第15話 セイレーンの空中集落
何とか川を渡った先には樹木が鬱蒼と生い茂っていた。
「この森を抜けた先にある渓谷の奥にアルタイルの巣があるはずだから、とりあえず森を抜けていきましょう」
ノルンお姉ちゃんを先頭に後ろをついていく。
しばらくすると急にノルンお姉ちゃんが足を止めた。
「あれ? 割りと早く着いたね♪ 」
前を行くノルンお姉ちゃんに声をかけると
「違う…私が生きていた時と…ここどこ? こんな場所なかったのに…」
渓谷を見て呆然としている。
「えっ、どういうこと? お姉ちゃん…」
もしかして迷子になったのでは、と頭によぎったがそんなことは無いと思いノルンお姉ちゃんに確認すると…。
「みんな、ごめんなさい! 迷っちゃった」
どうやら悪い予感が当たってしまったようだ…。
モニカとユキに現在地が分かるか確認をしたがどうやら2人も分からない様だ。
どうすればいいのか迷っていたら目の前を何かが通り過ぎて行った。
「何か今、通り過ぎて行かなかった? 」
隣にいたユキに確認するとユキも何かを見たらしく頷いている。
「ねぇモニカ、今何か通り過ぎなかった? 」
モニカに確認すると頷いて
「たぶんあれは、セイレーンだと思います。もしかしたら話が聞けるかもしれません、後を追いましょう! 」
そういってこちらを見つめてくる。
「じゃあとりあえず、さっきのセイレーンを追ってみよう」
そういってセイレーンが行った方向(北上)にむかって歩き出す。
◆◇◆◇
「結構歩いて来たけど特に何も無いね…」
そう呟くと3人も頷いている。
「さっきのセイレーンも見かけませんね…」
ユキが話しかけてくる。
そんなことを話していると急にモニカ何かに気づいたらしく断崖を指差し服の裾を引っ張ってくる。
「どうしたんだモニカ? 」
不思議に思いモニカに聞くと
「あれを見てください。崖に家があります」
モニカが指差した場所を見ると確かに崖に家が建っていた。
「何だあれは…どうやってあんな場所で生活するんだ…? 」
不思議そうに崖を眺めていると何処からか声が聞こえる。
「誰か何か言った? 」
3人を見ると3人とも首を振って否定している。
「じゃあ何だったんだろう? 」
首を傾げ崖を眺めているとまた声が聞こえる。
また勘違いだと思い気にせず、どうやってあの崖の家に行けばいいのか考えていると
「上よ、上! こらっ! 私の声、聞こえてるでしょ! 」
声がするので上を見上げるが特に誰もいない?
「真上だったのが悪いのかな? っていうか貴方もきちんと周りを確認しなさいよ! 」
声が聞こえるが何処にも人の姿が無い。
疲れが溜まっているのかと思い、ストレッチをするために身体を伸ばすと
「ちょっ、えっ! 待って、待って! きゃあっ! 」
顔を目掛けて上空から何かが落ちてくる。
「痛っ、何が起きたんだ? っていうか視界が黄緑色1色なのは何で?しかも重い…」
そういって身体を起こそうとすると
「きゃあっ! 動くな! 勝手に動くな変態! 」
女の子の声が聞こえる。
「モニカ~、今どうなってるの? 」
モニカに問いかけると
「ちょっ、息が当たる喋るな! なにもしないでじっとしてろ! 」
女の子が恥ずかしそうに命令をしてくる。
「いや…その前に君は誰? そして今はどういう状況? それが分からない限り協力はできないよ? 」
そういうと
「分かった、分かったから喋らないで、息が当たる! あのね、アンタは今、人のスカートの中に顔を突っ込んでんの! …で、いくらパンツがあるからってその…陰部に息をかけられると困るの! だから少し黙ってて! 」
「いやいや、早口でそんなことを言ってるけど無理だから! 気にしないとか無理だから! 」
◆◇◆◇
「改めて挨拶するわ、私は聖域の乙女(セイレーン)のミソラよ、貴方達はどうしてこんな場所にいるの? 」
純白の翼をつけた金髪ボブで青眼の女の子が目の前に立ち、こちらを見つめている。
「いやいや、なに普通にさっきの事を無かった事にしてるの! 」
モニカが全力でツッコミをいれる。
「? 何て言ってるの? それよりどうしてこんな場所にいるの? 返答の答え次第で貴方達を殺さなくちゃいけないから」
腰からモーニング・スターを取り出してジャラジャラと音がする。
「ちょっと待って、説明するから」
そういって簡潔かつ明確に説明をすると
「なるほど、貴方達はアルタイルに盗られた玉虫を取り返すために追ってきたけど見失って、たまたま見かけた私たちセイレーンを追ってアルタイルの場所を聞こうと思ったのね、だったらそう言いなさいよ! まったく」
そういってミソラはモーニング・スターをしまってくれた。
「ミソラはアルタイルの巣の場所を知ってる? 」
ミソラにアルタイルの巣の場所を知ってるか聞くと
「何で私が見ず知らずの貴方達にそんなことを教えなくちゃいけないの? 」
不思議そうにこっちを睨んでくる。
「ダメかな? 今は、ミソラさんしか頼れる人がいないんだよ。お願いします」
そういって頭を下げると
「うっ、うん…分かったわ、私しか頼れる人がいないのよね…。確かおばば様が知ってたと思うからおばば様のところまで連れていってあげる。ありがたく思いなさい! 」
スゴく、スゴーく面倒なツンデレっ子だな…。
ミソラはトテトテと地面を歩いて崖の方に向かっていく。
「ライム! あの子崖に向かって歩いてるよ! 後を追わなくていいの? 」
ユキがミソラを指差し不思議そうに聞いてくる。
「それじゃあ、ミソラの後をついていこう! 」
そういって4人でミソラを追って崖に向かう。
「ちょっと、何してるの? 遅いわよ! 」
ひとあし先に崖に着いたミソラが手招きをして俺たちを呼んでいる。
「ごめんミソラ、それより崖に来て何かあるの? 」
ミソラに聞くとミソラは何を思ったのか崖を叩き始めた。
「ここだっけ? いや、こっちだっけ? 」
1人ぶつくさ言いながら崖を叩くこと10回目
「カチッ」と何かがはまる音がした。
「やった! 」
ミソラが小さな声で喜んだ後、崖から隠し階段が現れた。
「何これ! スゴーい! 」
ユキが目を輝かせて喜んでいる。
「ここを登っていくと私たちの集落で1番偉いおばば様のお家につくからついてきて! 」
そういうと地獄の様に続く階段をあがっていく・・・
「あっ、あの子ズルいです! 飛んでます! 」
モニカがミソラを指差すが素知らぬ顔でミソラは階段を飛んで登っていく。
「俺たちも頑張ろう! 」
そういって地獄の様な階段を黙々と登っていく。
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