04/20/16:00――カイドウ・魔術師の立ち位置
夕方になる頃に目を覚ましたカイドウは、鍛錬を一通り終えたオボロに家の案内をした。といっても、シャワーの使い方や、トイレの場所、それからオボロの自室と、ほかの人が使う部屋、そのくらいなものだ。最低限覚えておいた方が良い生活のルールも教えたが、オボロにとってはそれだけなのか、といった程度のものでしかないようで、拍子抜けではなかったものの、曖昧に頷いていた。また、クズハとは家賃の交渉をきちんと行い、定期的に生活費を渡すことを約束している。コノミという前例もあってか、その辺りはスムーズに進行した。
まだ夕食には時間があるとのことで、調度品があまりないオボロの部屋ではなく、カイドウは自室に呼び込み、お茶をお互いに手にして、テーブルをはさんで向かい合う。いろいろと聞きたいことがあったのだ。
「そういえば」
さて何から聞こうかと思っていたのだが、先に口を開いたのはオボロだった。
「コノミ殿の姿が見えませんが」
「ああ、俺も寝てて気づかなかったんだけど、仕事で空けるってさ。長くても十日くらいで戻るらしいぜ」
「それは、いわゆる出張……で、ありますか?」
「どうなんだろうな。俺も、あいつの事情は知らないんだ。稼ぎもな。ただ、そういう仕事が欲しいなら、旅人がよく集まる酒場や、王国直下の図書館前にある掲示板を見るといい。街の中で済む仕事は、ほかの食事処や賭場、露店街なんかに結構ある」
「なるほど、ありがとうございます。明日にでも回ろうかと思っていたものですから」
「動きが早いね、まったく。でだオボロ、その目について聞いてもいいか?」
「はい、なんでしょう」
「俺はそいつが魔術品じゃないのかと、思っている。先を予測する瞳だ。正直に言おう、興味がある。だが欲しいとは思わない。そんな技術もないしな。ただ……その危険性を、憂慮しているのも確かだ。オボロ、聞かせられるなら、教えてくれ。その目について、お前はどこまで知っている?」
「自分の目、でありますか……」
「そうだ。もちろん、俺だって全部わかってるわけじゃねえ。危険性と言ったが、本当にそれがあるのかどうかもわからない。これは俺の好奇心、そう思ってくれて構わない。だから、話すかどうかはお前に任せる」
「いえ――今までならばともかくも、これからの自分にとって、弱味を見せることにはならないのでしょう。カイドウ殿の口が堅いことも、理解しているつもりです」
「ああ、他言はしねえよ。悪いな、親父なら大した話もせずに見抜くんだろうけど」
「お逢いしました」
「へえ、そうだったのか。俺が寝てる時だな、そりゃ」
「そうなりますか。確かに、対峙しただけで見抜かれたように思います。話は逸れるかもしれませんが、この際なので聞いておきますが、カイドウ殿。その、リンドウ殿の背後に鎧武者のようなものを、自分の目は見つけました。あれが何なのか、ご存じでしょうか」
「マジかよ……お前の瞳は、そんなものまで見つけちまうのか」
「リンドウ殿は、あえて隠さなかったと、おっしゃっていました。ただし術式を使っているわけではない、とも」
「すげえな。あれは親父が使う術式の中でも、かなり高度なやつだぜ。概要としては、自らの魂魄を可分することで、その複写を行うらしい。魂魄はわかるか?」
「普通の意味合いとしては」
「そっか。精神には魂が宿り、肉体には魄が宿るってのが、魔術師の見方だ。そのうち、魄を複写して、形を作ったものがあの鎧武者――影複具現と呼ばれるものらしい。俺も見たことはねえよ、文献でちらっと見ただけ」
「それでは、その術式を使える者も少ないのですか」
「少ないっつーか、たぶん親父と、じいさんくらいだろうぜ。じいさんは、親父の先代らしいし」
「そうでしたか。いや、話が逸れました、失礼」
「いいさ。そういう興味は頷けるし――たぶん、俺も、同じような感じだし」
ではと、昔を思い出そうと軽く瞳を瞑ってから、オボロはゆっくりと話し出した。カイドウはメモを片手に、言葉を聞く。
