第57話 久しぶりの2人

 結局何だかんだでみんなでワイワイしながら露天風呂に入ることになった。

 そして今は…。

「くらえ! ユキちゃんのウルトラスマッシュ! 」

 この世界にも卓球はあるらしく今、アルとユキがジュースを賭けて勝負をしている。


「卓球はまだまだッスね♪ そんなんじゃ俺は倒せないッス! 」

 ユキも強いのだがアルが上手すぎる! 俗に言うカットマンとか言われるやつだ! 俺はそこまで詳しく無いから分からないけど…。

「そんなことないもん! 私強いから! 」

 ユキも思いっきりスマッシュを打ち込んでアルに対抗する。


「何か凄いねあっち…」

 俺とモニカはマッサージを受けながら隣で騒いでるみんなを見ている。

「私達もやる? まぁ、私が勝つけど♪ 」

 モニカが自身に満ちた声でそんなことを言ってきた。


「そこまで言うならやろうぜ! 絶対負けないから! あとで吠え面かくなよ! 」

 隣にいるモニカにそう伝えて立ち上がると

「おにい……、鬼強いからね私! 」

 そういって立ち上がり空いている卓球台に移動してラケットを持って手招きをしてくる。

 

 対戦の結果は云うまでもない、完膚なきまでにやられましたよ…。俺が打つ方向が分かってるのか拾われてスマッシュ打たれて反応が出来ませんでした!

「どんだけ強いんだよ…妊婦なのに…」

 唖然としているとモニカが向こう側から駆け寄ってきて

「だから言ったでしょ! 私鬼強いよ! って」

 ドヤ顔でそんなことを言ってくる。


「強いにも程があるだろ…。なんだよ11対0ってストレート負けとか強すぎだろ! 」

 俺は売店に行って缶ジュースを2つ買って1つをモニカに渡す。

 隣の台で卓球をおこなっていたユキが

「なになに、ライム負けたの? 」

 と話しかけてきた。


 お前も負けたんだろうが! と突っ込みを入れようと思ったがそれを言うと敗者決定戦とか言ってまた卓球をすることになりそうだったので止めた。

「そうだよ♪ モニカはイチゴミルクでいいかな? 」

 そういってイチゴミルクを渡すと嬉しそうに飲んで微笑んでいた。


「ライムは卓球弱いんだな? 少し意外だったぞ」

 ヴァネッサがラケットを持ってこっちに向かってくる。

「やらないからな? 」

 先に釘を指すが何食わぬ顔で卓球台の対面に陣取りサーブを打ってくる。

「負けた方はジュースとお菓子だからな」

  そして勝手に物を賭け始める。


「おい、待てって! やるなんて一言も言ってないぞ! 」

 そう言いつつも打ち込まれたピンポン玉を返球すると

「その返球が開始の合図じゃ! 負けんからな! 」

 そういってスマッシュを打ち込んでくる。


 返球しようとラケットを構えると

「甘いのぉ~、妾のスマッシュは消える魔球じゃ! 」

「おい! 魔法とか禁止だろ! 」

 抗議は虚しく、その後も消える魔球を打たれ続け敗北した。


「何かみんなして容赦なかったな…」

 部屋に戻ってソファーに座るモニカに抗議の目を向けて呟くとモニカはいたずらっ子の様に微笑むと

「ゴメンって、まさかあの後みんなしてライムをカモにするなんて思わなかったから…」

 そうです、ヴァネッサが何でもありの卓球を始めたせいで他のみんなも俺に何でもありの卓球を挑んできて全敗しました…。


「いや、確かに弱いけどさ…。逃げようと思ったのにモニカが逃がしてくないんだもん! おかげでみんなにジュース奢る羽目になるなんて…」

 『誰が最弱か決めよう♪ 』なんて言い始めるんだもん…。

「そんなに拗ねないでよ♪ 頑張ってるライム格好よかったよ♪ 負けちゃったけど♪ 」

 笑いを隠しきれずクスクスしながらモニカはソファーに腰を降ろした俺に寄りかかってくる。

 

「まぁいっか…。それより気持ち良かったね温泉! 」

 隣にいるモニカに温泉の感想を言うと

「そうだね♪ 久し振りに温泉なんて来たかも♪ しかも硫黄のきちんとした温泉なんて」

 硫黄なんて分かるんだなぁ~、なんて思いながらゆっくりしているといきなり部屋のドアが開いて枕が顔に飛んでくる。


「やった! 命中したよ♪ 」

 何故に喜んでいるのか分からないけど…

「どういうことかな? リア? 」

 枕が飛んできた方を見るとリアとオリヴィアが笑いながら部屋に入ってくる。

「リアさん、やっぱりライム怒ってますよ! 謝りましょうよ! 」


 いや、別に怒っちゃいないのだが。

「結構痛かったよ? それで目的は何? 」

 リアとオリヴィアを見つめて疑問を投げ掛けると2人は笑いながら枕を持って

「枕投げしようよ♪ 」

 そういって2人は笑顔で枕を投げつけてくる。


「ぼふぅ! ちょっ、待てって部屋の中で枕投げは! 」

 必死に止めさせようとするが


「ライムお兄ちゃん覚悟! 」

 リアがオリヴィアの持っていた枕を持って俺の顔面を目掛けて投げてくる。

「ちょっ! 」

 

 そんなこんなで結局久し振りに2人きりになれたと思ってもみんなが部屋に戻って眠るまで夫婦の時間は取れなかった。

◆◇◆◇

「起きてる? 」

 ベットの隣で横になって寝てるであろうモニカに話しかけると意外なことに

「起きてるよ、やっと2人になれたね♪ 」

 なんて言葉が返ってくる。


「何か今日だけでいろいろあったね♪ 久し振りに楽しかった♪ 」

 モニカはこっちを向いて嬉しそうにはにかんでいた。

「そっか、まぁモニカがそう言うならいいかな? 俺も久し振りに卓球やれて楽しかったよ、ぼろ負けしたけど…」

 

 そういってモニカと見つめ合うと

「お疲れさま♪ 」

 俺の頬をキスして慈愛に満ちた顔で見つめてくる。

「お互いにね♪ 」

 そういってモニカを抱き寄せて一緒に眠りについた…。

◆◇◆◇

「お義兄ちゃん、お義兄ちゃん! 何時まで寝てるの? 起きてってば! もぅ~!! えいっ!! 」

 そんな声と同時に俺は目を覚ました。

「やっと起きた! もぅ~お義兄ちゃんは寝坊助さんなんだから♪ 」 

 辺りを見渡すと白く何もない空間に俺と瑠璃の2人だけが居た。


「ごめん、何がどうなってるのか分からないんだけど? 」

 どうしてこんな状況になっているのか分からず戸惑っていると

「たぶん女神様にお願いしたからかな? 」

 お願いしたら女神あのバカは何でも叶えてやるのかよ💢


「何で? 」

 不思議に思い尋ねると

「温泉に入ってた時にこのすが…」

「このすが? 何それ? 」

「違う違う! お義兄ちゃんが好きだったラノベの『この⚪ば』がアニメになったよ!って知らせたいなぁ~って言ってたら女神様がまた時間を作ってくれるっていってくれたの♪ 」


「そうなんだ『この⚪ば』がアニメになったんだ! ってそれだけ? まだ時間があるならお互いに近況報告しようよ! 」

 こうして俺と瑠璃はお互いの近況報告をすることにした。


 




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