第13話 玉虫?えっ、これがタマムシィィィィィィ~!?

 モニカの先導で玉虫を捕まえるために林を抜けてケヤキの木がたくさん植わっている場所にやってきた。

「それで玉虫はどこらへんにいるの? 」

 どのへんに玉虫がいるのかモニカに確認をする。

「うーん、いればすぐに分かると思うんだけど…」

 

そういって辺りを見渡している。

「ねぇ、お姉ちゃん? 玉虫ってそんなすぐ分かるサイズなの? 」

 ノルンさんに話しを聞くとノルンさんは頷いて

「うん、たぶん一目見ればすぐに分かると思うよ弟くん! 」

 

そういってノルンさんも辺りを見渡す。

「ユキは何をやってるの? 」

 街に行ったときに買ってきておいた大剣バスターソードを持って素振りをしている。

「えっ、だって玉虫を捕まえるんでしょ? これぐらい普通じゃない? 逆にライムはそんな軽装でよく来たね、平気? 」

 

…へっ? いや、だって玉虫だよね? あの虫の…親指ぐらいの大きさだよね?

 疑問に思いながら歩いていると前を行くモニカが足を止めた。

「ライムあそこ! 」

 

そういってモニカが指差す方向を見ると…。

「えっ…何あれ! 」

 そこには象ぐらいの大きさのテカった虫がケヤキに登り、葉を食べている。

「ちょっ…。大きすぎだろ…」

 

口をモゴモゴ動かし足はワシャワシャ動かしていて予想以上に気持ち悪い。

「イヤァァァァッ、いつ見ても気持ち悪い!

ヤダヤダo(><;)(;><)o気持ち悪い! 」

 ユキは顔を真っ青にして俺の背中に隠れる。

 後ろに騒がしいのがいると案外冷静になれる様だ…。


「ユキ落ち着いて、確かにあれは気持ち悪いけどその手に持ってる武器は何のために持ってきたの? 」

 ユキに聞くとユキは早口でしかも即答で

「飾り! …やっぱり切れない! だって切ったらドロッとした緑の液体が出てくるんだよ! 無理、やっぱ無理! 絶対無理、虫は嫌い! 」

 そういって大剣を渡してきてユキは俺の背中に隠れてしまった。

 

本当に虫が嫌いなのだろう肩に置いた手が震えている。

「ユキは無理っぽいけど2人は平気? 」

 前にいる2人にそれぞれ声をかけると2人は頷いて

「何とか…でも相変わらず気持ち悪い」

 

ノルンさんは顔が引き攣りながらも聖書を構えて魔法を放つ準備をしている。

「私は平気だけど、ただ体液がねぇ…」

 そういってモニカは鋼鉄のメイスを構える。

「ほら早く! ライムも大剣を構えて! 」

 

ユキが背中に隠れながら大剣を構える様に指示を出してくる。

「分かったけど、あの玉虫の弱点とかってどこにある? 」

 後ろにいるユキを見ながら意見を求めるとユキはガクガク震えながら関節を切っていく感じで…って、こっち来たぁぁぁっ」

 ユキは慌てて俺の後ろにしゃがんで身を隠す。


「ちょっ、本当にこっち来てる! クソッ、男は度胸だ! いっけー! 」

 大剣を振りかぶって大きな玉虫を目掛けて振り下ろす。

 ブシャァァァァッ!!!!

 

緑色のドロッとした液体が降り注ぐ…

「ユキ…今ならユキの気持ちが分かる気がする…」

 玉虫の粘液まみれになり半べその状態でユキの方へ振り向くとユキは顔を引き攣らせて

「ごめん…本当にごめん、その状態でこっちに来ないでぇぇぇぇっ!! 」

 

そういってダッシュで俺と真っ二つになった玉虫から離れていく。

「ライムやったね! これで餌が手に入ったね! 」

 少し距離をおいてモニカが喜んでいる。

「なんでそんなに距離をおいてるの? 」

 

不思議に思いモニカに聞いてみると

「やっ…虫は平気なんだけど体液がねぇ、さっきも伝えたと思うけど苦手なんだよね…だからライム、水浴びしてドロドロを落としてきて」

 そういって後ろにゆっくりと後退していく。

「そんなに嫌なのか!? 確かにドロドロしてるけど俺、頑張って切ったのに…水浴びしてくるけど川はどっち側? 」

 

そういって左右を指差しどっち側か聞くと

「真っ直ぐだよ? 弟くん、道分かる? 案内しよっか? 」

 ノルンさんが手を繋いで顔を覗き込んでくる。

「ありがとう、助かります」

 そういって頭をさげると


「ねぇ、私のこと嫌いなの? 」

 ノルンさんは悲しそうにこっちを見つめてくる。

「えっ、そんなこと無いですけど何でですか? 」

 ノルンさんに問いかけると

「だって弟くん、何か他人行儀なんだもん!

今のだって「ありがとう、助かります」じゃなくて、「ありがとうお姉ちゃん」ってもっと家族と話す感覚で話してよ! 何か距離感があって今のままは、嫌だ! 」

 

そういってノルンさんは、見つめてくる。

「恥ずかしいんだよな…でもそっか、そんな風に感じちゃうんだ…分かった、さっきはごめん、お姉ちゃん…。恥ずかしいけど今度からお姉ちゃんって呼ぶようにするからきちんと反応してね」

 ノルンさんを見つめて俺の意思を伝えると

「もちろんだよ弟くん! それじゃあ改めて川に行こう! 」

 

ノルンさん…おっ、お姉ちゃんは俺の手を取って川の方向へ歩きだした。

「「タマムシノシタイヲ、トラレナイヨウニ、ミテル! 」」

 後ろにいるモニカとユキは残ってる様だ。

◆◇◆◇

「あっ! これを持って行きましょう! 」

 川に行く途中、ノルンお姉ちゃんがヘチマ? のしなびた様なものを蔦から切り取ってこちらにむかって投げてくる。

「痛い! 痛いから、これ何? 」

 ノルンお姉ちゃんに聞くとノルンお姉ちゃんは笑っているような声音で


「それはね、スカの実っていって名前のとおり中身が繊維だけでスカスカなの、だから身体を洗うには持ってこいの実なの、だから水浴びするときにそのスカの実で身体を擦って洗ったほうが良いよドロドロしてるから、背中はお姉ちゃんが流してあげるね♪ 」

 そういってスカの実を渡してきた。

(たぶん、ヘチマたわしの様なものなのだろう)

 

差し出されたスカの実を受け取り川へ向かう。

「それにしてもスゴいドロドロになったね…」

 服も鎧も緑の液体で悲惨な事になっている。

「確かに…はっきりいって予想以上のドロドロだった…」

 

そういってげんなりしているとノルンお姉ちゃんは笑って背中を叩いてくる。

「そんなこと気にしない気にしないスゴかったよスパーって切れて! 」

 励まそうと声をかけてくれているんろうが…。

「それで体液をもろ被りだけどね…でも確かに切れ味は良かったと思う、俺は弓と剣鉈だから正直大剣の良し悪しなんて分からないけど、あれは綺麗に切れたね」

 

川に着いたので着ていた鎧と服を脱ぎだす。

「川の真ん中まで行って軽く体液落とした後にスカの実を使って身体を洗った方が効率がいいから…。行ってらっしゃい! 」

 そう言われて背中を押されて川の中へ入っていく。







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