10/17/23:00――鏡華花・待つ者
疲労が随分と積み重なっていたのか、鏡華花が意識を取り戻した――いや、目覚めたのはもう一時間もすれば日付が変わる頃合だった。
「あ……」
見慣れない天井だけれど、同じような匂い。和風の家屋だと認識してからすぐに、今までの経緯を思い出す。
逃げろと、往けと――生きろと言われて射手市から逃げて、雨天家に至った。
「もう、あかくんは……行ったのかな」
「行ったよ」
ずっと様子を見ていた翔花は白湯を淹れて手渡しながら独白に対して答えた。
「そっか。……あれ? えっと」
「あ、私は翔花よ。小波翔花」
「鏡華花。……? 花ちゃん、ちょっと――何だろう」
「花ちゃんって……まあいいけど、なに?」
「あーごめん。あたしって直感が冴えてるらしくてさ、何かに気付いたら言う前に考えろって言われてるんだけど」
「うん。どうぞ」
「花ちゃんって――なんか、地に足がついた感じがする。あ、今まで浮いてたのかな?」
「ん……まあ、そう、なんだけど」
「認めるんだ」
「直感は外れない。――落ち着いてるね華花さん」
「うん。……こういう言い方は嫌いだけど、わかってたことだから。承知の上で涼と付き合ってたんだしね」
「……そっか」
「でも――やりきれない、ね」
「悲しいとは言わないのね」
「だって、あかくんに比べたら……」
比べなくてもいいのに、と続けようとしてやめた。
――まだ、あちらの戦いは終わりを告げてはいないのだから。
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