086 伊集院大介の私生活
1985.11/講談社
1988.09/講談社文庫
【評】うなぎ
● 大介のいい男ぶりに萌える
伊集院大介シリーズ短編集第二弾。
『伊集院大介の追憶』『伊集院大介の初恋』『伊集院大介の青春』『伊集院大介の一日』『伊集院大介の私生活』『伊集院大介の失敗』以上六編収録。
『伊集院大介の追憶』は、学生時代の大介が利用した高利貸しのゴウツク婆さんが殺された、という話。
人に煙たがられる孤独な初老の女性の悲哀をさりげなく描くとともに、ぼんやりした学生時代の大介に萌える。
『伊集院大介の初恋』は、恋愛に興味がないと噂された大介が「僕だって初恋くらいありますよ」と語る学生時代の話。
大介が若い時分から恋愛向きではない変態だと云うことがわかる、ちょっといい話。
『伊集院大介の青春』は、大介の大学時代の友人が、昔の事件と当時の大介を思い出す、という話。
事件内容自体はどうでもいいんだけど、ラストの「それがもう十七年も前になる。しかし彼だけは変わっていないだろう」的な台詞は良かった。世俗に生きている人間であるからこそ、「その人」だけは、別の存在であるはずだと信じたい。
ちなみにこの話の語り手は、『ネフェルティティの微笑』の主人公の兄、という微妙なつながり方もファンには心憎かった。
『伊集院大介の一日』は、もうストレートに、そのままに、特に大きな事件もなく、ただ伊集院大介の一日を描写した作品。
萌え。大介萌え。ぼんやりした学者系偏屈お人よし探偵萌え。
『伊集院大介の私生活』は、大介がなんかこそこそしているので森カオルと山科警部補がストーキングしてみたら、山手線は三周するわ女性週刊誌を買うわおばあちゃんをストーキングするわで大混乱、という話。
ストーリー自体はともかく、今は亡き雑誌「微笑」を、栗本先生の私怨も込みでめたくそに書いているのが笑える。(栗本先生は旦那を略奪愛したときに、「微笑」でぼろくそ書かれたのです)
『伊集院大介の失敗』は、若き大介の放浪時代、別荘管理のアルバイトのため、軽井沢にこもっていた時の事件。
しっかり事件を解決しておきながらやっぱり失敗談でもある、ちょっとビターな話。後手後手にまわって結局あんまり役に立たないこともある金田一耕助とはちがうのですよ、とでも云いたげな大介のスタンスがわかっていい感じ。
全体的に、ミステリとして特筆する部分があるわけではないが、大介萌えである。
大介、森カオル、山科警部補のトリオも安定感がある。伊集院大介の助手役は森カオル→伊庭碌郎→アトムくん、と変わっていくのだが、結局、初代の森カオルが一番良かったわけですね。
作者を模したキャラだけに、使いつづけるのが面映かったのかもしれないが、しかし、大介に対して、恋心とも家族愛ともなんともつかぬ感情を持っていることが、文章の端々から伝わるようになっており、そこがシリーズのサブストーリーとしてうまく機能していた。
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