王都街道編 4・5日目

2-4-1 鎖の強度?肉論争?

 先生の希望で、その日の晩は二人だけで滝のふもとに設置したログハウスでお泊りした。


 朝、目が覚めると、すぐ目の前にいた先生と目が合った。


「おはよう龍馬君」

「美弥ちゃん先生おはよう。何時から起きてたの?」


「20分ほど前よ。目が覚めると龍馬君が横でスヤスヤ寝ていて、なんだか私とっても幸せな気分」


 どうやら先生は目が覚めてからずっと、俺を眺めてにやけていたようだ。


「なんか照れるけど、そう言ってくれると俺も幸せな気分になれるよ。いま何時くらい?」

「まだ4時前ね、寝足りないならもう一眠りできるわよ?」


「いや、皆が起き出す前に戻りたいし、罠の回収もあるからね。それと、朝のうちに先生の性衝動が起きないように、今からもう1回やっとこうかな」


「え!? 朝から? でも、その方が良いのかな? 夕飯時にまた抜け出すの大変よね? じゃあ、お願いします」


 顔を真っ赤にしながら、お願いしてきた。性衝動を抑えるのに、SEXで中出し絶頂をむかえることが一番効果があるのは実証済みだ。恋人がいるのにしないで、欲求を薬で我慢する必要はない。


 美弥ちゃんをちゃんと絶頂させてあげ、半分中に出して、半分は試験管に薬用に確保した。行為の途中に試験管とか白けると思ったが、中出し時の絶頂は桁違いの快楽が得られるようで、俺が試験管を出して採取していることなんて、放心状態の美弥ちゃんは気付いてすらいないようだ。



 美弥ちゃんが絶頂中に俺が中で射精してやると、更にその上の快感が走るそうだ。


 正直絶頂中にさらに絶頂とか、俺には良く分からない。男は射精中に快楽を得られるが、数秒程度のモノだ。

 こればかりは体験できないので、女にしか分からないのだろうな。


 勿論避妊の為にちゃんと【クリーン】で事後処理はしてるよ。





 転移で野営地に戻ると、料理部の女子たちが美弥ちゃんを見てニヤニヤしている。


「う~何も言わないでニヤッてされると、余計に恥ずかしいよ~」

「美弥ちゃん先生、ここで恥ずかしがったら余計にからかわれるよ。ドヤ顔してれば良いんだよ」


「龍馬君、そんなの無理ですよ~! そんな図太さがあるくらいなら、とっくに彼氏の一人くらいできてますよ~」


 それもそうか。少しの間からかわれても、すぐに落ち着くだろう。


「兄様……お帰りなさい」


 うっわ~、菜奈の奴ムッチャ不機嫌そうだ。


「おはよう菜奈、おはようのキスだ」


 菜奈のほっぺに軽く触れるだけのキスをしてみる。


「そんなことでごまかされないですよ! えへへ」


 口調はまだ怒ってるようだが、語尾が隠し切れていない。しかも顔はにやけてしまっている。単純なやつだ……そこが可愛くもあるのだが。


『……マスターは勘違いをなされています。菜奈が怒っているのは朝帰りのことや、黙って美弥とエッチをしに出て行ったことではなく、フィリアと桜の薬指の件についてです。今も美弥の指を見て尚一層機嫌を損なっているようですよ。同じく他の婚約者たちも不満があるようです。昨日のうちに全員に配るべきでしたね』


