第10話 おもちゃ売り場へお買いもの
学校のテスト期間が終わり、今日からは久しぶりの部活動。そんな久々の部活動は、映像制作部の皆と一緒に、学校の近くにある大型ショッピングモールのおもちゃ売り場で次の動画に使う小道具の買い物である。
数日前から部活以外でも女子の恰好をやる事になったキョウだが、数日経った今でも学校以外で女子の格好をするのは、まだまだ慣れていない。その為、妙に他の客達の視線を意識してしまう。
動画に映る分には大した抵抗はないものの、どうも実際に人に見られていると思うと、さすがに恥かしく思ってしまう。
でも、この映像制作部の4人を見ている他の客達は、どこにでもいる様な女子高生グループにしか思っていないんだろな。
そんな事を考えながら、キョウは映像制作部の皆と一緒に歩いていた。
そして、ショッピングモール内を歩く事数分、ついに目的地であるおもちゃ売り場に着いた。
「さぁ、着いたぞ!!」
「ところでさ、今日はどうしてショッピングモールになんか来たんだよ? いつもみたいにネットで買い物をやればよかっただろ?」
おもちゃ売り場の前に着いた時、古都がどうしていつもの様にネットで買い物をやらなかったのか、キョウはその理由を聞いてみた。
「たまにはこうやって外に出るのも良いかなっと思って」
「ホントにそれだけ?」
「ホントにそれだけだよ。それに、実際に実物を見て次の動画に使う道具を選びたいしな」
「確かに、動画で使う道具は買う前に実際に見ておいた方が良いね」
確かに古都のいう通り、ネットで実物を見ずに商品を買ってしまうと、その商品が実際に届いた時に買う前にイメージしていた商品と違っていたなんて事があったりでもしたら後が面倒だからな。そう考えていたのであると、古都も大したものだな。
「早く中に入ろうよ」
「そうね。早く買い物を済ませて学校に戻りたいわね」
「それじゃあ、中に入ろう!!」
こうして、古都を先頭に、キョウ達はおもちゃ売り場の中へと入って行った。
おもちゃ売り場の中に入るのは、凄く久しぶりだ。どれぐらい久しぶりかというと、中学の時にUTubeに動画を上げていた時以来だ。その時も、流行りそうなおもちゃや、動画で使うおもちゃを友達同士で買いに出かけていたな。そう、今みたいな感じに……
おもちゃ売り場の中を、昔の事をふと思い出しながら、キョウは歩いていた。
すると、突然背後から優の声が聞こえてきた。
「バキューン、バッバッバッバァン!!」
優は、おもちゃ売り場に売られているおもちゃの光線銃を手に取り、キョウ達の方に向けて撃っていたのであった。一体、何やっているんだよ……
「はいっ、みんな死亡」
「いきなり恐ろしい事言うなよ……」
向けていた光線銃を下ろした優はニコッとした様な表情で言った後、その様子を見ていた古都が少しばかり引く様な表情で優を見ていた。
「銃を向けられたら、すぐに避けないとダメだよ」
「そう言っても、これはおもちゃの銃だろ? おもちゃ如きにそんな事をやる必要はないと思うけどね」
「おもちゃだからと言って甘く見ていたらダメだよ!! もし、これが本物の銃だったらどうするの?」
「いやいや、それはないから」
左右がおもちゃに囲まれている場所の中で、優と古都が立ち止まりながら討論を始めた。
「でも、誰もが想像をやらない事って言うのは、絶対にない事とは限らないんだよ」
「何が言いたいんだよ?」
「つまりね、今私が持っているこの光線銃が、もしかしたら、実は本物の光線銃とすり替えられていたらって言いたいんだよ」
「流石にそれはないだろ!! だいたい、こんな形の銃がどこの世界にあるんだよ!!」
優のトンデモ発言を聞いた古都は、すかさずツッコミを入れた。
確かに古都のツッコミ通り、どこからどう見てもおもちゃにしか見えない銃と間違える人がどこにいるって言うんだ。第一、日本では普通、銃は持つ事が出来ないだろ?
そう心の中でツッコミを入れながら、優と古都の会話を聞いていた。
古都にツッコミを入れられた優は、反論の如く、更なるトンデモ論を唱え始めた。
「銃をおもちゃとすり替えるのは人間だけだと限らないでしょ」
「人間以外に誰がすり替えるんだよ? サルがすり替えたりするのか?」
「もしかしたら、夜中にだれもいないおもちゃ売り場の中で、宇宙人がこっそりと忍び込んで未知なる技術で作られた本物の光線銃と、おもちゃの光線銃をすり替えた可能性だってあるかも知れないじゃない!!」
「完全にありえない話だよ!!」
優が話し始めた反論が、まさかの展開であった。
古都は優の言っている事に関しては完全に否定をしているけど、もしかしたら、もしかしたらという場合があるかも知れない!!
