2-1-3 1時間?女子達の交渉?
意図せずお風呂を覗いてしまった男子は、女子たちの監視の下、全員ログハウス前で正座させられている。
勿論そこに俺もいる。
「なあ龍馬、俺たち悪くないよな?」
「三田村先輩……ええ、悪くないですよ」
「小鳥遊もそう思っているのに、なんで黙って座らせられているんだよ? お前なら何とかなるんじゃないか?」
「水谷先輩が何を期待しているのか知りませんが、ここでこちらから発言するのは悪手です」
「でももう1時間になるんだぞ? いい加減足が痺れすぎて痛いのも通り越してきた」
「いま最終組のうちの料理部が入浴中なのですよ。それが終わるまでは覗きの再発防止も兼ねて解放してくれないでしょう」
「理不尽だよな……わざとじゃないのに正座とか」
「それは言っちゃダメですよ。理不尽ですけど実際何人かの裸見ちゃったでしょ?」
「「「うん!」」」
「見てしまったことを悪いとか思って後悔していますか?」
「「「………………」」」
「それで良いです。後悔しているとか嘘はなしです。おそらく一生ものの思い出になるほど凄く良いもの見れたでしょ? 正座くらいで見れるならラッキーですよ。いわゆるアニメやラノベのラッキースケベイベントです。この罰はあえて受け入れるのが正解です。ここで逆らうのは悪手です」
「これがラッキースケベイベントってやつか……俺、同級生のおっぱい初めて見たよ」
「「「俺も!」」」
「大影のスタイルすごく良かったな?」
「「「うん! 凄かった!」」」
「大影先輩って2年では人気あるのですか?」
「何言ってるんだよ。柳生と並んで2年の美人キャプテンで有名じゃないか?」
「美咲先輩は、全国的な有名人だから知っていましたが、大影先輩は知らなかったですよ?」
「学年が違うとそんなもんなのかな? でも城崎は中等部含めて全学年で知らない奴はいないだろうな」
「そういえば、美咲先輩も入浴中でしたね」
「龍馬、お前柳生の裸見たのか!?」
「「「見たのか!?」」」
なんか先輩たち殺気がダダ漏れなんですけど!
「いえ、見てないけど……先輩たちは見れたのですか?」
「「「見えなかった……」」」
「湯船に浸かってて、肩だけ出して腕で胸は隠してたよな?」
「「「うん」」」
「でも、濡れ髪姿色っぽかった!」
俺が駆けつけた時には美咲先輩立っていたからモロ見ちゃった。俺と目が合ってから隠すように湯船に座ってしまったんだよね。
「そういえば格技場の男子は2年生が多いんでしたね? 3年の男子は引退ですよね? 1年はどうして少ないのですか? TVとかでよくやっている運動部の先輩たちの虐めとかが酷くて辞めちゃったんですか?」
「違うよ! 空手部も柔道部も同じ理由なんだが……夏になるとほぼ辞めてしまうんだ。今年の1年で残ったのは中等部からやってた奴が各1名ずつ残っただけだ」
「剣道部もほぼ一緒だ。去年は柳生のおかげでかなりの入部があって、空手部も柔道部も剣道部も数人残ったんだが、今年の剣道部1年は0だった。防具をつけるだろ? 夏は暑いんだ! そしてそれ以上に臭い! なので、空手部や柔道部以上に人気がないんだよ。道具もめっちゃ高いしな。せめて格技場にもクーラーがあればよかったんだけどなぁ。体育館にはあるのに納得いかないよな」
それでも女子は美咲先輩を慕って2名残ったそうだ。来年には空調が格技場にも導入される話になっていたと美弥ちゃんが言っていた。熱中症で亡くなる生徒が増え、全国的に空調の導入が推奨されつつあるようだ。
おっと……女子が一杯きたきた――
「さて、小鳥遊君? 何か言い訳はあるかな?」
「何もないけど、俺たちが悪くないのは大影先輩も分かっているでしょう?」
「……そうね。悪くないというのは認めるしかないわね。悲鳴と勘違いして助けに駆けつけてくれたのでしょう?」
「「「そうだ!」」」
「でも私の裸見たでしょ?」
「「「…………」」」
「俺はたっぷり見ました! 右胸のほくろとかなんかエッチで眼福でした! 素晴らしく良い体だと思います!」
「あなたおかしいわ! ちょっとは彼らを見習いなさいよ!」
「彼らも大影先輩はスタイル良いって褒めてましたよ。それに隠さなかった大影先輩にも非があるのに、これ以上責めるのはおかしいです。もう1時間以上正座させられたので、罰としては十分でしょう?」
「はぁ、すっごく損した気分なのよ! 男子全員に見られちゃったじゃない!」
「他の女子のように隠せば良かったじゃないですか? それを負けた気がするので嫌だとか言って隠さなかったから見られちゃったのでしょ? 所謂これは男子からすればラッキースケベってやつで、責めちゃダメなやつです」
