シグナル

「星の瞬きじゃない?」

工藤亜理沙が呑気な声が答える。

「確か緑の点滅信号は緊急事態発生のシグナルのはずだよ。きっちり点滅を三回繰り返しているよ。それに緑色に光る星は少ないと思う」

「確かに点滅していますね。緊急信号です!。艦首カメラ最大望遠で拡大します。中央ディスプレイに表示します」

「へっ?緑色の光は安全じゃないの?」

「確か、人間の目には星の光は白か赤か青しか認識できなくて、中間色の緑は知覚できないと言う経験則だったっけ」

少し緊張した表情と声で紗枝さんが言う。

「工藤さん、第一種戦闘配備と相沢君のスタンバイを命令してださい。綾音さん、遭難した船と光信号と非常用通信で連絡がとれますか?」

「ビショップ先生、なぜ第一種戦闘配備が必要なんですか?。ちゃっちゃと接舷して救助すればいいだけはありませんか?」

「これは助言になりますが、第一種戦闘配備は同時に緊急事態を表します。接舷する危険を冒して船外作業要員を乗り込ませるのは、緊急事態以外許されていません。だから緊急事態宣言でもある第一種戦闘配備が必要なのです。予習をサボりましたね」

「知っています!みんな良い?第一種戦闘配備よ。ぬかるんじゃないわよ」

「通信内容きました。ディスプレイに出します」

「OTO-28、琴音。相転移エンジン緊急停止中。安全のために全電力放出。航行不能。救助されたし。乗員は一名及び人型アンドロイド一名」

「琴音ちゃん?大丈夫?」

緑色の点滅が続く。

その光を誰よりも早くとらえた綾音さんが話し出す。

「点滅信号を解読します。あやねーさま。落ち着いて。点滅用の非常用電源がもったいないです。あやねーさまが来るのを信じています。戦闘モード中なのでエアロックの気密扉がコード入力が必要です。艦長の救助を要請します。艦長は脱出を拒んでいます。助けてください。終。琴音ちゃん。琴音ちゃん」

光が点滅する事は無かった。

「船が琴音と言う事は艦長は岩崎瑞樹ね。いい気味だわ。私より少し顔立ちが整っていて、スタイルが少し良くて、年だけとっている。順平船外活動よ。岩崎瑞樹を連れ出してきなさい」

「順平さん、岩崎さんと琴音ちゃんをよろしくお願いします。きっと琴音ちゃんは船のメインコンピューターにある思い出を失いたくないのだと思います。そして岩崎さんは琴音ちゃんを含めた人員が退去しない限り脱出をしないのだと思います。でもそのがハードディスクドライブあるのならきっと納得して脱出してくれると思います」

僕は初めて何かすがるような声を悲しそうな目を見た。正直なんの支援も受けれずに救助に行くのは。ためらわれる。だけど綾音さんと綾音さんの妹を救えるのは僕しかいない。僕はハードディスクを手に取ると立ち上がった。

僕は綾音さん頭に手を置いた。声が震えない様に注意しながら言う。

「岩崎さんと琴音さんは助けて来るよ。任せて」

綾音さんは恥ずかしそうに上目づかいで僕を見る。

「はい。必要な情報は宇宙服に全て転相しますね。ディスプレイで確認してください。順平さんはヒト型インターフェイスをいじめすぎです」

綾音さんはほほを染めたままそう言うとうつむいた。

「いいなぁ」

「船をぎりぎりまで近づくけどサポートできないだから気をつけてね」

光帆さんのつぶやきと律子さんの応援が続く。

そんな声をよそに工藤亜理沙のヒステリックな声が響いた。

「いちゃいちゃしてないで、早く岩崎瑞樹をつれてきなさい」

「行ってくるよ」

僕はそう言うとブリッジの気密扉を開けて船外作業員室に向かう。

誰も悲しませない。無事に帰る。そう心に誓った。

                           続く  

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