■おわりに

やや長い、あとがき。ネタバレあり。

 以下、重大なネタバレを含みます。ご了承下さい。

 本編に対する作者の視点です。実際に書かれている内容との齟齬もあります。

 ほぼ個人的な感想です。読み飛ばしていただいても問題ありません。

 では、ごゆるりと。




 当作品の発端はどこにあるかと遡れば、雨天うてんあかつき蒼凰そうおう蓮華れんかの出逢いになるのだろう。時系列としては2039年付近の話になる。

 後述するとは思うが、この時点では一切、時系列という発想はなかった。この時点で思いついていれば、作中における時系列の齟齬はもっと小さかっただろうと後悔もしている。けれどまあ、最初の時点では短く完結する作品だったので、仕方ないかも――と、言い訳じみた思いも。

 ともかく最初は、武術家たちの話だった。いくつかの試行錯誤をしつつ、完成したのが、五木いつきの領域における蒼狐そうこ市の事件だ。

 この時点では草去更そうこしの名称が先だったように思う。大きな流れ自体は変わらないものの、現在の文章では大きく加筆、修正がされているのは当然として、これを書いている時点では、武術家と妖魔、という設定しかなかった。

 しかし、蒼凰蓮華が〝可能性を保持する〟という能力を得ている以上、魔法や魔術の存在を設定しなくてはならなかった。この時はまだ、可能性を物凄く考えるだけの人物だったのだが、それではあまりにも人間離れしている。

 武術があるなら魔術もある。魔術と魔法は似ている――そういう思想はあった。

 あくまでも現代寄りの設定を保つのなら、異能の部分は隠すべきだと考えるものの、では武術はどうなのだと考えた時、個人的に武術は殺害技術に相当するため、それもまた表に出ないものではと。この時点ではごくごく簡単に、裏と表を作ることにした。

 魔術と魔法は別物だ――と、定義したかったのは性分だろう。術ならば技術であり、法ならば法則だと設定する。それを前提として、あれこれ考えてみたものの、やはり試行錯誤の結果で、ようやく落ち着いたのが2045年から始まる、鷺城鷺花の成長と共にある魔術談義であって、実はこれ、かなりあとのことになる。


 鷺ノ宮事件を構想したのは、そのあとになってのことで、ほとんど思いつきだった。何しろ名前だけ「鷺ノ宮事件」と題をつけたものの、一家惨殺事件であることを決めた先が、何もなかった。

 この頃、武術家が一つのまとまりならばと、十一紳宮しんぐうなんて家名を作り、当時はただの資産家として設定していた。その一つが鷺ノ宮――なのだが。

 大きな混乱が起きて、蓮華が解決するなんてことを考えてみたものの、そこから先の発想がなく、随分と苦労したのを覚えている。

 それに加えて、惨殺事件が起きるとして、その理由は? 生き残った一人を隠すためと考えたものの、だったら、どうして一人しか生き残れなかったのかが不明になる。ともかく大前提、一人生き残るのならば?

 このあたりで、十一紳宮を魔術師の家名として設定した。事件としての表裏をつけようと考えたからだ。つまり、表向きはよくわからん事件だけれども、裏側として見れば理屈がつけられる、不思議でもなんでもないものだと。

 ここでようやく、魔法の設定が追いついた。つまり法式とは、世界法則そのものであり、抗うことができず、術式とはその法則を使って発生するものでしかない。であるのならば鷺ノ宮とは、世界法則に関わる家名で、何かしらの原因で法則による処罰が下った――と。


 その結果と錯誤の結果が、2041年の鷺ノ宮事件だ。


 しかし、大きな事件であると考えた際に、どうすれば大きくなるのかを考えた。そこから、終わってしまった事件の影響、なんてことを考えはじめ、どこまでが影響であり、そして、影響を広げるにはどうしようかと考えた先に、狩人という職業が設定として生まれた。

 表と裏があるのならば、その橋渡し的な役割である。

 この時点でベルたち五人の構想ができた。狩人育成施設、専門を持つ狩人とは違い、専門を持たないスペシャリスト。施設の内容はまだ頭になかったが、いずれにせよ何かしらの代償を負っていることは考えていた。それは、本編で語られている通りだ。

 一度鷺ノ宮事件から離れ、狩人の仕事としての物語を書き始めたが、その一切は掲載していない。大半が未完であるし、更に言えば現在の物語とはかけ離れている。ハードボイルド的なと言えば良いのか、ともかく銃とナイフを使って諜報員のような仕事をする、という大雑把なもので、今ならば軍がやるようなことをやったりしていたが、お蔵入りになった最大の理由は、そのそも、想定する世界観の中で、そんな仕事があるのかという疑問があり――そして、あのベルたちが、その程度の仕事で活躍するかと疑問視したためだ。

