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※
寄合所の暗がりに、二台の
その中に、梟のような落ち窪んだ眼に光を灯す男、上松祐がいる。
墓石のような端末を前に、祈りを捧げるような形で、屈みこんで何やら操作している。閉め切った部屋はいささか暑苦しく、男の額に薄っすらと汗が浮かぶ。それにも気付かずに、彼は祈祷を行う。悪しきものを排するために。この桃源郷を、守り抜くために。
落とされた
「む……」
――外が何やらうるさい。さっきから何をしているのか。村で催事など行われていないはずだ。ひまわりの國に登記されない行事など存在しない。況してや、いまは侵入者の対応で上松自身がとりわけ忙しい。理由を繕って、外出禁止令を出していたというのに。
堪りかねて飛び出していこうと立ち上がった上松の前で、寄合所の戸が勢いよく開け放たれる。ガヤガヤと雪崩れ込んできたのは、ひまわりの國の信徒たちであった。
「お前たち、何故来た? 今は精進潔斎の時期である。決して入るなと――」
厳しく窘めると、最前列の老翁が気弱そうに弁解する。
「はぁ、でも私ら、今日これから御詞があるつう連絡を貰たんです。なあ」
「そうじゃ、そうじゃ。何でも大事な話があるっちゅうことで」
「誰だ、誰がそんな事を言った」
慌てふためく上松を見て、へらへらと笑う信徒たち。何かがおかしい。
「そりゃ、導師様やって。何を云うちゃって、まぁ」
「ほいじゃ、ど忘れもあろうて。しゃあないわ」
またどっと笑う老人たち。どういうことか、と深く問い詰めようと距離を縮めた際、彼らの後方から上がる一筋の紫煙に気付く。
――なんだ、煙草か?
「誰だ、ここで煙草など、世俗の物を持ち込んで! ここは禁煙であるぞ!」
「堅いこと云うなよ。若いんだから」
老人の間から進み出てきた男に、上松は見覚えがあった。
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