『そっちの件で菜奈は機嫌悪いのか……また焼き餅でも焼いているのかと思ったよ』


 勿論、腸が煮え返るほど嫉妬しているとのことだった……恐ろしい。


「そうだ菜奈、ちょっと手をだしてごらん」

「え!? あ、はい!」


 迷わず左手を差し出してきた……ナビーの言う通りのようだな。

 薬指に皆と同じ付与のかかった指輪を差してあげる。


「あの、兄様これは?」


 分かってるくせに聞いてくる……可愛い奴だ。


「婚約指輪だ。お前を守るための付与がしてある。いつも身に着けておくんだぞ」


 ネックレスも渡して、普段は首にするよう指示をしておく。菜奈は余程嬉しかったのか泣いてしまった。これまでの俺の態度で、結婚は少し諦めかけていたそうだ。口約束だけではなく、形になる約束の品が貰えたことが嬉しいとのことだ……。やはりこういうちょっとしたことが女子にとって大事なんだなと実感した。文句を言われる前に、他の婚約者たちにも順番に1人ずつ配って回った。一緒に集めて合同で配るような無粋な真似だけはしない。


 皆それぞれに嬉しそうな顔を見せてくれたので、付与云々は抜きにしても作って良かったと思う。




 指輪を配り終えたころ、フィリアが半泣きで俺の元にやってきた。どうしたんだろう?


「龍馬! 其方に貰ったネックレスが切れてしもうた! なんでじゃ?」


 どうやら皆とネックレスに通して首から下げている際に強度の話になったようで、フィリアは『龍馬のことだから強化の付与をチェーンにしてくれているはずじゃ』と言って、ちょっと強めに手で引っ張ったようなのだ。


 他の婚約者たちも強度に不満があるらしい。もし知らない間にチェーンが切れていて、指輪を無くしたらと不安なようだ。


「一応普通のチェーンよりは強度は上げてあるよ。無理やり引っ張ったりしない限りはそう簡単に切れないから心配しなくていいよ」


「もっと強度が欲しいかな……」


「ダメだね。俺はその強度が最適だと判断して作っているんだから。作ろうと思えば素材をミスリルじゃなくてブラックメタルで、強化の付与を最大級に掛けたら切れないチェーンもできるよ。でも、そんなモノ首にしていて、万が一戦闘中に力の強い敵にチェーンを引っ張られたらどうなると思う?」


「ん! 首チョンパ!」

「雅、正解だ。そういうことだ。即死級のダメージがくるからそれはダメなんだよ。だから敢えて怪我しない程度で切れるように強化してあるんだ。【身体強化】の強度込みなので、一般人なら怪我するぐらいの強度はちゃんとあるからね。それと、大事にしてほしいと思って言わなかったけど、全部にマーキングしてあるから、なくしても簡単に見つけられるので、そう心配しなくていいよ」


 フィリアの切れたチェーンを受け取り【リストア】で元の状態に戻してあげる。


「あ! その魔法があったのを忘れておったわ! 龍馬よありがとう」


 元に戻ったネックレスに指輪を通して、首に下げて嬉しそうに微笑んだ。

 ああ、やっぱりフィリア超可愛い!


「そういえば妾だけ付与が違うようなんじゃが?」

「だって元女神のフィリアに精神系の魔法は効かないでしょ? 無駄な付与を与えるより疲労回復とかの方が良いかと思って」


「ふむ、じゃがそれを言うならば、妾には毒も最初から効かぬようじゃぞ」

「え!? そうなの? そういう情報は先に欲しいかな……じゃあ【毒無効】の付与を【HP・MP回復量増加】にでもしようか?」


「ほう! 良い付与じゃな! 妾はそれが欲しいぞ!」


 再度受け取って付与の交換を行う。


「龍馬よありがとう! 皆もこの指輪は大事にするのじゃぞ。これらの指輪はこの世界では神級扱いで値がつかぬほどのものじゃ。商人などに見せるとヤバいことになるやもしれぬので、くれぐれも扱いには注意するのじゃぞ」


「「「はーい♪」」」


 フィリアから神級装備と聞いて、更に嬉しそうに皆が指輪を眺めている。皆が嬉しそうにしてくれたら、俺もやはり気分は良い。




 罠の回収に向かったのだが、全部の罠にいろいろ入っていた。地球では普通は獲れないようなポイントでも必ずなにかしらの獲物が入っていたのだ。幾ら誰も手つかずの川だとしても凄い漁場だ。一応今後のうな丼とモクズガニや手長エビ等の川漁の為に、地点登録しておいた。





