第48話 少年漫画

長い。

先が見えない。

この旅を終わらせたい。

A子の出現により計画が1週間もずれこんでいる。

早く地球に帰りたい。

破滅的な未来も考えた。


紫さん「先ほどA子との通信により交渉しました。」


人工知能の紫さんは人質交渉ソフトを使っている。

これは地球の警察から特別にダウンロードしたものだ。


俺「・・・続けて。」


紫さん「はい機長。A子の要求はまず2週間分の食糧です。」


俺「食糧か。ハルカワに食べさせる分も必要だ。」


紫さん「はい。しかしタダではA子に食糧を渡せません。」


俺「うん、取引だな。」


紫さん「はい機長。こちらからハルカワさんの無事を確認する条件を出しました。」


俺「確認手段はヘッドセットのカメラ映像か・・。A子はなんと言ってる?」


紫さんはA子にカメラで現在のハルカワの映像を送るよう要求している。

第三体育館にあるデバイスでは録画は出来ない。

つまりカメラに元気なハルカワが映れば現在の彼の無事が確認される。


紫さん「A子は取引したいようですが彼は冷凍装置に入っていると言っています。」


俺「ハルカワが冷凍装置に?」


紫さん「はい。ですからハルカワさんのカメラ映像は難しいそうです。」


俺「・・・それ本当かな。」


紫さん「分かりません。でも本当の可能性はあります。」


ハルカワが冷凍睡眠に入っていれば彼の食糧は必要なくなる。


さすがにアドレナリンが切れてきた。

ハルカワが捕まった直後の俺は少年漫画のヒーローのように元気だったのに。

A子も同じだろうか。

数年間も人を殺しまくった彼女は特別なのだろうか。

こっちは普通の人間だからずっとこの極限状態には耐えられない。


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