実際に、宇宙人の目撃情報は現に世界中で報告がされているし、何よりも既に宇宙人が既に社会に紛れ込んで生活をしているという情報もあるくらいだし、優の言っている事は完全に嘘とは言えないのでは!?
なんて、勝手な妄想は置いといて、そろそろ話を止めて先に行かないか?
そう思っていた為、古都と優に先に行く様に声をかけようとした時、美沙が優のいる場所まで歩いて行った。
「はいっ、くだらない話はこの辺で止めにして、そろそろ先に行くわよ」
「あぁっ!!」
美沙は、優が持っていたおもちゃの光線銃を取り上げた。
「全く、さっきから話を聞いていたけど、宇宙人が夜中に忍び込んでおもちゃの銃と取り換える事に、なんのメリットがあるていうの?」
「それは、その…… 宇宙人が地球のおもちゃを調べる為だとか……」
「おもちゃを調べるぐらいだったら、普通、本物の銃とすり替えたりはしないわよ。ほらっ、先に行くわよ」
「はぁ~い」
そう言いながら美沙は、優から取り上げたおもちゃの光線銃を、元のあった場所に直した。
それにしても、美沙は宇宙人がいるいないに関しては特に触れてはいなかったな…… もしかしたら美沙は、宇宙人の存在を信じているのか?
そんな事はさておき、早く目的の場所に向かわないと。
そして、再びおもちゃ売り場の中を歩いていた時、後ろの方から優と古都が話をしているのが耳に入って来た。
「ねぇねぇ、さっきのネタは動画に使えるかな?」
「あんなネタ、使える訳ないよ」
「えぇ~ どうしてだよ。宇宙人が夜中にこっそりとおもちゃ売り場に忍び込んで本物の銃とおもちゃの銃を入れ替えるショートドラマを作ったら、面白いと思うよ」
「一体、どの層を狙ったネタなんだよ。そんなネタが受けるとは思わないんだけど」
「やってみる前から受けないとか決めていたらダメだよ!! もしかしたら、意外と受けるかもしれないじゃない」
「そうかな? だいたい、もし本当にアレを動画にやるとしたら、おもちゃ屋を借りきっての撮影になるから、許可をとるのは凄く大変だと思うよ。今の私達の知名度だと、許可は取れないと思うね」
「そっかぁ~ じゃあ、まだまだだね」
「そう言う事だね」
さっきのは、優なりに考えていた動画のネタなのか? 見た目によらず、優も意外な事を考えているんだな。
まぁ、確かに古都の言う通り、チャンネル登録数が2500前後のフェイカーズだと、店を借りきっての撮影は不可能な位に難しいね。
そんな感じで、どうでも良い話をやっていると、ついに目的のおもちゃが売られている場所に着いた。
この場所では、動物のフィギュアだけでなく、鳥類・爬虫類・昆虫・魚類・恐竜など、様々な生き物のフィギュアが売られているコーナーである。
ここに売られているフィギュアを購入する目的は、立体型のカードゲームで遊ぶ動画の撮影に使う為であり、このカードゲームは古都が考えたオリジナルのカードゲームである。
ルールは1対1の対戦型で、各プレイヤーはそれぞれフィールドに6体の動物をセットする。
セットされた動物には、それぞれHPと攻撃力・防御力が書かれたカードだけを12枚の特殊デッキからシャッフルして決める。そして、HPと攻撃力・防御力が動物にセットされればゲームはスタートする。
ゲームは、先攻後攻のターン制であり、攻撃できる動物はサイコロを振ったマス目の数の動物しか攻撃が出来ない。攻撃を行う動物はプレイヤーが好きに決める事が可能であり、攻撃を出来る動物の数の枚数だけ、60枚のデッキからカードを引く事が出来る。
このデッキと言うのは、魔法・通常攻撃・特殊魔法などが書かれたカードの束である。そして、先に相手の動物を全て倒したプレイヤーが勝利となる。
とまぁ、以上が古都の考えたオリジナル立体型カードゲームである。
古都は、自信満々にオリジナルカードゲームを考え、この動画が大当たりをすればゲーム会社に連絡を入れ、このオリジナルのカードゲームを実際に商品化をさせたいとか言っていたな。実際に当たるかは、これからの動画次第だな……
そして、古都がそんな数あるフィギュアの中から選んだのは、哺乳類・鳥類・昆虫・恐竜のフィギュア、それぞれ6種類、計24体のフィギュアを選んだ。
「このフィギュアを買うけど、これで良いかな?」
「私は別にいいよ!!」
「別に、好きなのを選んでも良いと思うけど、虫は気持ち悪いと思わないの?」
「虫だって、よく見たら可愛いじゃない」
「そうだよ、気持ち悪いと思うから気持ち悪く見えて来るんだよ」
「でっ、でも…… 明らかに気持ち悪い生き物じゃないの」
「美沙はそう思うのか…… じゃあ、これで決まりだな」
「なんで、そうなるの!!」
美沙は虫が苦手のようだが、それを面白がってか、古都が勝手に購入を決めてしまった。
「あと、確認をしておくが、キョウもこれでいいよね?」
「あぁ、別になんでもいいよ」
これで、次の動画に出て来る動物のフィギュアは決まりだな。
購入をするフィギュアを決めた後、古都はそれらのフィギュアを買い物カゴに入れた。
そして、あとはレジに向かうだけでなのだが、レジに向かうまでの道中でまたしても優が興味を示すおもちゃが売られているコーナーを通る事になった。
そのコーナーは犬や猫の耳のカチューシャが売られているコーナーであるのだが、予想通り、優はそのコーナーで売られている犬耳のしたカチューシャを手に取った。
「ねぇねぇ、古都ちゃん、これを付けてみてよ!!」
「わぁっ!! 何するんだよ」
案の定、優は古都の頭に犬耳のカチューシャを付けたのである。
「これで古都ちゃんも、犬娘だよ」
「なにが犬娘だよ!! いいよこんなの」
古都は犬耳のカチューシャを外そうとしているが、優が両手で頭を押さえている為、外そうにも外せない状態であった。
こんな事をしていると、また美沙に怒られるかも。そう思っていた矢先、美沙が犬耳のカチューシャを付けた事をジロジロと見始めた。いよいよ怒られるか!?
「なに見てんだよ!! 見ているなら助けろよ!!」
「犬耳を付けると、可愛さが増すわね」
「でしょう。やっぱり、美沙ちゃんは分かる人だよ」
「全く!! 2人揃って!! 私が小さいからっていい気になって!!」
以外にも美沙は怒る事はなかった。逆に怒るどころか、優と一緒になって犬耳のカチューシャを付けて可愛さが増した古都に見とれていた。
その後も、優と美沙は、古都が迷惑がっている中、犬の尻尾や猫耳のカチューシャを付けては楽しんでいた。
全く、遊んでばかりいないで、早くレジに行って買い物を終わらせてくれないかな。そう思いながら、退屈そうに古都とおもちゃ売り場を見ていたキョウは、ふと、気になる売り場があったので、そちらの方に目が行ってしまった。
その売り場とは、今話題の最新型のVRゲームであった。まだやった事はないけど、動画で見た限りでは一度はやってみたいと思った。
そして、都合よく今見ているその売り場には、実際に最新のVRゲームが体験できるコーナーが設置されていた為、退屈しのぎにそのコーナーに行ってみようと思った。
「ちょっと、VRゲームの体験プレイをやって来るね」
猫耳や犬耳を付けられて迷惑がっている古都に向かって一言行った後、キョウは最新のVRゲームを実際にやってみようと思い、最新ゲームの体験コーナーに行く事にした。
まっ、少し遊んでいれば、古都達も買い物を終わらせるだろ。
そう軽い気持ちで、キョウはVRゴーグルを装着し、ゲームをプレイし始めた。
そのVRゲームは、戦闘機のシューティングゲームなのだが、これが無性にハマってしまう。通常のゲームと異なりVRのゲームである為、まるで実際にその場に居る様な臨場感が味わえる。難易度も難しすぎず簡単すぎずの程よいレベルなので、上手い具合に人の気を引かせる事が出来るゲームって凄い……
そう思っていた時、後ろから誰かに肩を叩かれたような気がしたので、VRゴーグルを外し、後ろを振り向いた。すると、後ろには、既に買い物を済ませた古都と一緒に、美沙と優がいた。
「全く、何遊んでんだよ。早く行くぞ!!」
「ゲームに夢中になるなんて、夏川さんもまだまだ子供ね」
「ゲームに夢中になるのは良いけど、みんながいる事は忘れたらダメだよ」
ゲームで遊んでいるのを見られたキョウは、古都と美沙と優から、色々と言われてしまった。
本当に夢中になりすぎているのはどっちだよ!! 心の中でそう思いつつも口からはそんな事が言えないキョウは、別の言葉を言う事にした。
「確かに夢中になりすぎるのは良くないね。じゃあ、行こうか」
そして、キョウはVRゴーグルを体験コーナーの棚に直した後、古都達と一緒におもちゃ売り場から出た。
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