295 夢幻戦記9 総司星雲変(上)

2001.03/ハルキ・ノベルス

<電子書籍> 無

【評】う


● 新撰組、ついに誕生(か?)


 幕府のためと偽って江戸浪士隊を京に連れてきた清河八郎は、勤皇の意をあらわにし、朝廷の命により浪士たちは再び江戸に戻ることとなる。試衛館一門をはじめ、不満をもった浪士たちはたもとを分かち、京にとどまる道を模索するが――


 京の八木邸で始まる新生活。上洛早々くだる下京命令。揺れる浪士たち。総司へのコンプレックスから離反の萌芽を垣間見せる藤堂平助。総司の中からいなくなる東海公子(三巻ぶり二度目)。史実にはない土方・沖田による清河暗殺未遂――と、ストーリーラインだけを追うと、決してまずくはない。むしろ順当に推移していると云える。

 が、異様に展開が遅く、特にこの巻の山場と云えるようなところもないため、とにかく退屈である。同じストーリー展開で三分の一の文量におさまっていたのなら不満はなかったろうが、「前も聞いたよ」というような説明が何度もくりかえされ、「おじいちゃん、おんなじことばっかりしつこいよ」というセリフばかりが続き、ストーリーがちょっと進むたびに物思いにふけられるため、本当に退屈だ。

 前巻より一年以上発刊ペースが空いたことや、いつもより一割以上減ページされていることから察するに、新撰組発足という重要な部分を書くにあたってかなり悪戦苦闘し、及び腰になっていたのだろう。しかし本当に退屈だ。寄り道をするならまだいいが、ひたすら引き伸ばされるのはやはり辛い。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る