第18話 私の決意!!

 放課後になり、私は皆が待っている部室へと行った。今日の部活では何をやろうかな? どんな面白い事が待っているのか? そんな事を考えながら、私は今日も部活にやって来た。

「やっほ~!! 来たよ~」

 私は、部室のドアを開けるなり、いつもと同様に元気よく挨拶をしながら部室に入った。元気よく大きな声を出せば、部室にいる古都ちゃんは私が来た事に気づいてくれる。そう思い、私は大きな声を元気よく出した。

 しかし、この日の部室はいつもとは雰囲気が違っていた。部室に入った直後からそれは感じていた。この日の部室には、いつもとは異なり、映像制作部の顧問の先生がいたからである。ただ、顧問の先生がいるだけでなく、ソファーに座っているキョウちゃんも美沙ちゃんも、そして古都ちゃんまでもが、いつもとはどことなく雰囲気が違っていた。

「一体、何があったの?」

「あらっ、秋風さん。やっと来たわね。ちょうど四季神さんの件について、みんなに報告をしなければならない事があって、今はその事を話していたのよ」

 顧問の先生は、香里奈ちゃんの事を話していた。顧問の先生が部室に来て、尚且つ部員に香里奈ちゃんの事を話しているという事は……? う~ん、真相が凄く気になる!! そう思っていた矢先に、顧問の先生は深刻な話をやる様に喋り始めた。

「四季神さんが学校に黙ってUTube活動をやって問題を起こした件について話をしていたのよ」

「問題って、何を!?」

「四季神さんが昨日に上げた動画の内容の件で、近隣住民から苦情が学校に来たのよ」

「苦情が来たって、香里奈ちゃんは何も悪い事はしてないはずだよ!?」

「確かに本人は悪いつもりはなくても、動画を撮影する時に何時間も無断で公園の一部を占拠したり大音量で音楽を流していたら、いつどんな人から苦情が届いたっておかしくないのよ」

「そうなの。でも、なんで近隣住民は香里奈ちゃんの通っている学校が分かったの?」

「四季神さんが昨日に投稿をした動画に、フェイカーズの動画先に飛べるリンクを貼っていたのよ。そのリンクが決定的な証拠になって、学校先を特定できたというワケよ」

「そんな簡単に特定が出来てしまうなんて……」

「物事がバレる時なんて、どこかで情報が漏れているという事なのよ。でも、それがどこで漏れているかなんて当人には気づけないものなの。だから、常に気をつけておかないとダメなのよ」

 顧問の先生は、香里奈ちゃんの学校がバレた理由を言った。

「でも、学校を知ったからって、わざわざ通報する事じゃないと思うよ」

「そう思うけど、近隣住民にとっては凄く大事な事なのよ。世間でUTuberと呼ばれている人達が街中で撮影をする際に、無断で撮影をして周囲の人に迷惑をかけるという事件は少なくないのよ。そういった事件があるせいで、未だにUTuberをモラルのない人間だと思って、冷たい目で見ている人達だっているのよ。その件で話があって、今日の昼休みに四季神さんは職員室に呼ばれたのよ」

「そうなの。それでだったの」

 私はこの時、初めて香里奈ちゃんが昼休みの時に職員室に呼ばれた理由が分かった。

「それで、香里奈ちゃんはどうなったの?」

「初めは撮影中に近隣住民に迷惑をかけるなら動画撮影は止める様に注意をかけられただけだったのだけど、四季神さんがその注意を素直に受ける事もなく、先生に反論をしたのよ。そしたら先生が怒って、これ以上今まで通りのUTube活動を続けるのなら学校を辞めろと言ってしまったのよ」

「たっ、退学!? そんなのいくらなんでも重すぎだよ!!」

「まだ完全に決まっていないわ。とりあえず四季神さんには卒業までの間、UTube活動を禁止していただくか、UTube活動を維持する為に学校を退学してもらうかの2択を言われている状態なの。一応、四季神さんには選択肢はあるし、そう簡単に退学にはならないと思うわ」

「でも、退学をやらないというのなら、それは同時に香里奈ちゃんがUTubeを止めるって事だよね?」

「退学をしないのなら、そうなるわね」

 先生に反論をした香里奈ちゃんにも問題はあると思うけど、香里奈ちゃんのUTubeに対する思いも聞かずに、強引に止める様に言った先生側も酷過ぎる!!

