくなってしまった。自分にいたってはなんと13年を隔ててようやく続きを知ることになるわけである。うわーい、ワクワクするなー(棒)
さて、そんな14巻の内容だが、総司がポッと出の女と京都デートしていちゃいちゃするのがメインである。
え、これまで13巻以上ずっと男に狙われ続け周りの人間のほとんどが「ホモじゃないけど総司可愛い」と言い続け総司も「ホモじゃないよホモじゃないよ」って云い続けていたのに、本当にホモじゃなかったの!?と驚愕する。つうか男女の恋愛求めてる人はここまでの13冊のホモ臭さにもう脱落してると思うし、ホモだと思って読んでた人的には唐突に地雷が降ってきたような感じだとおもうんだけど、それでいいの?
が、落ち着いてほしい。まだあわてるような時間じゃないのだ。栗本薫は受けキャラが掘られる前に女相手に童貞を捨てるというよくわからん展開を、なにかの儀式のように繰り返す人でもあるのだ。これはむしろ逆に本格ホモ化の前兆にちがいないのだ……!いやまあ、これは半分冗談ですけどね(半分は本気)
ともあれ、芹沢鴨についてた妖怪どうするのかなと思ったら本当にどうもならずそのままフェイドアウトしたのはおどろいたが、回公爵アスタロトである楠の暗殺といきなり話が進み、さらに原田左之助が暗殺の段になって総司に何者かに操られてるかのような悪意を見せたり、あっさりと肉体を捨てたアスタロトがなにを企んでいるのか怪しかったり、その暗殺の目撃者を消しにいったところで目撃者と恋愛めいた関係になったり、彼女ができると総司が急に土方の命令に反発意識をおぼえたり……と、このシリーズとしてはなかなか話の展開が早く、史実で新撰組が本格始動する時期に作品独自の設定も同時に動きだすことによって、いよいよおもしろくなるのだろうか、と思わせてくれる。
が、良くなりそうな予感はあるがこの巻自体が面白いかというと、なぜか面白くはない。なぜかって、原因はわかってるんですが、単純にこの総司の彼女となる新キャラの町娘・お揚にまったく魅力を感じず、見ていて面白くないからだ。
沖田総司の死の前年に新撰組の菩提寺的な寺に葬られた、墓碑銘に「沖田市縁者」とのみ書かれた身元不明の女性にあたるキャラなのだろう。その人物像は、栗本薫の受けキャラが女を作ったときのいつものアレとも云える、ハッキリとものを云う年下の女である。『朝日のあたる家』の亜美といい、『いとしのリリー』のノゾミといい、本当に薫は受けにはこういう女しかあてがわない。
そして悲しいことに、この手のキャラは書かれた年代によって露骨に魅力に差が出ている。今作のお揚はいつものキャラにはんなりとしているけど譲らない京女のしたたかさは足しているのだが、なんというか、率直にいってどうでもいいとしかいいようがない。これはもう栗本薫はホモ好きすぎて基本的に女性キャラに魅力があるのが少ないのだから仕方がない。
このタイミングで彼女を作るというのは、物語の構成的には良いと思うんだけどね……いままでがホモ臭すぎていきなりそんなこと言われてもねって感じがね……。
ま、しかしこの巻はいろいろな布石の巻だ。毎回云っている気がするが、次の巻あたりで物語が大きく動きそうな予感がある。なにより新撰組としての活躍はこれから始まるところなのだ。ようやくスタート地点にたどり着いたこの物語は、果たしてどこへたどり着くのか……なんにも起こらないまま14巻も読んでしまったから、いまさらまったく目が離せないぜ!
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