 しかし、狩人という括りでは、まだベルの弟子とは決めていなかったが、狩人として刹那小夜の物語は書いていた。といってもやはり、この時点では関係性はほとんどなかったけれど。


 本編にはまだ書かれていないが、鷺ノ宮事件において当初、考えていたのは、神鳳かみとり雪人ゆきとと鷺ノ宮散花さんか、久我山桔梗ききょう凪ノ宮なぎのみや風華ふうか、彼らの物語。

 簡単には雪人は散花の護衛として傍につき、散花は残りの命を好きに使うために人の傍を選んだ。桔梗は好き勝手旅をしている母親から離れ、凪ノ宮家の世話になり、風華とは幼馴染。ただ、己の不安定さを自覚し、原初の書を探していた――となる。


 ここでようやく、魔術と魔法の設定に乗り出し、書いたのがハジマリの五人、彼らの話だ。この物語において冒頭の部分にも当たるが、実際には鷺ノ宮事件のひな型とも言うべき、下書きのような物語も並行して書いていたように思う。

 魔法師の三名、魔術師のエミリオン、そして名無しの少女。

 これに関しても随分と書き直したので、最初の頃の面影はあまりない。といっても、人物そのものが変化したというよりも、世界観が固まって現在の本編に順応した、と表現するべきかもしれない。

 本編でもあまり語られてはいないが、名無しの少女に関しては、多くの布石を残している。躑躅つつじ紅音あかねがいろいろと、好き勝手言っているのは、2059年の最後でわかるとは思う。ただ書き始めた当初としては、蒼凰蓮華と似たような人物ではあった。

 先を見通すというか、何でも知っている、というか。

 ここで補完しておくのならば、二人は見方が同じだったかもしれないけれど、現実の作り方は違った。蓮華は未来を見通して可能性を保持し、そのいずれかを選択して足を進めていたが、名無しの少女は、いわゆる案内板ガイドラインを立てて、先へ行く道にヒントや目印を作っておいたわけだ。わけというか、そういう設定になっている。


 東京事変。

 先か後かと言えば、後だ。鷺ノ宮事件、ないし五木の事件を書いている時点では、どうしても中心となるのが野雨のざめ市と呼ばれる愛知県になってしまっているため、東京都心の存在を曖昧にしたかった。結果的に、ないものとする設定を思いつくものの、ではどうして滅んだのかまでには、東京事変を書くまで想定していなかった。

 つまり、ここにきて、魔術師、魔法師、そこに妖魔の存在が含まれた。

 いわば武術家の〝敵〟として創り上げたものが、人間の敵に変わった。そしてようやく、設定を積み重ねた〝世界〟こそが、抗いがたい最大の敵であり、どうしようもなく強固なものであると、そんな設定が生まれたのである。


 法則の一端を担う魔法師が、どうして存在するのか。

 世界は何をもって、その結果を生むのか。


 ああ、いつか滅びるんだろう。滅びたのならば、また新しく生まれるのだろうか――と、この時点ではぼんやりとだが、考えていた。

 であればこそ。

 東京事変であり、――鷺ノ宮事件が必要になった。


 表側では、鷺ノ宮が握っていた利権などによって大きく報道され、慌てながらも、こう言ってはなんだが庶民にはあまり関係がないのに――裏側では、世界の理に触れることになると、ようやく私はこの時点で、鷺ノ宮事件に着手した。

 だからこそ、事件後、年数が経過したあとでも、登場人物たちがこの事件を気にするようになるわけだ。これから先の崩壊、以前にあった抑止、それらを繋げて考える者も出てくる。


 このあたりだろう、時系列を意識しはじめたのは。


 書き直しを繰り返しながらも、人には過去があって現在がある、なんて当たり前のことを意識した。たとえばハジマリの五人にしたところで、五人でいることに理由はあるけれど、ならば、どうして五人が揃ったのか。どういう状況で、どういう流れで、五人でいることを諾としたのか――など。

 それは鷺ノ宮事件の前後、ないし、武術家たちも同様だろう。

 おそらく意識できたのは、鷺ノ宮事件後においての作品に関して、掲載の時系列でいうところの2058年付近を(一気に飛ぶかたちになるが)書き始めたからだ。ぼんやりとしか思い出せないが、鷹丘少止あゆむ闇ノ宮やみのみやの関連で動いている話だったはず。