「自分は生来より、目に障害を持っておりました。それがどのようなものだったのかは、よく覚えておりません。ただ五歳の頃、孤児院から売られたのは、自分にとって軍属の孤児院で厄介になることが、負い目に感じていたから、というのもあります」
「その頃から、もう目が見えなかったのか?」
「少なくとも、槍使い殿に買われた頃は、見えていませんでした。槍を教わりながらも、最初の一年ほどは、自分にとって世界とは暗いままだったのを覚えています」
暗闇の中の修行は、カイドウも覚えがある。だが、それはあくまでも修行であって、そこでずっと過ごしていたわけではない。
「確か……槍使い殿は、自分が槍を最低限使えるようになった〝褒美〟だと言って――何かを、したのだと思います。その頃から目が見えるようになりました」
「待て。何をしたのかわからない、その点はいい。見えるようになった時の状況を覚えているか?」
「そうですね、ある程度ならば」
「どう見えるようになった? 視界の具合はどうなんだ?」
「光が差す、と言えばいいのでしょうか。まばたき一つで何もかもが見えるようになったというか……」
「――だったそいつは、元からオボロが持っていたものなんだろうな」
おそらくは、そうだ。それが移植であった場合、どれほどの相性が良くても、馴染むのには時間がかかる。初めはぼやけた視界から始まり、次第に馴染んでいくのが一般的だ。何故なら、一気に見えてしまうと、その情報量に対して脳がパンクする可能性があり、それを無意識に制御することもある。
「これは憶測だが、一時的な失明は目を使いすぎた結果なんだろう。おそらく制御の仕方を知らなかった……んだろうな。そして、視力を失ったと思っていた状況でも、きっとその目は、ずっと稼働していた。脳はそれを〝見えている〟と認識していたが、それをきちんと使えなかったから、閉ざされたままだった」
「そんなことが、ありうるのですか?」
「可能性の話ならな。魔術品ってのは、使い方がきちんとある。符式だってそうだろ? それがこと肉体のことになると、意識と無意識っていう二つが存在してな。けど、本当の意味での〝視力〟は、失ったのかもしれない。瞳の魔術品なんだ、術式が作動していても見えなかったとなれば、使い方を知らなかったと頷けるが、ただそれだけなら、本来は人が持つ視力そのものが、世界を把握できる。それがないからこその暗闇だ――」
つまり。
「それはきっと小規模の暴走だったのかもしれない。だから、代償と呼ぶべきなんだろう。その槍使いって野郎は、回線を繋げたのか、それとも使えるように無意識を意識に変えさせたのか……そこらは、やっぱり憶測の範囲だがな」
「……」
「どうしたよ」
「あ、いえ、そんなことを考えたことが、今までなかったものですから」
驚いたような様子に、小さくカイドウは苦笑して手を振った。
「魔術師なんて、こんなもんだ。といっても、俺は魔術師だと誇って言えるほどのものじゃない。多少は知識を得てるってだけで、コノミも似たようなものだしな。現状、その目に不具合はないのか? 戦場を転転としていて、負荷を感じたとか」
「いえ、目の疲れなど、よほどのことがない限りはありませんでした。そういった際には、肉体的な疲労も蓄積されていましたから。ただ、カイドウ殿の憶測を補強することかもしれませんが、自分には〝色〟が良く見えておりません」
「――そうなのか?」
「はい。明暗などはわかるのですが、色合いは混ざってしまって把握が困難であります。なんといいますが、自分の目が見る景色は、そのほとんどが白と黒との混合となっているのです」
「色、か……どうなんだろうな。元より魔術品としての瞳にとって、色彩そのものが邪魔だったのか、それとも〝予測〟の観点から、色の情報そのものが負荷になると判断しているのか……最初から機能が備わっていないのか、あるいはオボロが無意識の領域で遮断しているのか、やっぱり確定は難しいか。幸運なのは暴走の気配がないこと、オボロに馴染んでいること、かな」
