コズミック・ベンチ



ねじり切れた指先の絆 齧り過ぎた鼻先の吐息

噛み付いた僕等の未来に 訪れる幸せはもう多分

どこにもないだろう もうないでしょう もう


鏡写しの世界で すれ違う光が揺蕩たゆたう 波間に彷徨う

生き写しの僕等は一生同じにはなれずに

でも前世から ずっと一心同体だった


針が廻り 人生が未来へと進む

でもそれはあなたにとって 壮大な過去でしょう とうに走り去った

僕の目が廻り 次元がひっくり返って

面白みのない現在とはバイバイだ 僕はもう一度

過去を辿るよ それは僕にとって とうに過ぎ去った


僕はあなたを写し あなたは僕を写して

さっきまで僕が歩んでいた世界を 今はあなたが歩んでいるんだね


あゝ このまま僕達の想いが

遥か天の彼方まで 届いたらいいのにな

伸ばした手を通せんぼする時の回廊は

厳格に行き止まりの牌楼は

封鎖した見えないあしたを背に置いて ケタケタケタと僕等を嗤っている




僕達が手を取り砕いた反射板は 一縷の架け橋を放ち

光を投げかけて 永遠とわに霧散したみたいだね

僕もあなたも 結局牢獄の裏にいるけれど


僕が赤い毛糸の毛糸玉なら

あなたは全く同じ絡まり方をした 奇跡のような翠の毛糸玉でしょう

でも僕が弱く 不甲斐のない者ならば

同じだけ弱いのに泣き言をいわない それがあなたという人でした

最期おわりを受容し 爽やかにはにかめる もう生き別れた


僕にあなたを移し あなたに僕を移して

さっきまでここに流れていた魂を 今はあそこに流しているんだね


あゝ このまま僕達の想いが

遥か天の彼方まで 響いたらいいのにな

宇宙の開闢と再生を繰り返す運命は

終焉に立ち会えない悲しき定めは

無限の数珠繋ぎを橋渡す度に 片割れた僕等を一つの光にして




あゝ このまま僕達の想いが

遥か天の彼方まで 続いたらいいのにな

思いがけず結ばれた二つの人生は

顔さえ知らなかった二人の心臓は

しかれど森羅万象のまれ出づ瞬間より 一つであることが決まっていたんだ


繰り返すことで あなたになり 僕になり

跳ね返ることで あなたになり 僕になり

繰り返すことで あなたになり 僕になり

跳ね返ることで あなたになり 僕になり




僕はあなたと一つになったけれど

だからあなたと並んで生きることはもうできない

あなたの心臓が脈打つ度 僕の心臓は想い出に疼き

あなたが差し出した手を 僕が握り返すことはない


繰り返すことで あなたになり 僕になり

跳ね返ることで あなたになり 僕になり

繰り返すことで あなたになり 僕になり

跳ね返ることで あなたになり 僕になり




あゝ このまま僕達の想いが


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