 時系列の中心が鷺ノ宮事件であったため、その前後を考える必要があった。二〇四一年なので、書いているこちらとしてはかなり先の未来だと思っていたけれど、東京事変やその発端、彼らの始まりに関して遡ってみれば、二〇〇八年が開始となっている。アニメの登場人物の年齢を越えた感覚というか、未来の話だったのがいつの間にか現在時間での年代よりも昔になってしまったという……これは弊害なのだろうか。

 いや、先述の通り、時系列を考えていなかった私の落ち度だろう。


 さておき、この時点では、まだ朝霧芽衣や鷺城鷺花などは誕生していない。私の中にキャラとして成立すらしていなかったのが実情だ。

 ではいつだったろうかと考えるに、鷺ノ宮事件がほぼ掲載している内容に限りなく近いくらいには、書けていた頃だろう。

 ここから書き始めたのが、実は2059年に該当する、世界崩壊に向かう話。当時は単純に、若い世代――雨天暁の子供たちの世代だ――が、妖魔との戦場を乗り越えて、崩壊を迎えるという話だった。しかし、登場人物は五人程度で、VV-iP学園の防衛線をするような内容だ。


 余談だが、VV-iP学園の名称はいろいろと変わっている。ただ、当時から世界崩壊の安全地帯――というか、学園は残そうとは思っていた。その後に関わるかどうかは考えていなかったが、ともかく、防衛拠点としてわかりやすいと考えていたからだ。そのため、消失点という意味で(どういう意味だ?)ヴァニシングポイント、そこからVV-iPと適当につけたのが、今も残っている。読み方はブイブイアイピー? ダブルアイピー? ブイヴィップ? どうもしっくりこない。現在も悩んでいる(おい)。


 60Pくらいを目安にして書いたものの、よくよく考えてみれば、五人が崩壊を乗り越え、生き残ったところで、その先がなくなった。ないとは言い過ぎかもしれないが、あまりにも現実味がない。これは登場人物が少なすぎるのも一つの要因だろうし、一旦は放置して別の話を書こうと、そこで着手したのが朝霧芽衣の話である。


 当初はただの軍人であった。しかし逆に考えてみると、このお陰で軍部関連の設定を深めようと思ったので、無駄ではなかった。いや、無駄に書いたという覚えはあまりないけれど。

 無名の狙撃手でありながら、狙撃だけに拘らない個人としての軍人――という在り方だったが、どちらかといえばテンプレート的な軍人だったように思う。この時点でもう彼女の属している忠犬という部隊は存在していて、部隊の同僚たちと動くような話だった。

 しかし――そこで、鷺城鷺花という魔術師が、唐突に出現した。芽衣の友人であり、やや乱暴でかつ、実力伯仲の魔術師であった。隠していた何か、失われていた実力を、表面化させるためのキャラだったのだが、この時点ではまさか、掲載している内容のようになるだなんて、思いつきもしなかっただろう。


 このくらいを書いてみると、登場人物がそれなりに多くなる。そこで私は、時系列ではなく、いわゆる親族などの交友関係を一度整理することにした。それを行うことで、前後の繋がりも見えてくるし、関係が作られる際にできた第三の人物なども表面化するからだ。

 どうせならエスパーも作ってやれ、なんて思って、このくらいで前崎鬼灯ほおずきの話を書いたはずだ。雨天暁、五木いつきしのぶ蒼凰そうおう蓮華れんかなどの子供たちを一通り揃わせて、何をしているのかというのを整理したかった気持ちもある。


 ――ああ、そしてようやく、ここで、魔術師、鷺城鷺花の幼少期を書き始めた。


 魔術の設定を自分なりに固定したかったのもある。この時点になると、だいぶ世界観が確定してきて、新しい設定を加えても、ある程度の整合性を保てるようになった。既に書いた設定を、上手く誘導して変更する技術が上がったとも言える。

 ここからは、早くはなかったにせよ、手直しで書き直すことは減った。

 2058年、朝霧芽衣の話から、弟子ではないにせよ育てようとした田宮正和、浅間ららたちの話へと続く。このあたりは時系列通りの発展にはなるが、実はまだ単発の話を書いていただけで、全てを一つの時系列にすることは考えておらず、未だにその部分での齟齬がある。いつか直したい。


 人数が揃った、さあ崩壊の話を書こう――となったのだが。

 だが。

 そのために必要だったのが、いわゆる掲載されている最初、つまり、ハジマリの五人に関しての話だ。完成とは言わずとも、それに限りなく近いものにしたい。したいというか、実際には2059年の話を書き始めた途中で、手直しを含めて新しく書き直していた。