「今更なのですが、この目を使っていることでの不具合など、出るものでしょうか」
「可能性の話だな、それも。今の俺じゃ何とも言えねえ。ただまあ、ここで暮らすんだから、俺もそれなりに調べておくつもりだ。――と言っても、お前のためじゃなく、俺の好奇心だけどな」
「はは、ありがとうございます」
「軍属時代、その目に関してはどうしてたんだ?」
「何も話しておりません。上官にも、なんとなく予測ができる、程度にしか。この目を持っていても、直属の元上官には、手も足も出ませんでしたから」
「結果的に隠せていたわけか……」
「自分にとっては利点であり、そして欠点でもありましたので」
「ああ……そりゃそうか。そこらの考えは持ってたわけだ。ん、とりあえずはこのくらいか。調査の方向性も見えてきた。で、こっからも興味本位なんだが、シャヴァ王国軍ってのは、どういう感じなんだ?」
「どう……と、言われると、どのようなことがでしょうか」
「何でもだな。たとえばあの敬礼、どういう意味がある?」
「意味……は、どうなのでしょうか。自分は槍持ちですので、左の拳を胸に当てます。剣持ちの場合は、左手で鞘を掴みやや押し、いつでも引き抜ける状態で、右の拳を胸に当てます」
「同じなのはそこか。つまり、得物を手放すな……あるいは、武力を示せって感じなんだな」
「そうなります」
「ウェパード王国騎士団なんかは、普通の直立だ。オボロ、歩いてきたんだよな、こっちまで。どうだ? なにか、こう、違いはあったか?」
「はは……違いしかありませんでした。特に関所がなかったのは驚きを隠せませんでした」
「関所? そっちには結構あるのか?」
「街とは別に、各地にあります。部隊編成での侵入を想定しての関所は、いわば防衛の拠点になりえますので。しかし、ウェパード王国領に入ってからは、検問もなく、関所もなく、慣れている自分にとってはこれでいいのかと、肩透かしな気分でした」
「なるほどなあ。だったら、こっちの王国と、そっちの王国も、やっぱ違うんだろ?」
「もちろん、シャヴァは軍事国家ですから。自分はまだウェパード王国を詳しく知りませんが、王国に入った時は、防衛拠点としては貧弱だ、などと思ったものです」
「貧弱? 何故、そう思ったんだ?」
「ここからは、自分の見解ですので、間違っているかもしれませんが、そのつもりでよろしいですか」
「おう」
「貿易国家としてある現在のウェパード王国は、東西と北に大通りがあり、開けています。外堀を囲う水路にも橋がかけられておりますが、これらも石造りであり、道として機能しています。これが軍事国家ならば、跳ね橋のように、籠城可能な造りにするのが一般的でしょう」
「確かにそうだな。外から攻め入るとなれば、簡単ってことか」
「簡単とは断言しませんが、防衛拠点とは適さないと思いました。何よりも、ウェパード王国内部には、逃げ場がないのです」
「……逃げ場?」
「はい。敵勢力の攻撃を想定した場合、第一に考えるべきは、軍人が前へ出ることではなく、住民の避難です。一般市民が戦火に巻き込まれることを避けるのは、おそらくシャヴァだけではなく、どの軍事国家も同じでしょう」
「待て。シャヴァ王国軍ってのは、俺の観点からすりゃ、かなり際どい政略に加えて、荒事が得意で押し通すってイメージを持ってるんだが」
「その点に関しては、自分も否定はしません。しかし、少なくとも自分が軍籍していた頃に、無関係な一般市民を、意図して巻き込むような戦闘は行っておりませんでした。もちろん、武器を手にしたのならば、容赦をするなとも教わっております」
「なるほどなあ……たとえばその住民の避難は、シャヴァじゃどうだったんだ?」
「そもそも、シャヴァ王国と呼ばれる場所には、一般住民がほとんど住んでおりません。九割が軍人の家系であります。一般の住居は、おおよそ二キロほどの距離を置き、シャヴァを囲むようにしてあり、仮に敵が攻め込んできたとしても、彼らは抵抗せずに道を開け、既定のルートにて避難するよう定められております」
「その二キロの範囲ってのが、いわゆる戦場になるってことか」
