第14話 まさか金槌だったなんて…

「ちょっ! ちょっと待って! 」

 背中を押されて川の中に落ちていく

「俺、金槌だから! 」

 ブクブクブク.。o○

 

水の中へ沈んでいく。

「ちょっとライム! そこ足着くから! 大丈夫だからしっかりして! 」

 何とびっくり水深は腰ぐらいの深さで普通に立つことが出来ました。

「あっ、本当だ…立てる」

 

立った後、何事も無かった様に浅瀬に戻り身体をスカの実で洗い始める。

「ねぇ弟くん、もしかしてなんだけど泳げない? 」

 ノルンお姉ちゃんがこちらを見つめ不思議そうに声をかけてきた。

「うん、じつは金槌です…お姉ちゃんは泳げるの? 」

 

ノルンお姉ちゃんに聞くとお姉ちゃんは

「うん、泳げるよ♪ ただ、今のこの身体で泳げるかは分からないけど」

 そういって背中に立ちスカの実を使って背中を流してくれる。

「それにしても意外だね、泳げないんだ? 」

 

ノルンお姉ちゃんは、不思議そうに見つめてくる。

「うん、じつは昔いろいろあって…」

 興味津々な顔でノルンお姉ちゃんは見つめてくる。

「うんうん、何があったの? 」

 

好奇心には勝てなかったらしい。

「俺には昔、1つ年下の義妹がいたんだその子が15歳…だから去年かな? そのとき海で溺れちゃったんだよ、だから助けに行ったんだけどミイラ取りがミイラになっちゃって…義妹は何とか救えたんだけど今度は俺が溺れちゃって…それ以来、泳げなくなっちゃったんだよ…」

 

そう伝えるとノルンお姉ちゃんは悲しげに「ごめんね、嫌なこと思い出させちゃって…」

 と言って落ち込んでしまった。

「いや、別にそんなに暗い話じゃないから気にしないで、今はお姉ちゃん達と一緒にいられてとっても充実してるから。だから俺の前から急にいなくならないでね」

 お姉ちゃんにそう伝えると目を潤ませて頷いてくれた。

◆◇◆◇

「今、戻ったよ~」

 2人が待っているところに行くと2人は

「「ライム~ごめんね~…」」

 粘液まみれの2人が抱きついてきた。


「どうしたの? 」

 モニカとユキ、それぞれに声をかけると

 モニカが何があったのか説明を始める。

「ライムとノルンが川にむかったあとに大鷲が空から玉虫の死骸を持っていっちゃったんだよ! 」

 

涙目でモニカは訴えてくる。

 ユキを見ると何となく感じ取ったのか全力で頷いている。

 ノルンお姉ちゃんを見るとお姉ちゃんは顎に手を当てて腕をくんで考え込んでいる。

「お姉ちゃん、何か分かる? 」

 

ノルンお姉ちゃんに意見を求めると考えがまとまったのか頷いて

「たぶんその大鷲はこの辺りを縄ばりにしているアルタイルだと思う…まさかまだ生きていたなんて…」

 そういってノルンお姉ちゃんは驚いている。

「玉虫をまた探せばいっか…」

 

そういって廃屋に戻ろうとするとお姉ちゃんが驚いた様子で腕を掴んでくる。

「何を言ってるのかな弟くんは…」

 モニカとユキも呆れた顔でこちらを見つめてくる。

「えっ? 何か変なこと言った? 」

 

ノルンお姉ちゃんが理由を話し始めた。

「玉虫は、数年に1度しか現れない虫でアルタイルから取り戻さない限り、皇魚が釣れないんですよ! 釣れないとお金がマズいんですよね? 」

 ノルンお姉ちゃんが聞いてくる。

「…ってことは、かなりマズい状況なの? 」

 ノルンお姉ちゃんに聞くとお姉ちゃんは頷いている。


「ねぇ、どうしたらいいの? 」

 3人にそれぞれ意見を聞くと

「「「取り返しに行くしかないですね…」」」

 と言って苦笑していた。

 

そんなこんなでアルタイルから玉虫の死骸を取り返しに行くことになった。

◆◇◆◇

「ノルン、アルタイル、ドコ? 」

 モニカがカタコトながらもアルタイルがどこにいるのか聞くと初めは驚いていたが、すぐに馴れてくれた。

「アルタイルは、ここから少ししたアルタイル渓谷を根城にしてる大鷲だからアルタイルって呼ばれるようになったの。それで結構な絶壁に巣があるからそこにむかって行きましょう! 」

 そういってノルンお姉ちゃんは川の中へ進んでいく。


「あのさぁ、お姉ちゃん…もしかして川を泳いで渡るの? 」

 不思議に思いお姉ちゃんに聞くとお姉ちゃんは俺が泳げないのを思い出したらしく考え込んでしまった。

「どうしたのライム、何か問題があるの? 」

 川を前に立ち止まっていると後ろからユキが不思議そうに声をかけてきた。

 

ユキとモニカ、2人に分かるように人の言葉で「泳げない」そう伝えると

「へーっ、ちょっと意外! 」

「お風呂は平気なのに? 」

 ユキは意外そうに、モニカは不思議そうに俺を見つめてくる。


「昔、いろいろあって…。足が着かないと落ち着かなくて…だから足の着かない深さだと…」

 申し訳なさそうに説明をするとユキがにっこりと微笑んで手を差し出してくる。

「ほら手、握って…ノルンは骨だしモニカは身長的にキツい部分があると思うからウチが向こう岸までつれていくから手、握って」

 顔を真っ赤にしながら手を差し出してくる。


「ありがとう」

 その手を握って微笑み返すとユキは茹でダコの様に顔を真っ赤にしてモジモジしている。

「2人とも早く! 2人が渡らないと行けないから! 」

 向こう岸からノルンお姉ちゃんの声がする。

 

向こう岸にはモニカも渡りきって手招きしている。

「それじゃあ行こっか…」

 そういって恥ずかしそうに恋人繋ぎで川の中へ入っていく。

 ユキの隣を一緒に進んでいく。


「…やっぱ無理、やっぱ無理~! 」

 川の真ん中辺りまで頑張って行ったのだが足が着かなくなり我を忘れ、パニック状態でワタワタしてしまう。

「ちょっとライム、落ち着いて! ウチがちゃんと手を握ってるから、大丈夫だから! 」

 そういって落ち着くように言ってくるがワタワタしてるあいだに手が離れてしまって余計パニクってしまいユキに後ろから抱きついてしまう。


「ちょっ、ちょっとライムそこ胸! 胸を掴んでるから! ヒャッ! ちょっとライム待って! 先っぽ弱いから! ちょっとライム本当に落ち着いて! 感じすぎておかしくなっちゃう! お願いだから落ち着いてライム! 」

 そういって腕を掴まれて落ち着くように言われるが


「無理! 絶対無理! 足が、足が着かない! 」

 そういって足をバタバタさせると…

「足が着くから…。その…そんなにされちゃうと身体が疼いちゃって…。ちゃんと責任取ってよライム…」

 

はぁはぁ艶かしい吐息を吐きながらユキがこちらを見つめてくる。

「ごめんユキ、迷惑をかけちゃって…」

 ユキに謝ると

「謝らなくてもいいよ。ウチも愛する人に愛でられる感覚が分かって嬉しいから…ただ、きちんとこの身体の疼きを鎮めてくださいね♪ 」

 

妖艶な雰囲気でユキは頬にキスをしてきた。

「いっ、家が出来たらね♪ きちんと責任は取るから」

 とは、言ったものの・・・どうしよう! どうしよう!!





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