 まずは崩壊発生から一時間、矢面に立つ若い世代の動きを。

 今でも覚えているが、この一時間を書き終えてからはだいぶ時間が空いた。その後の展開は頭にあったが、それ以上に2058年の話をもっと深めようと思ったのだ。思ったというか、そういう勢いになった。まどかつみれの話を書き始めたのもこのあたりで、この一時間で顔を見せていない(はずだけど)のも実は、書いてる時点ではまだ、円つみれという人物がいなかったからだ。

 掲載順に読んでいただけるとわかるとは思うが、この崩壊に際した防衛戦において、円つみれは半ば軍師として重要な役割を担っている。これも後付けだった。つみれの話を書いて行くにしたがって、彼女の魔術であるところの乱針の矢印デッドコンパスが、どういう術式なんだろうと、ずっと考えながら書いていて、未来をシミュレートする術式だと決まったのも、かなり後だ。あまり夢オチみたいなのはやりたくなかったが、まあ仕方ないと思ったのを覚えている。思いついた時点で、崩壊時には必要だと思ったからだ。


 そこからは世界崩壊の話を書く――つもりが。

 書き出したのはなんと、崩壊後の世界だった。掲載された時系列、空歴381年の頃の話である。


 今更こう言っても、たぶんわかるとは思うけれど、私はふいに思いついた話などを、その場の勢いで書き始めることが多い。いくつかの設定を書き出し(人物名や大まかな流れ)それを現在の世界設定に組み込みながら、シナリオを作っていくわけだ。

 掲載の最中にも、差し込むようにして幾度か、間に何かしらの話を掲載しているのも、そういう流れであるし、一応は補完しているカタチだが、ほぼ勢いである。もっとも、書かなくてはと思っていた部分であるのも確かなので、勢いだけ、ではないが。

 いずれにせよ、この私の気まぐれを代表するのが、空歴417年に掲載した、湯浅あかの物語である。


 未来への転移における、転移先を壊すだけの話。


 掲載順に読んでいると、この部分だけがやや浮く。まだ書かれてはいないし、構想しかないが、彼らが物語を続けて、この世界で暮らしていく話も実はある。現状では、あまりかかわりを持たない単発仕様の話だ。

 今でも覚えているが、これは私が見た夢が設定になっている。

 といっても、そう複雑なものではない。なんだか、九十年代くらいにありがちな、冷たい石と金属みたいな装置があって、それが転移装置だと言った男が先に消え、今度は私が入って転移する。で、どこか学校のトイレのような個室に逃げ込み、私は転移が成功したのかと安堵しながら、さてどうすると、考えたところで目が覚めた。

 私は夢の内容をよく覚えている方であり、このことをメモした結果として、彼らが生まれ、あんな物語に発展したのである。つまり、ほぼ思いつきで気まぐれに筆を走らせた結果だ。あんまりよくないよなー、とは思いつつも、私の基本は、そういうところかもしれない。


 さておき、書き始めたリウラクタ、ミヤコの話。

 これは掲載されているものと、それほど大きくは変化がない。ただ当初はもっと鷺城鷺花が表に顔を見せていたが、しかし、もう表に出る必要もないだろう――そう考え、束縛を考えた。つまり、崩壊を生き抜き、更には肉体の老化が極端に遅いという代償として、世界への干渉を極力避ける、といったものだ。


 二人の話を終えてから、本腰を入れて崩壊の話を完結させた。ふと思って調べてみると、崩壊最後の話、最終更新日が2013/10/24になっていた。なんというか、個人的にはちょっと前の気がする。

 覚えている限り、鷺ノ宮事件の発想を得たのが、2000年くらいだ。何事かと思う方が圧倒的に多いとは思うので詳しくは避けるが、まあ、藍ちゃんの名前から発想を得たし。うん。検索機能って便利ですよね。調べないでください。(振りじゃないよー)


 空歴の話を書いてから、一度はこれで完結にしようと考えていた。厳密にはリウラクタの話を書いて、時代崩壊が書けたので、このくらいかなと。

 しかし、せっかく大陸が分離しているのに、一つの大陸だけで終わるのはもったいない――と、そう思って続きを書き出した。それが386年からのリウラクタ、ミヤコの話であり、そこから更に、417年へ向かう。