「そうなります。しかし、このウェパード王国では、それが難しい。ここは軍事国家ではないのですから、当然なのかもしれませんが。ただ」
「ただ?」
「逆に考えた時、自分はウェパード王国の在り方に、怖さを覚えたのも事実です」
「なんだ、逆に? 一般人の避難先がないってことか?」
「それも含め、デメリットなのではなく、むしろこの国は、一般人を非難させる必要がないのではと、そんな考えを思いついたのです」
「そりゃ……」
「簡単に言ってしまえば、どんな敵が進軍してきたところで、王国の〝外〟で全て片付けられると、そういった意味合いを感じました。それを探ろうなどとは思いませんが、気付いた時は背筋が凍る思いでしたよ」
「なるほどな。俺には最初から、王国内部に攻め入られるってイメージが全く持てなかったんだけど、確かにそういう意味合いもあるのかもしれねえか。コノミなんかは、そういうところも考えてるんだろうけど」
「カイドウ殿は、ずっとこちらで?」
「おう。街に遊びに行ったり、依頼があって親父やばあさんと一緒に、ちょっと外出するくらいはあったが、それくらいだな。あんまり旅ってものをしたいと思ったことがねえんだ。それよりも前にやることがあるだろってな」
「きちんとお考えを持っていらっしゃるのですね」
「んな大したもんじゃねえよ。きちんと仕事をしてたオボロの方が、よっぽど立派だ」
「いえ……自分はただ、上からの命令に従っていただけですので」
「そうであっても、すげーと思うけどな。そりゃ俺だって、小遣いくらいは自分で稼ごうとやってるけど、生活に関しては親に頼りっきりだし。つっても、あと二年くらいが限度だろうなとは考えることもある」
「二年、でありますか」
「おう。俺も十四だからな。仕事はいくらでもある。それこそ、肉体労働でもいい。俺に合った仕事だなんて贅沢は言わねえよ。仕事に合わせるってのが、当然だと思ってるし。ただ――危険に見合った報酬がある、そういう仕事は御免だ」
「……そうですね。自分も、戦場は怖いものであると、そう思っております」
「やっぱ、そうなのか?」
「はい。もちろん、出ろと言われれば出ます。それは今でも変わりなく、戦場に足を踏み入れること自体、自分は拒絶しません。しかし――それは、いうなれば仕方なく、ですね。言い訳が欲しい。仕事だから、必要だから……軍人のほとんどは、国のために、自分のために、仲間のためにと、そうやって理由を持たなくては、戦場になど出れませんから」
「実際、どうなんだ? 荒っぽいやつもいたんだろ?」
「はは、その度合いにも寄りますが、軍人はほとんど荒っぽいですよ。ただ、それでも臆病であること、それに付随して慎重であることは第一条件です。功績を求める者、他者と自分を比較する者、慢心する者――そういった仲間から、死んで行きます」
「日頃の訓練はどうなんだよ。強くなるためにするんじゃないのか?」
「もちろん、そうです。国にとっての、一単位の兵士として動けるように訓練を行います。それでも軍人は、戦果を挙げるためではなく、生き残るための訓練が第一かと。役立たずでいい、という意味合いではありませんが」
「そりゃまた、過酷だな……」
そもそもが過酷な状況へ入ることを前提としているのだから、訓練も同様に過酷にもなろう。そのことを理屈ではわかっていても、そこで生活していた人物が目の前にいれば、考え方も変わってしまう。
少なくともオボロの言葉は、経験からくるものだからだ。
「魔術に関してはどうなんだ?」
「適正があり、当人が望めば、それを突き詰めることにもなりえます。ただ、自分が知る限り、魔術師部隊なるものは存在しませんでした。現場では対術式用の符式や、野営などで利用する――そうですね、符式の運用が多かったかと」
「対術式かよ」
「ええ。自分たちの本分は、得物を手にした接近戦にあります。であれば、そういった状況を作ることを第一として考えておりました」
