第54話 お前が働け!

 さてと、あと金貨9枚と銀貨50枚であの駄女神が作った借金を返済できる!

「やっほー!遊びにきたよ!」

 元凶の駄女神がやって来た・・・。

「お前・・・、どの面さげてここに来たんだよ?呼んでねぇぞ」


 あまりにも無神経な挨拶に腹が立ちヴィーナスを邪険に扱ったら

「私、女神なんですけど~!!なんでそんな邪険にするの?ダメでしょ!私は女神だよ!」

 だからなんだこの駄女神!お前はそうやって無駄に頑張ろうとすると確実に空回りするのが目に見えてわかってるんだから・・・。


「分かった、分かったから落ち着けって」

 そういうとヴィーナスは嬉しそうに胸を張って

「そうでしょ♪そうでしょ♪なんたって私は女神なんだから!」

 あぁ~、またコイツ調子乗ったよ・・・。

あっ・・・、アイツ後ろに居るの知ってるのかな?教えてあげた方がいいのかな?


「しかも先輩とは違って私は出るところは出てて女性らしいんだから!」

 あっ、コイツ終わったな・・・

「ほう・・・。なるほど、ヴィーナスから見ると私は女性らしくないってことなんだな?」

 駄女神の後ろにはアルテミアさんが黒いオーラを纏っている。


「いっ、いつからそこに居たんですか?」

 ひきつった顔で駄女神はアルテミアさんにそう聞くとアルテミアさんは笑いながら駄女神の首根っこを掴み、連れて帰った。


「騒がしかったけど何かあったの?」

 お腹が大きくなったモニカとモニカを支えながら香住が部屋から出てこちらにやって来た。

「まぁ、ヴィーナスが来ていろいろあったけど多分平気だと思うよ?」

 そういってモニカの隣に座りモニカのお腹を擦ると中の子が動いている。


「お父さんが触ってくれて嬉しかったのかな?」

 モニカはそういってニッコリ笑いかけてくる。

「あんまり無茶はするなよ?もう、1人だけの身体じゃないんだから♪」

 そういってモニカの唇に俺の唇を重ねる。

「あの~私、居なくても大丈夫かな?ごゆっくり~」

 そういって香住は下の階に行ってしまった。


「下、行っちゃったね・・・」

 モニカが潤んだ瞳でこちらを見つめてくる。

「ダメだよ、いくら安定期に入ったからって・・・その代わりコレぐらいなら平気かな?」

 そういって再度キスをする。


 モニカは顔を真っ赤にして頬を膨らまして

「私の身体を気遣ってくれてるのは分かってるけどキスだけじゃ足りない!しっかり私を愛して!」

 愛しているからこそモニカの身体を気遣ってるんだけど・・・。俺はモニカのお腹を擦りながら

「愛してるからだよ♪それにこの子が生まれたら兄弟を作るんだから今のうちにしっかり休んでおいてもらわなくちゃ♪」


 そういってモニカの髪を梳かしキスをするとモニカは顔を真っ赤にして(≧∇≦)

「うん、知ってる♪ライムが私を愛してくれてるってことは・・・ただ私も待てないくらいライムが好きってこと♪」

 ズルいよな・・・。顔を真っ赤にして恥ずかしそう言うだけで俺の心を掴んで放さないんだから・・・。


「俺も好きだよ♪」

 モニカの頭を撫でて顔を見つめると

「うぅっ~、恥ずかしいよ♪」

 と言いながらも喜んでくれていた。

◆◇◆◇

「どうしよう金貨が足りないよ~!(。>д<)」

 そんな可愛い言葉で済む問題では無い💢

「どうすんだよ!いつ来るんだよ💢」

 俺の足にしがみついて泣いている駄女神に問いただすと駄女神は泣きながら『ごめんなさい、ごめんなさい』と泣いているだけで何もしようとしない。


「泣いて謝るだけで何とかなるなんて思うなよ💢いいから何か交渉できる代案を考えろよな!」

 そういって俺は頭をフルに回転させる。

「うん、コレしかないな・・・」

 考えた結果コレしかないと思った。


「おい姉ちゃん、金は用意できたんだよな?」

 うわ~、スッゲェガラの悪いおじちゃんが来たよ・・・。

「もっ、もちろんよ!はいコレ!」

 そういって駄女神は、しれっと金貨が入った袋を渡す・・・。中身はもちろん足りていない。


「おう、そうか!それじゃあここで金貨数えさせてもらうぞ!」

 そういってガラの悪いおじちゃんが金貨を数え始めた。

 隣を見ると冷や汗をタラタラ流している駄女神がいる。

「おい姉ちゃん」

 声をかけられて駄女神はビクッと身体を震わせた。


「なっ、なんですか?」

 裏返った声で反応するとか動揺してるのがバレバレだろ・・・。

「金貨が1枚足りないんだが?」

 低くどすの効いた声で駄女神に尋ねてくる。


「そっ、そんなはず無いですよ?」

「申し訳ないです。金貨が1枚足りませんでした」

 駄女神は白をきり、俺は正直に謝った。

「俺は正直な奴が大好きだ、それで足りないってことはこの村を貰っていいんだよな?」

 悪魔の様な顔で(まぁ、実際に駄女神の知り合いの悪魔なんだが・・・)こちらを見つめてくる。


「そのことについて少し交渉をしたいんだか・・・良いか?」

 おじちゃんに交渉を持ちかけるとおじちゃんは笑って続けろと顎で合図を送ってくる。

「足りない金貨1枚分コイツをおじちゃんの所で借金返済のために雇ってくれないか?足りない金貨1枚分コイツが働くから」


 そういって駄女神のおじちゃんの前に押し出す。

「えっ!嘘!嘘よね!」

 駄女神は涙目でこちらを見つめてくる。

「それじゃあ、行ってらっしゃい!」

 俺は敬礼(^-^ゞをして笑顔で駄女神を送り出す。

「しょうがない良いだろう!それじゃあ、コイツを連れていくぞ」


 そういっておじちゃんと駄女神は天界に戻っていった。

「いいのか?あれで?」

 一部始終を見ていてアルテミアさんが不思議そうに見てきた。

「大丈夫だろ・・・。そのうち帰って来るだろ?」

◆◇◆◇

「ひどいわよ~!私を!女神をいらない子だなんて!あんまりよ!」

 泣きながら駄女神は俺に訴えてくる。

 良い意味でも悪い意味でもヴィーナスは早く帰ってきた。理由はつかえないから・・・。

「借金の返済なんか別にいいからコイツを返品させてくれ!」

 とつい先程おじちゃんが泣きながらすがりついてきた。


「それにアンタも何ですぐに頷かないのよ!」

 そう、おじちゃんの返品にすぐには俺も頷かなかった。

 交渉した結果、返品の代償として俺が経営する宿屋とモニカのお腹の子のためにリアの病院の設備を完璧にしてもらった。


「まぁ、おわり良ければ全て良し!って言うじゃん!気にするなよ♪」

 そういって駄女神の肩を叩くと

「そうなんだけど・・・。何か納得いかなぁ~い!」

 広場の噴水の前で駄女神がそう叫んだ・・・。

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