 そして、417年が終わってから、やはり一度、完結しようと思ったのだが、今度は騎士制度というのを思いついた。

 ここはリウラクタとミヤコが旅をしていて、まだ記されていない部分にしようとも考えたが、結果は掲載されている通り、424年から続く、イザミやコウノ、リンドウの話だ。


 親から子へ受け継ぐ、なんてことを考え始めたのもこの辺りで、なんというか最近としか個人的には思えないくらい、もうこの前の話である気がする。

 だから、崩壊前からあるもので、何を残すかと、そういう考察はした。その代表格が〝朝霧〟という名であった。それだけ私の中で、鷺城鷺花と朝霧芽衣の存在が強かったと、そういうことかもしれない。

 その流れでキツネが残り、そして浮遊大陸の謎についても着手した。つまり、崩壊前から残り続けるものは、そこにあると、考えたのだ。

 掲載されている内容通り、コウノとイザミがそこへたどり着き、場所を見る。


 そして彼らの子供世代、空歴441年――どのような展開にせよ、ここで浮遊大陸は落とそうと、そう考えていた。

 故に、エンデ、あるいはヌルといった、本作品におけるタイトルを冠した人物が登場する。つまり、手直しをしたのが事実であり、386年最後の部分である、ベルの住居において登場する同一人物の名前は、ここにきて変わったというか、完成したといえる。

 結果、というか構想通り、浮遊大陸が落ちた。

 やはりここでも、完結しいようと私は思った――のだが。


 空歴450年、今度は海が舞台である。

 海がようやく開かれたのだから、船乗りという役職は復活するのではと考えて構想し、いろんな人物を乗せてみようと思ったのだ。個人的には、海が開かれた現状で、今までの登場人物や、あるいは名を継いだ者たちが何をしているのか、そこを書きたかった。

 シュリ・エレア・フォウジィール。

 書いているうちに、海好きなだけだった彼女の過去、背景も作られ、ああいう結末に落ち着いた。そして、彼女たちに子供ができたのならばと思い――私は。


 もういいだろうと、思った。


 五神と呼ばれる仕組みも、鷺城鷺花という異物も、終わらせてあげようじゃないかと、そう考えたのだ。


 つまり、そこまでの流れを組み立てた時点で、この物語は完結する――はずだった。今度こそと思っていたのは確かだ。

 空歴460年、二人は出逢い。

 467年になって、彼らは四人で旅を始める。それは彼らにとっては経験の旅であり、私にとっては終わりの旅だった。

 そして空歴472年、ベル――刹那小夜、マーデである花ノ宮紫陽花、そして鷺城鷺花が、終わった。

 ふうと一息ついた私だが、しかし思いのほか、彼らの旅が面白かったようで、新しい旅を始めようと思って書き続けた。同時に、彼女たちがいなくなった後の世界がどうなって行くのかを、旅を通じて私自身が、決めたかったのもある。

 その結末が、空に浮かんだ小さな紅月だ。

 きっとそれは、かつて時代崩壊前に発生していたものと、同じなのではないかと、そういう終わりである。


 そして、前歴だ。

 それほど長く続けるつもりもなかったし、ただ、どうして人間の中に妖魔が混じっていたのか――その話を、以前から書いてみたかった、というのもあったので、書くことにした。

 残念ながら、やや拙速であり、深い内容で記せなかったのは、私にとって余談に限りなく近かったからであり、また、実力不足の証明なのだと思う。

 時系列としては〝最後おわり〟に該当する話だが、実際にはハジマリの五人が生まれるよりも〝以前はじまり〟の話になる。


 いずれにせよ、私が作ったこの世界は、大きく俯瞰すればずっと、ぐるぐると回っていると、そういう結論に至ったからこそ、最後に、前歴と題してこれを書いた。ハジマリとはオワリであり、オワリとはハジマリであって欲しいと。


 これにて「ハジマリの場、オワリの所」は完結となりました。

 思えばこのタイトル、どういう理由でいつ付けたかって、時系列順にする時に一体どんなタイトルならいいんだと悩みながら、まあこんな感じとつけたのだけれど、最後になんとかタイトルに多少は影響を受けた終わり方になって良かった。無理やり感もあるけれど。


 さて、実はまだ書いていない部分が多くある。困った。でも書きたい。

 ということで、外伝や補完として、別作品として書き続けています。投稿時だと、鷺城鷺花があれからどうしているか、とか。

 あるいは、この時代この時間に、違う場所で起きていた違う話とか。

 いろいろと思いつきながらも書いている次第であります。


 長くお付き合いいただき、また、ご愛読いただきまして、誠にありがとうございます。よろしければ別作品なども合わせて、今後ともよろしくお願いします。


 それではこれにて失礼いたします。

 最後に。

 すべての読者様に、深い感謝を。

 ――雨天紅雨。



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