それはまた金がかかる。符式の制作は魔術師でなくては難しいし、対術式用ともなると汎用性の面も考えて、いくつかの種類にわけたとしても、扱い方一つで有利にも不利にもなるものだ。部隊はないにせよ、専門の魔術師を囲っていると考えた方が自然だ。
「国の在り方が違えば、中身も違う――か。オボロ、優先されるのはどっちだと思う?」
「少なくともシャヴァ王国は国が第一でした。しかし、ウェパード王国は国民が第一とされているように思います。どちらが良い、とは一概に言えないかと」
「だろうな」
「……カイドウ殿は、国王殿やリクイス殿に逢ったことがありますか?」
「ん――おう、あるよ。親父なんかはワイズ国王をおじさんなんて呼んでるしな。リクイスもまだガキだが、遊びに来ることもありゃ、こっちから行く時も、たまに。なんだ、リクイスに遊ばれたか?」
「いえ、今にして思えば、自分に合わせていただいたと、そう感じております。ただ、玉座に腰を下ろすこと自体に、なにか適性が必要だ――と、そのようなことをおっしゃっていたのを、先ほど思い出したのです」
「ああ、それか。直接訊いたわけじゃねえし、こいつは俺なりの推測だと思って聞いてくれ。たぶん合ってるとは思うが――ワイズさんが玉座に腰を下ろした時、水が湧いたってのは知ってるか?」
「はい、ファル殿に教えていただきました。未だに信じられませんが、事実なのでしょう」
「ああ、副団長とも逢ったのか……。まあなんだ、簡単に言えば湧水を持続させるための適性みたいなもんだ。俺に言わせれば、ウェパード王国は知りうる限り、最も水龍ウェパードに近い。こいつは予想になるが、定期的に、どんな形かはともかくも、コンタクトを取っていると思ってる」
「確かに、あの謁見の間に存在する水気は、溺れそうなほどでした」
「いい表現だ。慣れればどうってことないが――あそこの水は、カタチこそないようなものだが、随分と純度も高い。許容量とでも言えばいいのかね、リクイスにはあの場の水を〝囲う〟ことができる……己の内側に許容する、ないし同化する適性のようなものがあるんだろう。極論だが、それができるなら椅子に座ってるだけでいい。王であることを示すのは、なにも
「言葉は悪いですが、傀儡でも構わないと?」
「あるいは、な。けどそうはならねえ――リクイスは賢い。王であろうと思っているし、なりたいとも思っている。賢くあろうと、可能な限りの知識を蓄えて、遊びも含めて経験して、何より楽しんでいる。いいガキだよ、あいつは」
リクイスは質問をよくする。それを恥だと思わない。実に勤勉でありながら、何よりも失敗を恐れない。同時にまた、失敗を嫌う。そういった在り様が既に、王としての素質とも言えるが、素質だの資質だので決められたくはないだろうとも思った。
「そういや、軍じゃ若い部類だったんだよな。平均年齢とかってわかるか?」
「正確にはわかりませんが、門をくぐるのは、だいたい自分の年齢くらいです」
「十三……おいおい、待て待て。若い部類とかいうレベルの問題じゃねえぞオボロ、お前」
「はは、やや語弊がありましたか。実際に子供扱いでしたよ」
「そりゃそうだ。いや、いろいろと納得したよ」
これから面白くなりそうだと思ったが、さすがにそれは口に出さないでおく。これから仕事を探そうかというカイドウと、一つの仕事を終えて次を見つけようとしているオボロ、なかなか対比とするには良い条件ではないだろうか。
「ま、なんかあったら気軽に聞いてくれ。そろそろ飯になるだろ、行こうぜ」
「はい。カイドウ殿、これからよろしくお願いします」
「こちらこそ、だ」
良い関係が築けるならば、それでいい。最低限の関わりで済むようならば、それはそれで構わないし、お互いに敵対関係でなければ大丈夫。
どちらにせよ、なんというか――コノミと比べれば、同性ということもあって、オボロとの付き合いにそう大きな問題が生じるようなことには、ならないだろうと。
それが現時点での、カイドウの見解である。
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