激突!

1

 勝又勝の下駄の音ががらがらと廃墟にひびく。

 がらっ、がらっと大きな音を立て、勝は肩をいからせ、あたりを睥睨しつつ歩き回っていた。

 戦う相手を求めていた。

 このごろは篩い落しがすっかりすみ、こそこそ隠れていた連中もバッジを取り上げられ、島を後にしている。勝の胸にも金色のバッジが光っていた。

 もうすぐ決戦は近い……。

 勝はその日が待ち遠しかった。

 交換所にバッジを交換しに行くたび、上位の名前に「真行寺美和子」の名前を確認し、そのたび頭に血が昇ったが、いつか再び合間見えることを思ってみずからを慰めていた。

 それよりもうひとつの名前が気になっていた。

 風祭俊平……。

 この名前はバッジ獲得者の上位に、つねに食い込んでいる。

 美和子が一番であることは変わらないが、勝と俊平のふたりは二位、三位を入れ替わって常にかかげられていた。

 いったい、どんなやつだ?

 交換所の係員の話しによると、ひどく身体の大きい奴らしい。勝自身、百八十以上ある長身だが、そいつはさらに頭ひとつ凌駕しているという。となると、最低でも二メートルはあるということだ。

 ぽつり──、と一粒の雨が勝の鼻を打った。

 ん?

 勝は空を見上げた。

 日差しが急に翳り、あたりが急激に暗くなっていく。

 ひゅう……、かすかな風が勝の髪をなびかせる。

 ぽつ、ぽつ……。

 雨粒がぱらぱらと降り注ぐ。そしてざあっ、と音を立てあたりが白く飛沫いた。

 通り雨だろうか。

 雨のカーテンの向こう、だれかが立っている。勝は目を細めた。

「誰だ!」

 人影はかすかに身動きをした。

 ひどく大柄だ。

 背も高いが、肩幅も広い。というより、まるで樽に手足が生えたような異様な身体つきをしている。

「おめえが勝又勝ってやつか……」

 ひどく野太い声が雨音を突き刺すように聞こえてくる。勝は腰を落とし、身構えた。

「そう言うおめえこそ、誰なんだ」

 くくくく……と相手は笑った。

 聞くまでもない……勝は直感していた。

「おめえが風祭俊平か? 会いたかったぜ」

 いつしか勝の頬に笑みが浮かんでいる。

 ゆらり……と、相手は足を踏み出した。

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