帰還

桃太郎が家に帰ると、母親が走って迎えに来た。その目には薄っすらと涙を浮かべている。

「無事だったのね。良かったわ。お母さん心配したわ。」

そう言って母親は桃太郎を強く抱きしめた。桃太郎は母親の愛情と達成感に包まれていた。ありがとう、お母さん、無事に鬼を退治して、金貨を持って帰ってこれたよ。桃太郎が持ち帰った金貨を見せると、母親の表情は見る見る明るくなった。

「でも、今はそんな事より、あなたが無事である事が一番だわ。」

桃太郎が旅の武勇伝を語り始めようとした瞬間、玄関のドアを激しくカツカツと叩く音が聞こえた。扉を開けると、そこには血だらけになった戦友達が、得意げに立っていた。

「団子を頂きに参りましたでごわす」

そう言って舌をペロリと舐め回す犬の表情は、出会った頃とは比べものにならないくらい、生き生きとしていた。そして何やら、興奮冷めやらぬ動物達の間には、不気味な連帯感のようなものが感じられた。桃太郎はせっかくの気分を邪魔されたくなかったので、母親に頼み、追加の団子を作ってもらうことにした。

「でも、材料がもうないわ。」

母親がそう言うと、動物達の空気が明らかに変わった。雉がバタバタと羽を広げ始め、犬が威嚇するように吠え始める。猿も金切り声を上げて抗議を申し立てている。それは血気盛んな動物達の、抵抗し難い怒声であった。

「まあまあ、落ち着いて。また明日にでも作るから」

桃太郎の言葉も聞かず、動物達は意を決したようであった。怒り狂った猿が棍棒で桃太郎の母親の頭を殴り倒し、犬がその喉元に飛びついた。

「おい、貴様らっ」

桃太郎が抵抗しようとした瞬間、雉が桃太郎の喉元に、その鋭いクチバシを突き刺した。たまらず床に倒れる。

「約束を破るとどうなるか、教えてやらきゃな。」

そう言いながら、猿が倒れた桃太郎にトドメの一撃を加えた。

床には、鬼から奪った金貨が散らばっていたが、動物達は見向きもしなかった。

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桃太郎に侍る動物たち @JonMan

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