261 夢幻戦記 4 総司斬月剣

1998.10/ハルキ・ノベルス

<電子書籍> 無

【評】 う


● 空気のような文体から空気そのものの内容へ


 初めての人斬りで負傷した総司は医師のもとへ運ばれ、療養に勤しむ。だが退院のとき、医師は引き取りにきた山南に、総司が労咳であることを告げる――


 一章は労咳発覚。

 二章は猫トーク。

 三章は芹沢鴨登場と未来人清河八郎のネタバレトーク。

 四章は土方の特に意味のない長口上。


 おそろしく内容がない。

 ストーリーらしきものが進むのが三章くらいで、それも伏線めいたものがほとんどで読んでいて楽しいシーンではなく、読みおわった瞬間に「……なに書いてあったんだっけ……?」と真剣に考え込んでしまうような無内容ぶり。完全に読まなくても良い巻である。二巻目からすでに話が薄かったが、一巻ごとに着実にどんどん薄くなっていくことに戦慄すらおぼえる。

 読まなくてもいい巻というと、普通は本筋とは関係のない寄り道であったりとか、コメディ回であったりとか日常回であったりとか、それなりに説明のできる話が多いのだが、この巻は寄り道するでもなく、笑えるでもなく、アクションがあるわけでもなく、恋愛やエロがあるわけでもなく、ただなにか文字が書いてあって読んでいるときは読解しているつもりだけど、読み終わってみるとなにも書いていないも同然であると気づくという、まるで騙し絵のような存在だ。

 文体はストーリーを楽しむために空気のようであるのが理想だ、と往年の栗本薫は云っていたものだが、本作は内容が空気を極めてしまっている。本当になにも起こらない無内容な文章を書けるこんなに長く書ける人を栗本薫以外に見たことがないので、すごいのかもしれない。

 あまりにも内容がないので、レビューに書くこともないですね……。一章で「男に言い寄られたことはない」と云っていたのに三章で「つけ文をもらうこともままあった」と書いてある安定の矛盾ぶりとか指摘しても虚しいしね……。でもこのシリーズ、この先もずっとこの無内容が続くんだよなあ……。レビューの限界を感じるわ……。

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