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その時、スマホの画面にSNSアプリのメッセージの通知が表示される。
『Sei:すまない。バタバタしていて、順序を間違えた。ともかく、Mission2は俺が解いて答えを送った。答えも合っていたようだし、良かった』
バスは、田舎道を真っすぐに進む。もうすぐ、私の家の近所へとたどり着くだろう。
『榊田清盛:いや、良かったとかじゃなくてさ。普通確認とか取るだろ。仮にも三人でやってるならさ』
続いて画面に表示されたのは「清盛」のメッセージ。私を煽ってくること以外は消極的な奴だが、意外にも真っ先に反論を述べていった。
『Sei:そうかもしれないけど、君も「ましろ」さんもあまり謎を解く気はなかっただろう。授業中に考えていたら分かったから、とりあえず答えを送ったんだよ。自信もあったし』
バスは私の家の最寄りの停留所に止まる。
「じゃ、私帰るから」
そう言って真珠のもとを離れる。離れ際に何やら意味深に「がんばってー」と手を振っていた。本当に
それはそうと、バスを降りて家への道を歩きながらもう一度スマホの画面を明るくする。
『榊田清盛:そりゃあそうだけどさ。やいやい
コイツ、放っておいたら好き勝手言いやがって……。
『Sei:だから忙しかったから時々しかメッセージを見ることができなかったんだよ。そんな状態で止めに入ったって無駄だろう』
『榊田清盛:はいはい、忙しいアピールどうも。でもさ、忙しいっての言い訳にすんなよ、社蓄か』
『Sei:言い訳じゃないさ、れっきとした理由だ。言い訳というなら、君たちが言い争ってたのに対してどっちが悪いとか言うのも言い訳じゃないか』
この短時間でこれだけのやり取りができるのだからすごい。だが、ともかく論点がズレていると感じた私は、間に入っていく。
『あのさ、問題はSeiが勝手に答えを送ったことでしょ。今度からはちゃんと確認する、でいいんじゃないの』
これ以上この問題に対してああだこうだと言っても火に油を注ぐだけだと判断し、そのように送る。
『分かった。次回からは気を付ける』
「Sei」からはそう短く返ってきた。続いて送られてくる。
『だが、次の謎についても闇雲にやったって効果はない。だからやり方を決めよう』
『やり方?』
『そうだ。とりあえず、日時を決めてそれまでは自分たち一人ひとりが謎に取り組む。指定の日時になれば、各自が考えた結果を持ち寄って解決する、というやり方だ』
Seiの言う「やり方」が何を意味しているのか。
『とりあえず今回については二日後、20日の夜21時でどうだろうか。それまでは自分たちで考えるということで。もし不都合があれば言ってほしい。日時を変更する』
そこまで見ると、私はスマホの画面をそっと暗転させる。
うん! 私たち全くもって信用されてないや!
本当に、あの「Sei」は、自分では物事を取り仕切って進めていて、私たちをまとめているつもりなのだと思う。だけどその言葉の節々から感じ取れるのは、あー、私たちのこと、信頼してないや、っていうような感じ。
結局の所、一人ひとりで考えるということはその間に自分が答えを見つけ出してしまえばいい話なのだ。すなわち、「Sei」は私たちと関わっていても
だが、それを本人は無意識かつ罪悪感無しにやっているのが
それが人の気を悪くしていることにも気付かずに。
あーくそ、イライラする。舐めやがって。しかし、これをぶつける相手もいないというのもまた事実。まさかキモオタ……、もとい「清盛」に話すわけにはいかない。ていうか嫌だし。
本当に、世界は私に優しくない。
ふひぃ、と変な息を吐きながら、田舎空を見上げるのであった。
それにしたって、「清盛」も何か言ったらいいのに。さっきから何も言わずに既読だけつけている。
奴が何も言わないのなら、この「Sei」の提案に対しても私が答えるしかない。ということで、私は渋々もう一度メッセージアプリを起動し、返事の文を書く。
『分かった、それでいい』
心中とは裏腹に、承諾のメッセージを送る。ここまで決められてしまえば、もう覆すのも困難だ、というよりもこれに並ぶだけの代替案を編み出すのも面倒だった。
要は、どこまで一人でやりきれるのか、試してみようじゃないかと考えたのだ。勝手に一人でやって、一人で解決できるのなら、わざわざ私がそれに付き合う理由もない。さっき真珠に、意味がないと言われたばかりだ。
こんなことしていたって、大事なことなんて何一つとして得られることはない。
そう考えていくと、自宅にたどり着く。比較的大きな古民家だ。築何年か、とかは一切分からないがそこそこのものだと思う。
「ただいま」
私は一言だけ述べると、誰もいない自宅へと足を踏み入れていった。
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