014 優しい密室

です

014 優しい密室

014 優しい密室


81.01/講談社

83.08/講談社文庫


【評】うな∈(゚◎゚)∋


● 優しさにあふれた青春小説


 ある女子高で謎の殺人事件が起こった。根暗で文系でひきこもり気味だけどおてんばな少女・森カオルは、怪しげな動きを見せる冴えない教育実習生をいぶかしみ、かれをつけまわすのだが……


伊集院大介シリーズ第二弾、だが、本作は本格ミステリーというよりは、ミステリー要素のある青春小説として仕上がっている。

 栗本薫が通っていた跡見女子高の思い出をベースに、女子高らしい風習や情景を見事に描き、その感情の機微を丁寧に描いているのだ。

 特に主人公の森カオルの、小説家を夢見ながら、それを悟られることを恥じていたのが、伊集院大介と出会い、おそれることをやめ、自分の世界の扉を開く、という、作者の理想化された思い出話みたいな爽やかさは素敵です。正直、これ旦那にまよてんをはじめて見せたときのことを思い出しながら書いたのかねえ。(旦那の今岡くんは唐突に栗本先生にまよてんを見せられ、いままで「栗本さん」と呼んでいたのに「おまえ、すごいなあ、がんばったなあ」と感動したという)

 ミステリーとしても、密室たらしめていた理由が「優しさ」であるなど、面白悲しい点が光る。伊集院大介シリーズは、徹底的にホワイダニット、動機が重視される作りになっているのが如実にあらわされていると同時に、その動機が犯人の、ではなく被害者の、にもなっている辺りがなかなか憎い。高校時代の鬱屈としていた自分を思い出しながら読んで欲しい秀作。

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