 朝食後、出発時に今日の注意事項を話しておく。



「草原エリアで今日は難関地点になります。猫型の魔獣や、一般の獣の強い個体も沢山いるエリアです。それらを避けながら進みますので移動距離が少しあります」


「龍馬、具体的にどんなのが出るんだ?」


 三田村先輩は魔獣が気になるようで聞いてきた。


「今日中に襲ってきそうな昨日話した黒狼。ハイエナのような魔獣、普通のハイエナもいます。猫系だとライオンもいるようですね。後、チーターかな。途中でバッファローの魔獣を狩って行くつもりですので、少し遠回りになるかもですがご了承ください」


「美味しい牛肉なのですよね? 皆も食べさせてくれるのかな?」

「勿論です。料理部だけで食べたりはしませんよ。地球のバッファローと同じように大きな群れを作って行動をしているようですので、群れさえ発見できれば大量にお肉は確保できます」


「群れごと狩るってことですか?」

「そうなりますが、オーク同様魔獣ですので個体数が減ったら魔素溜まりからまた自然に生まれてくるので、絶滅とかはしません。遠慮なく狩っても大丈夫です」


「勝手に生れ出るとか、変な世界だよね?」

「そうですけど、神の創ったシステムの監視下で個体数の調整がされてるようなので、ある意味地球より世界バランスは良いのかもしれないです」


「地球の生態系を狂わせてるのって、ほぼ人間が関与しているのよね?」

「まぁ、そうでしょうね。牙や角とか毛皮欲しさに乱獲したり。駆除と称して狩りつくして日本狼も絶滅したらしいですしね。仕方がないといえば、仕方がないのかもですが……」


「仕方ないで済むような問題なの?」

「どう綺麗ごとを言っても、生を受けた時点で生物である限り弱肉強食だと思います。人間が勝手に神になったかのごとく、生物の個体に優劣を付けて、保護したり間引いたりしているだけだと思うのですが?」


「保護は大事じゃない? そうしないと絶滅する個体が一杯出るよ?」

「その発想自体が、自分たち人間が上位的存在と認識している証拠ですね。人間以外の生物はそんなことなど考えてもいないでしょう。ただ日々の食を求めて狩りをしているだけです。俺が嫌いなのは、決起集会だと称して集まり、散々パーティーで豚や牛や鶏肉を食っているくせに、翌朝クジラは可哀想とかの理由である特定種だけを保護しようとするアホどもです」



「クジラやイルカは頭が良くて可愛いのよ?」

「うわ! 桜、お前もか!? そんなこと言うなら、もうお前は肉食うな! 死ぬまで葉っぱだけ食ってろ! っていうか葉っぱも植物として一生懸命生きてるんだから、もう何も食うな!」


「嫌よ! 私はクジラもイルカも食べるわよ!」

「え!? 俺はイルカはちょっと……お前やっぱり変だぞ」


「何よ、龍馬君はイルカ食べたことあるの?」

「いや、ないけどさ……クジラはスーパーでも見かけるけど、普通イルカの肉なんて売ってないだろ?」


「おい、龍馬! 話が違う方向に行ってるぞ。いまは草原の魔獣のことが聞きたいんだよ」

「そうでした。危険な魔獣は事前にこれまでも迂回してきているので特に心配はいりません。完全に捕捉された黒狼だけは注意が必要です。とはいえ、本来の黒狼の縄張りから出ることになるし、まだ距離がかなりあるので、途中でターゲットを変える可能性もあります」


「了解した。狼が近付いたら教えてくれ」

「分かりました。ハティ、黒狼はお前たち白狼と縄張り争いをしている敵だ。お前を見かけたら、優先して襲ってくるかもしれないから、特に注意するんだぞ。俺の側から離れないようにな」


「ミャン!」

「「「可愛い!!」」」



 シリアスな話をしていても、ハティの可愛い一鳴きで全て持っていかれた。

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