とにかく話を聞こうと、美和子が提案し、三人はちかくの食堂へと移動した。

 食堂は二十四時間、いつでも開いている。

 朝が早いため、食堂にはあまり人がいない。

 トーナメントの参加者がここに顔を出すのは、昼近くになってからだ。不良と呼ばれるかれらは、朝が弱いのである。むしろ美和子のように朝早くから活動しているほうが異例である。

「なにか頂きましょうよ」

 美和子の言葉に、茜のお腹から「キュウーッ」と、空腹を訴える音がした。

 茜は顔をあからめた。

「ごめんなさい、昨夜からずっと食事抜きだったもんで……」

 くすり、と美和子は暖かな笑みを浮かべた。

「いいのよ。一緒にお食事しましょう」

 美和子が椅子に腰かけると、太郎はかすかに頭を下げ、トレーを持ってバイキング式の食事コーナーに向かった。

 いつもの習慣で、手は料理をトレーに持っているが、目はすばやく食堂を見渡している。その太郎の視線が、食堂の一角にとまった。

 ひとりの女性参加者がトレーに食事を盛っているところだ。

 あの、島に上陸する前に船で出会った、中国服の女である。あいかわらず表情は覆面におおわれ、わからない。彼女はトレーに食事を用意すると、そのまま階段をのぼって上階へ上がっていった。おそらく部屋の中で食べるためだろう。ちら、と彼女は階段に上がる直前、太郎を見た。

 にっ、と彼女の瞳が笑いに細くなる。

 そのまま彼女は階段をのぼっていき、姿が見えなくなった。

 太郎はトレーに食事を用意した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます