●22日目 04 昼『人としての器の違い』

 新たに生徒会長の椅子に座った高阪は早急に作戦を立案し、生徒会室は略奪者との戦いに備えて慌ただしくなる。

 そんな中、背後にピタリと立っていた光沢を見て、


「光沢くんは生徒会長さんのそばにいなくて良いの?」

「狭い部屋は苦手ですからね。特にあなたのいうことに異論を述べるつもりはないのでご安心下さい」


 そうひょうひょうと答えながらいつもの営業スマイルを維持している。

 高阪はふうんと、


「でも何か考えがあるみたいね」

「いえそれほどのものではありませんよ。ただ適材適所という言葉を心の中でかみしめているだけです」

「それって私がこの地位にいることが間違っているということ?」

「ちょっと違いますね。身の丈にあった、という言葉の方が合うでしょうか。正直のところ、僕にはあなたが彼女のように振る舞えるとは思えないのですよ」


 正直に答える光沢。一方の高阪もいつもの笑みを維持しつつ、


「私が劣っているっていいたいのね」

「運動・勉学・容姿……どれをとってもあなたの圧勝でしょう。世界中探してもあなたほどの逸材は早々見つからないのではないのでしょうか。しかし、生徒会長としての彼女よりも圧倒的に劣っている部分があるんですよ」

「それは、なに?」


 ここで光沢は胡散臭い笑みを浮かべると、


「生徒会長の育ちの複雑さと性格の悪さ、ついでに治安担当の八幡さんのような極端な正義感の強さですよ。先程のケンカ騒ぎであなたはそういった存在になろうとしたようですが……」


 高阪は何も答えない。


「無理だったみたいですね」

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