第11話 元シスターで今は骨

「ねぇ、もしかして俺の声が聞こえてて理解できる? 理解できてたら君から見て右手を挙げてくれる? 」

 スケルトンと呼ばれる骨? (骸骨? )に声をかける。するとスケルトンは右手を挙げて反応を示してくれる。

「どうやら話が通じるみたいだから武器はおろしていいよ」

 2人にそう伝えると2人は武器をおろすがすぐに戦闘が出来るように鍬を持って隣にやってくる。


「あの、何で魔物があなたの言うことを聞いているんですか? 」

 スケルトンが頬であったであろう場所に人指し指を当てて不思議そうに首をかしげてこちらを見つめてくる。

「目、無いのにこっちの事見れるの? 」

 ふと疑問に思ったのでスケルトンに聞くと


「へっ? 目が無い? どういう事? 」

 そういってスケルトンは自身の身体を確認し

 辺りを見るためなのかキョロキョロと首を振りパタパタと自分の身体を触って感触を確かめている。

「えっ、えっ? えぇ~!! 私、スケルトンになってる~!! 」


 スケルトンは自分自身に驚いている。

「ねぇライム、もしかして彼女、自分がスケルトンになってて驚いてるの? 」

 ユキが裾を引っ張って耳元で聞いてくる。

「そうみたい…彼女、自分がスケルトンって事に気づいて驚いてる」


 2人に説明をすると2人ともそれを聞いて呆然としている。

「あぅ~…どうして私はスケルトンになっちゃったの? 」

 そういって1人で頭を抱えて唸っていた。

「彼女はどうして頭を抱えてるの? 」

 

モニカが隣で不思議そうにこちらを見つめてくる。

「簡単に説明すると、どうして私はスケルトンになっちゃったの? って考えているんだよあのスケルトンは…」

 モニカは、その話を聞くと少し考えてから

「たぶんでもいい? あのスケルトン、何か未練があったんじゃないかな? 」

 

そういってスケルトンを見つめる。

「そうなのかな? 未練があったら、あんな風になるの? 」

「うん、たしか確率が高いのは未練だったけど個人差があるから100%とは言えないけど…」

 そういってモニカが答えてくれた。


「ねぇ、何か未練ってある? それがスケルトンになった原因かもしれないから思い当たる事があったら教えてほしいんだけど」

 スケルトンに話しかけるとスケルトンは顔をあげて「あの、私の声が聞こえるんですか? 」と不思議そうにスケルトンしている。

「うん、聞こえる。貴女の場合だと音が聞こえるんじゃなくて直接脳に訴えかけてくる感じかな…それで何か思い当たる未練ってあるの? 」

 スケルトンに話しかけるとスケルトンは何で死んでしまったのかを語りだした。


「私はノルンと言って昔ここが町だった頃に修道女シスターをやってました。ある日町の砦が破られて魔物が町に押し寄せてきて町民の方達を必死に逃がしていたのですが男達は虐殺されて女性は魔物の捕まり、苗床にされ魔物に無理矢理犯されて魔物の子供を孕まされて…逃げよう、死のうと思ってもそれが出来なくて、魔物を産み落とすと利用価値が無くなったのかそのまま殺されました…その時、きちんと人とした恋愛をして子供を作りたかったって思ったので、もしかしたらそれが未練かもしれないです」

 

オィィィッ!この元シスターは、なにを笑顔でこんな重い話をしてるんだ…。

 消化しきれないから…。

「ねぇ2人とも今の会話は、聞き取れた? 」

 モニカとユキ、それぞれに確認すると


「人の言葉だから途切れ途切れだけどなんとか」

 とモニカは苦笑いをしながら

「たぶん? 」

 とユキは首をかしげて返事をしてくれた。


「ねぇモニカ、いつ頃の人か分かる? 」

 モニカに聞くとモニカは少し困った顔をして

「なんとなくでもいい? 自信無いよ! 多分、150年ぐらい前の大戦時代の人じゃないかな…? 」

 自信が無さそうに教えてくれた。

「ユキは何か思い当たる? 」

 

ユキに聞くと

「途切れ途切れだったから、なんとなくだけど大戦時代の真ん中あたりで多分200~150年ぐらい前かな? 」

 そういって首をかしげている。

 そんな俺たちを見てノルンと名乗った元シスターは不思議そうに首をかしげている。


「どうして魔物と一緒にいて何もされないんですか? 魔物と人間は相反する存在ですよね…? 」

 そういって見つめてくる。

「う~ん、簡単に説明すると俺は魔物と話す事ができて偶然2人を救って話をしているうちに相思相愛になって…だから魔物も人間も笑いあって争い事の無い町を作ろうってなって、初めに拠点になる家を今建てているところかな…」

 恥ずかしくなって頬を掻きながら説明をするとノルンさんは驚いてるのか口を開けたまま無言でこっちを見つめてくる。


「えぇ~っと、意識はあるのかな? どんな顔をしてるのか分からないから俺もどう反応をしていいのか困るんだけど…」

 そう伝えるとノルンさんは胸に手を当てて気持ちを鎮めたのか「驚いてました…魔物に恋愛感情を抱くなんて、私には信じられません…」

 まるで俺の事を軽蔑するような声音で囁いている。

「俺は、野盗に家族を全員殺されて…人の方が信用できないし好きになれなくなった。そんなときにモニカ、彼女に会って温もりを知って愛することを知ったって感じかな…ユキ、彼女も似たような感じだね…ヤバい…思ってた以上に恥ずかしい」

 

そういって顔を真っ赤にして手で顔を覆っていると左右からモニカとユキが抱きついてきて「「ワタシタチモ、ライムガ、ダイスキ! 」」と人の言葉でノルンさんにも分かるように伝えてきた。

 ノルンさんは目の前で起きている出来事が信じられないのか口を開けたまま呆然としている。


「コレデ、ワカッタ! ワタシノキモチ」

 モニカがノルンさんを見つめて話しかけると

 ノルンさんは無言のまま頷いて

「分かりたくないですけど理解は出来ました」

 そういって俺達を理解してくれた。

◆◇◆◇

「話しは変わるけどこれからノルンさんはどうするの? 」

 ノルンさんに話しかけるとノルンさんは困った様子で頭を抱えてしゃがみこんでしまった。

「私、どうしよぉ~!! 」

 思いっきり叫んでスッキリしたのか諦めがついたのか顔をあげてこっちを見つめて


「私もあなたの理想郷作りを手伝いたい。私もあなたがどんな人なのか興味がでてきた! 」

 そういってノルンは手をこちらに差し出してきた。

 俺は左右にいるモニカとユキを見ると2人ともどういう事なのか理解してくれたのか頷いて背中を押してくれる。

「こっちこそよろしく! 魔物が苦手なのは分かったけど2人とは仲良くしてくれるといいな」

 

そういって手を差し出して彼女に握手をしてもらう。

「棟梁~! 家を広くしてほしいのと教会を建てて! 」

 資材置き場に居るであろう棟梁のもとへ走っていく。

「こんな魔物になってしまった私のために教会も作ろうとするなんて…やっぱりおかしな人…」

 嬉しさや悲しさ、驚きなど様々な感情が入り交じった声が後ろから聞こえた。

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