反抗期なんて僕にはなかったとずっと思っていたんだ



かつて僕を攫った殺人鬼は言った。ここが君の楽園だ。

かつて僕から搾取した詐欺師は言った。これがお前の人生だ。

かつて僕を貶めた同級生は言った。だからお前は嫌いなんだよ。

かつて僕を産み落とした母は言った。お帰りなさい。

どこに僕の居場所があるかは明白なのに、僕には素直になれない時期があった。

ここに僕の居場所があるのだと、何もない空間に心の秘密基地を打ち立てた。

現実を見て、絶望して、希望を抱いて、光に包まれて、谷底に転げて、それでもまだ幸せと不幸せの天と沼は僕の知らない遠く遠くに存在していて、僕は眼前に浮かべた岩の塊の小さな島を壊しては、土塊つちくれを捏ね直し、握り、固め、浮かべ、気に入らず壊し、を繰り返し、いつしか時が過ぎて、空っぽになった言葉に染みたのは、

やっぱりあなたのお帰りなさいだった。

ただいま。僕はいま久しぶりに、あなたの僕を取り戻せた気がします。

ありがとう。僕はようやく天邪鬼を卒業して、僕のための僕で在れそうです。

ありがとう。


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