「くぅ~~腹立つけど分かったわよ! 三田村君たちもういいわ。見ちゃったのは仕方ないから忘れて頂戴。あなたたちを座らせていたのは、まだ他にも女子が残っていたからなの。入浴のことを伝えてなかったこちらにも非があるので、今日はこれでお咎めなし。正座させたのは、やはり非がなくても気が収まらないから。以後、女子がいるってことをもっと配慮してね」
「「「了解した!」」」
「俺はあんな良いモノ絶対忘れない! 脳内メモリーに保存した!」
からかうように言って、立ち去ろうとしたのだが止められた。
「小鳥遊君はまだ駄目よ! 正座はもういいけどまだ話があります!」
え~、もう勘弁してよ~。
「龍馬君、さっき私の裸見ましたよね?」
美咲先輩が、俺の前にやってきて目を見据えて質問してきた。
これは嘘つくとマズい目だ……正直に言おう。
「はい、素晴らしい御身体でした! 桜とはまた違ったアスリートの体です! 全身が引き締まった素晴らしい御身体です! 大影先輩同様眼福でした!」
「「「お前さっき見てないって言っただろうが!」」」
男子共が超殺気を出しまくっているが、美咲先輩に嘘を言って嫌われたくはない!
「龍馬君、ちょっとは自重しようよ……」
「兄様最低です!」
「ん! バカ!」
「「龍馬先輩エッチです!」」
「先生としてはもう少し考えてから言ってほしいな~」
桜を筆頭に嫁共がちょっとお怒りだ。
「そうですか、やっぱり見ちゃったんですね……責任取ってくださいね?」
責任? 美咲先輩、何言ってるんです? どういう意味だ? まさかあんなことぐらいで結婚とかはないよね? それだとここにいる女子の何人と結婚しないといけないんだって話になる。
「「「ああ~あ……」」」
美咲先輩は顔を赤らめて走り去ってしまった。
う~~ん、分からん。
「美咲のことは私が後で声を掛けてみるわ。それより交渉よ! ここにあなたが裸を見ちゃったであろう女子が集まっています。交渉と言いましたが、今回はお願いです! 明日もお風呂に入りたいです! 許す替わりと思って、また明日も造って下さい!」
そうきたか! む~~! しかも謙虚に頭を下げていやがる!
「なかなか渋い交渉術ですね。見ちゃった女子を集めて、怒る替わりに全員でお願いしてくるとは……」
「龍馬君、実際どうなの? 最大戦力のあなたがMP切れとかになるくらいならこの話は私たちで突っぱねるわ。でも余裕があるなら外の露天風呂は凄く良い感じだったので、私もまたお願いしたいくらいなのよね~」
桜はMP次第で協力してやれと?
う~ん……面倒なんだよな。
『……マスター、入浴はナビーも推奨します。ほぼ1日歩くので、冬でも汗をかきます。草原の魔獣は広いエリアから匂いで追尾する魔獣が多いので、入浴して匂いを消すことをお薦めします』
『シャンプーはそれで足りるのか?』
『……はい、業務用の分も錬成して香り成分は除去しています。町までの分なら毎日入っても十分足ります。それといま使ってる土魔法で錬成した湯船をもう少し形を整形し直して、さらに強化してからそのまま【インベントリ】に放り込んでおけば明日以降、魔力はお湯を張り替える分だけで済みますよ? なんでしたらそれは彼女たちにやらせても良いのではないですか?』
『成程な……今日少し弄っておけば明日以降は大した労力じゃないんだな。それでいて匂い対策にもなるか』
「桜は露天風呂の方が好きか?」
「そうね、今日のは素敵だったわよ。広い大草原の中で星空を見ながらの入浴なんてとっても素敵じゃない。私だけじゃなくて女子全員が喜んでいると思うわ」
「ん、大きいお風呂の方が良い」
「雅もか……分かった。明日以降もお風呂は提供する」
「「「キャー! ヤッター!」」」
「「「小鳥遊君ありがとう!」」」
「ちゃんと指定のシャンプーで洗うこと。それとこの人数の風呂は想定していなかったので、シャンプー・リンスの使用量はちゃんと適量を守ってくれないと街に着くまでになくなっちゃう。適量で使ってくれれば、何とか街まで持つので気にかけて使ってほしい」
「「「分かりました~」」」
せっかくなので俺も露天で入ることにする。
「俺たち男子も風呂に行きますか?」
「「「お! 風呂か!」」」
「待って! お湯は張り替えてね! 気分的に私たちが入った残り湯に入られるのはなんか嫌なの」
「「「城崎さんの残り湯!」」」
「了解した! 全部お湯を抜いた後【クリーン】を3連発入れておこう!」
桜たちの使った後の残り湯なんかに入らせてなるものか!
