第48話 幼馴染

 加代は郁美を見た瞬間、あまりにも麗子と似ていたため、非常に驚きましたが、麗子は郁美を、自分の幼いころを演じるために選ばれた子役として紹介したあと、郁美は自身の貧しい家計を助けるために、自分が所属しているプロダクションの社長の養女となったと話しました。そして4人で岡山市内の映画館に行き、郁美と共に出演した映画を加代に鑑賞させたことによって、加代にはまったく気付かれることも、実の親子では?という疑いも抱かせることはありませんでした。

 その後、麗子は2週間に一度の割合で、郁美を連れて頻繁に岡山を訪れ、たとえ1時間でも秀喜と接触を持たせました。

 その結果、秀喜と郁美は幼馴染として育ち、思春期を迎えた二人は、いつしか互いに惹かれあい、自然と寄り添うようになりました。

 加代はそんな二人を眺めながら、このままこの二人が結婚して、夫婦となることを望むようになりました。

 しかし、すべてが麗子の思惑通りとはならず、その後の麗子の芸能活動は波乱続きで、彼女の性格が災いしたのは勿論のこと、作品にも恵まれず、神崎のプロダクションも、看板女優の落ちぶれとともに、次第に経営が傾いていきました。

 業績の悪化に比例するかのように、麗子と神崎の二人は私生活も荒んでゆき、いつしか酒とマリファナに溺れるようになり、しまいには覚せい剤にまで手を伸ばしていきました。

 そしてある日、麗子と神崎は覚せい剤を打ったあと、かつて自分たちの事務所に所属していた女優の元を訪れ、裏切り者呼ばわりしたことからトラブルとなってしまい、二人はその女優を監禁して暴行を加えたことにより、警察に逮捕されました。

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