第31話 天界に帰れ!
ドンドンと玄関をたたく音がする。
「ねぇライム、本当に入れないでいいの? 」
モニカが不思議そうに尋ねてくる。
「うん大丈夫だよ♪ たぶんあれ悪質な訪問販売だから、シカトでいいよシカトで」
アルテミアさんには悪いけどあのバカな女神は絶対家に入れるべきではない。
あれ? やけに静かになったな?
玄関をたたく音が急に止んだ。
何か悪い予感がする…。
ガシャァァァァァンッ!!
どうやら予想は当たってしまったみたいだ…。
ガラスの割れた音の方へ行くとそこには石を持ってガラスを割り、侵入しようとするバカ女神とそれを必死に止めて怒っている女神がいた…。
「だって玄関たたいても出て来ないんだよだったら実力行使でしょ! 」
「だから貴女はダメなんですよ! 待つと言うことを覚えなさい! 」
2人の女神が割れた窓ガラスの前で口論をしている。
「あっ来た来た、とりあえず中に入るねぇ~」
バカ女神はズカズカと部屋に入ってくる。
「おい、これじゃあやってることは不法侵入だぞ! っていうかガラスどうすんだよ! 」
中に入ってきた女神に文句を言うと
「もぉ~うるさいなぁ直せばいいんでしょ直せば」
そういって入ってきた窓ガラスに手をかざして修復を始める。
「ごめんなさい、止めようとしたんだけど止められなかった…」
アルテミアさんが頭をかかえ申し訳なさそうにこちらを見つめてきた。
「スゴい、本当に直ってる」
隣で見ていたモニカが不思議そうにバカ女神を見つめている。
「ほら直したわよ、これでいい? 」
直したからいいという問題ではない、お前と関わりたくないんだよ!
俺の気持ちをシカトして話し始める。
「もぉ~何? もしかして見惚れちゃったの? さっきからず~っとコッチみてるけど」
そんなことを言ってニヤニヤしている。
「んなわけあるかぁ~!! こっちはお前みたいな厄介者と関わりたくないだけだ! 」
クソッ、なんでこんな厄介者が来るんだよ。しかも何で今頃?
「本当にすまない。コイツは連れてくるべきではなかった」
アルテミアさんは、呆れた様な目でバカ女神を見つめている。
「それで2人揃って俺に何か用ですか? 」
2人に話しかけると1人は困った顔で、もう1人は嬉しそうな顔でこちらを見つめてきて
「下界の様子と君の様子を見に来たの、簡単に言うと定期検分的な? …」
モニカが首をかしげて
「下界ってどういうことですか? 」
不思議そうにバカ女神を見つめている。
「ねぇ! ちょっと! 」
小声でアルテミアさんを呼ぶ。
「何ですか? 」
アルテミアさんはこちらに身を寄せて来る。
「女神だってことバレたらマズイよね! 話を合わせて上手く誤魔化すから! 」
アルテミアさんは頷いてくれた。
「モニカ、実はこの2人は小国ながらも1国のお姫様でこっちが長女のアルテミア姫でこっちが次女のヴィーナス姫なんだよ、それで下界ってのは多分、庶民の暮らしの事だと思う」
そう伝えるとモニカは目をパチクリさせて俺を見て
「何でお姫様たちがライムを訪ねてくるの?」
と不思議そうに尋ねてきた。
ヤバイそこまで考えてなかった…。
アルテミアさんは、俺が困っていることに気づいたのか
「彼は私たちの家庭教師だったのよ、だからどうしてるかな~? って思って今日訪ねてみたの」
アルテミアさんナイスフォロー! 心の中でアルテミアさんを賞賛した。
アルテミアさんは俺とモニカを見てニッコリと優しく微笑みかけてきた。
「そうなんですか? スゴイねライム! そんなことやってたんだ。それでそのお姫様たちはこんなところに何しに来たんですか? 」
うん。たしかに2人は何をしにここに来たのだろう?
アルテミアさんを見つめるとアルテミアさんは困った顔でここに来た理由を話し始めた。
「あのね、実は相談があって…」
何か嫌な予感がする。
「その…。この子があまりにも世間知らずだからこの子を先生のところに預けて、その世間知らずを直してもらおうと思って…ダメかな? 」
なんてことを口走るんだアルテミアさん!
「えっ? 何でですかアルテミアさん? 何も俺のところじゃなくても…」
アルテミアさんに抗議するとアルテミアさんは笑って
「知り合いで私たちの家庭教師でもあった先生にお願いしようと思って。モニカさん、良いかな? 」
アルテミアさんは外堀から埋めていくつもりだ…。
「いや、無理だよ。ここでの生活は大変だよ! それに俺とモニカには今度子供が生まれるから俺たちの家じゃ無理だよ」
アルテミアさんにそう伝えると
「ここを多種族の町にするんでしょ、だから家はこっちで用意するから良いでしょ? 」
アルテミアさんがモニカに意見を求める。
「ねぇライム、お隣さんが増えるのは良いことだと思うんだ、だからいいんじゃないかな? ヨロシクねヴィーナスさん♪ 」
そういってバカ女神に手を差し出して握手をする。
「アルテミアさん、ちょっと…」
アルテミアさんを呼び、2人に聞こえないように話をする。
「ねぇ、どういうこと? 何で俺にあのバカ女神で厄介者を押しつけるの? いくらアルテミアさんのお願いだからって本当に嫌なんだけど! ねぇどうして? 」
アルテミアさんに詰め寄るとアルテミアさんは苦笑いをして手を合わせて
「ごめん! 実は私たちの上司の
そんな捨てられた仔犬の様な目で俺を見つめないでくれ…。
「ダメかな? 」
アルテミアさん、その上目遣いは卑怯です…。
「分かりました。でもいつまでここにいる予定なんですか? 」
アルテミアさんにいつまでここにいるのか確認するとアルテミアさんは頬を掻きながら苦笑いをして
「分からない、謹慎処分が解除されるまでかな? 」
おい、ちょっと待て! なんだ謹慎処分ってこのバカ女神はまた何かやらかしたのか?
「ねぇ謹慎処分って…」
「そんなこと言ってないよ~! 何言ってるの? 気のせいだよ」
最後まで人の話を聞かずに返答しやがった。
「ちょっと~、いつまで2人で話してるの私、お腹減ったんだけど何か食べるもの無いのこの家」
バカ女神は靴を履いたまま部屋を歩き回る。
「なぁ、この家は土足禁止なんだけど…」
そう伝えるとバカ女神は
「私は良いの! 土足禁止なら土足OKにすればいいじゃない! 私は脱ぎたくないの! 」
カッチーン!
さすがに頭にきた。
「なぁ、怒ってもいいんだよな? ここにいるあいだは何も能力無いんだよな? 」
アルテミアさんに話を聞くと彼女は頷いて
「あの自己中心的な考え方を改めさせて、手段は問わないから」
アルテミアさんから承諾を得られた。
「ねぇヴィーナスさん、話しは聞いたよ。ちゃんと靴を脱いで今すぐお前が歩いた場所、めっちゃ汚れてるから掃除しろ! 」
小声で耳元で話すと渋々モップを持ってきた。
「やっといたよ~、これでいい? 」
本当にコイツは予想以上にクズ女神だった…。びしょ濡れのモップとか余計ビショビショになって汚れるじゃん…。
「もういい、天界に帰れ! 」
あぁ、静かな日常がこの女神の降臨で崩れていく…。
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