第30話 転生ペア VS ランホリンクス… (30話)

 私とカスミちゃんは剣を抜いてとりあえず滑空してくるランホリンクスに備える。


 こちらが迎撃態勢を取っていることが分かったのだろうか。

 ランホリンクスは近づいてくるといきなり風魔法を発動してきた。

 とても頭脳派とは思えない面構えだが、なかなか強力な魔法だ。

 羽の羽ばたきで生じた風を魔法で増幅、加速しているのか、風速100メートル毎秒にも感じられる突風が私たちを襲う。


 突然の事に加えて、体重の軽い7歳児である私たちは、なすすべもなく吹き飛ばされた。


 私は冷静にサイコキネシスで自分を持ち上げ、レビテーションを発動する。

 カスミちゃんがこちらに飛ばされてきたので、お姫様だっこで受け止める。


「ありがとう、アリアちゃん」

「大丈夫?カスミちゃん」

「うん」


 やはり、空を飛べる相手に地上からでは不利である。

 もっとも超能力を全開で使えば何とかなると思うが…。

 私はとりあえず、無茶な戦闘痕を残して、私たちの異常能力がバレルのは避けたい。

 トルネード系の魔法なら有効かも知れないが、竜巻は遠くからでもよく見えるので目撃者が出るかも知れない。

 やはり、肉弾戦がいいだろう。

 偶然切りつけたら羽に当たって落ちたなどの言い分けがしやすそうだ。


 私はカスミちゃんに尋ねる。

「カスミちゃん、サイコキネシスで自分を持ち上げられる」


 カスミちゃんと二人で空飛ぶ魔法少女よろしく空中戦を仕掛けて見たい。

「うーーん。どうかな?とりあえずやってみるね」


 そう言うとカスミちゃんは全力でサイコキネシスを発動する。

 私の手にかかっていたカスミちゃんの体重が突然軽くなる。

 その瞬間、カスミちゃんはものすごい勢いで射出された。


「きゃーーーーーーーーーーっ」

「かすみちゃーーーん」

カスミちゃんの悲鳴と私の絶叫が交差する。


 ドスンッ


 カスミちゃんが飛んでいった上空から鈍い音がした。

 見上げるとそこには驚愕の光景があった。

 弾丸と化したカスミちゃんが、私たちに魔法をかまして一撃離脱していたランホリンクスの下あごに命中していた。


 脳を揺すぶられ力なく落下する牛付きランホリンクス。そしてカスミちゃん。


 私は地面に落ちる前にカスミちゃんととらわれのお姫様(うし)にサイコキネシスを発動し、激突を避ける。

 ランホリンクスは…、もちろん助ける義理はないので放置する。


 昨日の敵は今日の友とはいうが、ついさっきまで私たちを襲おうとしていた敵はまだ今も敵でいいだろう。


 放っておかれたランホリンクスは頭から墜落し、動かなくなった。


 どうやら空飛ぶ魔法少女ごっこはお預けのようだ。

 カスミちゃんの神風アタック一発でけりがついてしまった。


「いったーーー。頭打ったーーーー」


 地上に戻ってきたカスミちゃんは頭のてっぺんを抑えて痛そうだ。


「大丈夫、カスミちゃん」

「アリアちゃーーん。まさか恐竜と頭突き合戦するとは思わなかったーー。こぶ出たー」

「分かった。すぐ冷やすね」


 存外に大丈夫そうだ。

 私は、先ほど水筒に集めた水を冷水にして、布を浸し、固く絞ってカスミちゃんに渡した。

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