「なんで先生達は、香里奈ちゃんの考えをまともに聞かないのよ!?」

「ここだから言うけど、学校側なんて、所詮は自分達の都合のいい様にしか動かないものよ。だからこそ、生徒の主張なんかよりも、学校側の考えを優先するものよ」

「でも私達は、自由にUTubeに動画投稿が出来るよ。それなのに、なんで香里奈ちゃんは一度のミスで止める様に言われないといけないの?」

「フェイカーズが自由に動画を投稿出来るのも、この映像制作部という部活があるお陰なのよ。部活がなければ、学校内で自由にUTube活動なんて出来なかったと思うわ」

「そうなの!?」

「それ以外にも、何かしらの理由でトラブルになってしまった時に素早く対応が出来る以外にも、フェイカーズ達が野外で撮影を行う時に仲介に入ったりする役目だって行っているのよ」

 顧問の先生は、映像制作部が存在する理由を私に言った。

「つまり、この映像制作部が存在するのは、いわゆる事務所のような役割を果たす為よ。実際にもUTubeでのトラブルが原因で、学校を退学になったUTuberは、少なからずいるのよ」

「それは、知らなかったよ……」

 そして、フェイカーズが自由に動画を投稿出来ていた理由をここで初めて聞かされた。

「あれっ!? もしかして秋風さんは部活が作られた経緯を知らなかったの?」

「知らなかったよ!!」

 私の表情を見た顧問の先生が、部活の出来た経緯を知っているのかと聞いて来た為、私は知らないと答えた。私がこの映像制作部に入部をしたのは、現メンバーの中でも一番最後だったから、部活の誕生秘話なんて知らなくて当然。そんな事よりも、何で今まで誰も教えてくれなかったのよ!! も~う!!



 それはともかく、香里奈ちゃんはどうなってしまうの? 今日の昼休みに話をしたばかりなのに。このまま頑張り続ければ、いつかは香里奈ちゃんとコラボが出来て仲良くなれると思い、新しい目標が出来たばかりだったのに、この目標は未達成のまま終わってしまうの?

 そう言えばさっき、映像制作部が存在する理由は、野外での動画撮影の際に学校側が仲介に入って話を通したりする事務所の様な役割を果たしているとさっき顧問の先生が言っていた。そんな映像制作部という部活があるお陰で、フェイカーズは学校内でUTubeに投稿する動画の撮影が出来ている…… もしかしたら、香里奈ちゃんもこの映像制作部に入部をすれば、今まで通りUTube活動が出来るかも知れない? 

「ねぇ、香里奈ちゃんが映像制作部に入部をすれば、退学をする事もUTube活動を辞める事もなく済むんじゃないかな?」

「それもそうね。一応、四季神さんの件に関しては、四季神さんが映像制作部に入部をすれば、引き続き今まで通りUTube活動をやってもいいって理事長も言っていたし、入部をすれば今まで通りの活動が出来ると思うわ」

 顧問の先生の言った言葉を聞いた私は、香里奈ちゃんに助かる道があったと思い、先程までの不安は一瞬にして消えた。

「その道があるなら、今すぐにでも香里奈ちゃんを映像制作部に入れようよ!!」

 私は必死になり、香里奈ちゃんを映像制作部に入れる事を強く主張した。

「まぁ、出来ればそうしたいけど、四季神さんの意見もある事だし、それにまずは現部員達がどう思っているかを聞かないとダメよ」

「もちろん、みんなは香里奈ちゃんが入部をする事に賛成だよね!? だって、このままだと、退学かUTube活動の停止だよ!!」

 顧問の先生の話を聞いた後、私は今度はキョウちゃんと美紗ちゃんのいる方に顔を向け、必死になって言った。

「退学か活動停止以前に、まずは香里奈がどう思っているかが重要だよ」

「そうね。確かにこちら側でいくら入部を勧誘しても、肝心の四季神さんが入部を拒否すれば、全て意味はないのよ」

 キョウちゃんと美紗ちゃんからは、私ほど香里奈ちゃんの入部の件に関しての関心はあまり持っていない様にも見えた。

「そんな事ないよ!! 絶対に来てくれるよ!!」

「果たしてそうかしら? あの性格の四季神さんが素直に入部なんてすると思うかしら? それに四季神さんは春浦さんとは犬猿の仲なのよ」

「そうだった!!」

 確かに美紗ちゃんの言う通り、香里奈ちゃんと古都ちゃんは犬猿の仲である。その為、この入部の件が簡単には終わるはずがないという事は私でも知っている事だった。でも、活動休止か退学という究極の2択を迫られている今の香里奈ちゃんの状況を知っている古都ちゃんだったら、もしかしたら素直に映像制作部に入れようと言うかも知れない?

