僕らは神にでもなったつもりかい






羽撃はばたけない水鳥

傷付いた霧雨が啼いていた


どちらかというと そこにいたのは

僕らが羽撃けなくした 鳥だったけど


湖には、睡蓮が咲き荒れているように見えた


その羽を毟って作られた

宙に彩を咲かす純白のシャトル


無機質な放物線


やあ鳥さん

あなたはそうやって飛ぶのを夢見ていたのかい


そんなはずないよな

ほんとうは その翼で自由気ままに飛びたかったよな




白い艶やかな そう

白く整った羽の束 贈り物のような

それは打ち付けられてさ でも地面に堕ちることも許されちゃいない


封鎖された公園で 踊る亡霊が笑うよ


幼子はなにも知らずに ずっと無邪気なものだ


やあ 君はそれが 命の加工物だって知ってるかい


そんなはずないよな

知らないまま は 無垢で残酷だ


そういう福音で世界は満ちた




喰いもんにするって よく云うじゃん

僕は喰いものにされたよ あなたも誰かに喰われたろう?

無論 喰ってもいるだろう

でも命はそこかしこで散る 文字通り 喰いはしなくとも


全部が全部を、喰う、でまとめるのは

いささか乱暴にもおもうのさ

この無情な世の中で




死んでないだけましって僕を罵るかい

そっか 哀しいけどま、御好きにどうぞ




ねぇ 僕らはさ 神にでもなったつもりかい


そんなはずはないよな







重なった ひとりぶんの手の平

紅く浮き立った血筋

静かに蠢いた明日


首を掻きむしる

そうして架けられた虹で 世界は紡がれる


白い艶やかな そう

白く整った肌のきめ 贈り物のような


美しさの終わり


閉鎖された箱庭で 燃える人形が弾けた

人々はなにも知らずに 今日も呑気なものだ


僕らはいつか 天寿で動かなくなるとおもいたいのに

知らないまま は 無垢で愚かだ


そういう炎で煉獄は満ちる




明日も朝が来ますようにと

結んだ祈りに光が差して


零れた温かさの影で

もがく羽を付け替える日々だ


そうまでして 死ぬまで飛んでいたいのかい




やあ 僕らはさ


羽撃けない水鳥なのかな




それとも 僕らはさ もう神にでもなったつもりかい








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