「「「ふ~~極楽極楽!」」」
「龍馬、お前やっぱ凄いな。魔法でこんな物まで簡単に作っちゃうんだな」
「これはちょっと練習すれば誰でもできますよ。【錬金術】Lv5【付与魔法】Lv4【ストーンラウォール】Lv6【魔力操作】Lv5があればできることです。中級魔法程度の魔法が使えればできますね。ああ、でも魔力量が普通の人じゃ足らないか。俺たちは勇者仕様なので魔力も多いですけど、こっちの世界の人には魔力不足でできないでしょうね」
「仮にそのスキルをすべて持っていたとしても、俺にはどうやればこんな風呂になるのか想像ができない……」
「だな、お前が女子に一目置かれてるのもこうやって見せつけられたら、納得してしまったよ」
「「モテまくってるもんな……羨ましい」」
「先輩たち、モテたいのですか?」
「「「うん!」」」
「ですよね~この世界では強い男が持てるそうです。特に獣人、犬族は種族特性で強い男に惹かれるそうです。耳と尻尾がある程度で、ほぼ人間と変わらないそうなのでリアル猫耳少女とか可愛いでしょうね。耳がピクピク尻尾がフリフリされたら見てるだけで癒されそうですよね?」
「おお! なんかメイド喫茶みたいなのがリアルでいるのか!」
「強くなりたいですか?」
「「「女抜きでもな」」」
「あはは、やっぱ脳筋系ですね。格技場男子たちを信じて、ちょっと強引なレベル上げでもやりますかね。街に着くまでにあなたたち男子を、この世界の上級冒険者クラスまでレベルアップさせますので、街についた後、女子たちを陰ながら守ってあげてください」
「なぜお前が守れとかお願いするんだ? 女子全員の保護者気取りか?」
「水谷先輩、悪いようにとるのは良くないですよ? 俺がさっきああ言ったことによって、何かあった時に俺に頼まれたと言い訳が可能になるのです。先輩が町で夜女子が歩いてるのを見かけて、心配で気に掛けて家まで尾行して送ってあげていたとします。途中で気付かれた場合、強姦魔とか変質者、良くてストーカー扱いされるでしょう。さぁ、どうします?」
「うっ……冤罪だが、詰みだ……絶対ストーカー扱いされる……」
「そこでさっきのが使えるのですよ。『小鳥遊に頼まれた』……と言っても怪しまれたなら俺にコールをくれれば対処します。俺のように実際守ったという実績は大きいのです。あの佐竹たちにですら、女子5人が守られたという実績で追従していたでしょ?」
「確かにそうだな……いや悪かった。万が一そういう事態があったらお前の名前を借りるよ」
「本当にストーカーとかして逃げるために名前を使わないでくださいね」
「しねーよ!」
その時バシャーンと水飛沫を上げて湯船が波打った……雅がハティを抱いて飛び込んできたのだ。
「雅! お前、何考えているんだ!」
「ん、水着だから問題ない」
確かに学校指定の、胸に白い布でクラスと名前を大きく書いているスクール水着を着ている。
「ちげーよ! こっちがフルチンだって言ってるんだ!」
「ん、龍馬以外興味ない。私で勃起するような変態は切り落とす」
「大丈夫とは思うけど、スク水姿の雅に欲情とかしちゃってる人いる?」
「龍馬、確かにその子は凄く可愛いとは思うけど、流石にそんな子供に欲情はしないだろ?」
良かった……全員ノーマルだった。
だが雅は今の発言にブチギレして【アクアボール】を三田村先輩にぶっかけて出て行ってしまった。
「龍馬、あの子に謝っておいてくれ」
「いや、三田村先輩は別に悪くはないですよ」
雅が去った後も、ハティだけが元気に犬掻きで泳いでいた。
ハティは男子にも大人気だな。
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