 そう思い、特に深刻な様子を見せていない古都ちゃんの真相が気になった私は、古都ちゃんにも聞いてみる事にした。

「ねぇ、古都ちゃんは、香里奈ちゃんの入部の件について、どう思っているの?」

 私はまるで恐いモノを目の前で見ているかのような気持ちで、恐る恐る聞いてみた。

「アイツの入部なんて、私は絶対に認めない!! 最も言ってしまえば、UTube活動の停止よりも、このまま退学を選んだ方が面白いかな」

「そっ、そんな……」

 古都ちゃんは香里奈ちゃんを嫌っている為、入部を認めないと言うのはなんとなく予想が出来た。でも、退学の方を選んだ方が嬉しいと思っているなんて……

「古都ちゃん、なんでそんな事言うのよ!!」

 私は、怒った口調で古都ちゃんに言った。

「私、アイツの事嫌いだし。それにアイツとは友達でもなんでもないから、退学をしようが別に何とも思わないし」

「酷いよ!! 酷すぎるよ!! いくらなんでも!!」

 まさか、古都ちゃんがここまで言うとは思っていなかった。いくら、嫌いだとしても、これは余りにも酷い意見だよ!!

 そう思った私は、昼間に香里奈ちゃんと話をしていた事を思い出し、その時の事を古都ちゃんに言う事にした。

「香里奈ちゃんが古都ちゃんに意地悪をやって来たのは、ホントはみんなと一緒に楽しそうにやっている古都ちゃんの事が羨ましかっただけだったんだよ!!」

「そんなワケあるかよ!!」

 古都ちゃんに、速攻で否定をされてしまった。なぜ、古都ちゃんは分かってくれないの…… 

 そう思った私は、次の作戦に移る事にした。その作戦とは、香里奈ちゃんがアイドル系UTuberとして頑張っている理由を、この場で言う事であった。

「香里奈ちゃんがUTube活動を止めてしまったら、何もかも意味がなくなってしまうじゃないの!!」

「どんな風にさ?」

「香里奈ちゃんは、好きなアイドル系UTuberがいて、そのアイドル系UTuberの様になりたくて日々頑張っているんだよ!!」

「頑張るぐらいなら、誰だってやっている事だろ?」

「キョウちゃん、そうじゃないよ!!」

 この作戦が、そう簡単には成功しそうにない。

「どんな理由でUTubeをやっているにせよ、やっている人全員に目指しているものや人、あの人の様になりたいという目標っていうは誰にでも絶対にあるのよ。物事を始めるきっかけなんてそんなものよ」

「みっ、美紗ちゃん……」

「それでも、やっている人全員が目標にしている人のようになれたり、その目標に到達する事なんて出来ないのよ。それは単に実力がなかっただけでなくても、その物事に時間を全て使う都合がなくなってしまったり、その物事以外の出来事で手が回らなくなってしまったりと、理由はいくらでもあるわ」

「そっ、そうかも知れないけど…… 今の香里奈ちゃんは実力がなかったりとか時間がなかったりとか、そんな事全然ないじゃない!!」

 古都ちゃんだけでなく、キョウちゃんも美紗ちゃんも香里奈ちゃんの入部の件に関しては関心を持っていなかった。それもそのはず、先週香里奈ちゃんが初めて部室に現れた時にいろんな意地悪をしたのだから、みんなに嫌われたって仕方がない。

 だからと言って、ここで諦めてしまうと、本当に香里奈ちゃんは終わってしまう!! 香里奈ちゃんがこんな形で終わらない為にも、私一人でも頑張らないと、そして、私が必死になって頑張っていると、きっとみんなの考えは変わってくれるはず。そう思い、私は、新たな決意を決めた。

「みんなが、香里奈ちゃんの入部の件を認めようとしないのなら、私一人で勧誘するのだから!!」

「優はよっぽど、香里奈の事が気になるんだな?」

「勧誘をやるのは勝手だけど、本当に来てくれるかしら?」

「分からないよ。でも、きっと今の香里奈ちゃんなら、絶対に入部をしてくれるよ!!」

 私はキョウちゃんと美紗ちゃんに、強い決意を言った。

「ちょっと待てよ!! 部長の判断もなしに勝手に話を進めるなよ!!」

そして、私の強い決意を聞いた古都ちゃんは反対をしてきた。

「まぁまぁ、落ち着きなよ古都。まだ入部をすると決まった訳じゃないんだからさ」

「そうよ。まだ四季神さんが完全に入部をすると決まったわけではないし、それに、四季神さんの返事にもよるわ」

 反対をして怒っている古都ちゃんに対し、キョウちゃんと美沙ちゃんが宥める様に言った。

「優がどんな思いで香里奈を助けようとしているかは知らないけど、とにかく様子を見てみようよ」

「誰が何を言おうが、私はアイツを映像制作部に入れるのは反対だからな!!」

 私が何とかして、古都ちゃんを説得させないと!! そう思った私には、早くも次の目標が出来上がってしまった。

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