フェチD 壁(へき)に睨まれたCAR出ぬ
よぉ、お前ら。地球の生命の75%のフェチズムを担う伝説の黄金河童、すぅぱぁKだ。土手に寝転がりながら見上げる空は、深く深く藍よりも青い青を群青して、青して…カキ氷はやっぱブルーハワイだよな。隣に座ってR字開脚の練習をする我が相棒、Ω九郎をそっとしておき、俺は昨晩、おでん屋台の親父から仕入れた情報を頭の中でクルクル回して砲丸投げで世界を掴み取った瞬間のインスピレーションをイントネーションした。カーネーションって何で母の日に贈るんだろうな。
「駐車された車の前後に板を並べてドミノを楽しむ女…間違いなくフェチストだ!」
思い立ったが吉日。吉日じゃなくても立ち上がらなければ、はた迷惑追求所に先を越されて、彼女を外道へと進ませてしまう。それだけは避けねば。俺が立ち上がるのに気付いたΩ九郎は、俺の意思が自ずと分かっているかのように、墨字閉脚を解くと、俺に続いて立ち上がった。さすがは俺が見込んだだけのことはある。最高だぜ、ブラザー!
「駐車された車の前後に板を並べてドミノを楽しむ女…間違いなくフェチストだ!(Kちゃん、おトイレを探しに行くのね!丁度私もお花を摘みに行きたかったのよ!超巨大マンドラゴラが腸内をギュンギュン大暴れしてて…お外で粗相は駄目よね!)」
「ああ、そのつもりだ。ただ最悪、相手との戦闘は免れないかもしれない。その時は援護の方、よろしく頼むぜブラザー!」
「ああ、そのつもりだ。ただ最悪、相手との戦闘は免れないかもしれない。その時は援護の方、よろしく頼むぜブラザー!(大丈夫よ!替えのパンツは持ってきてるから!Kちゃんがそういうと思って、ちゃんとKちゃんの分も用意しておいたんだからねっ!勘違いしてね!)」
何を思ったのか、Ω九郎は羽に手を突っ込み、中から黄ばんだブリーフを二枚取り出した。血で血を争う真似はしない、そう言った彼の言葉に現実味を持たせるためにわざわざ汚いものを見せてくれたのだ。彼の心遣いに目頭を沸騰させながら、俺はΩ九郎と共に現地へと向かった。
むふふ町にある駐車場。一台のワゴン車の4輪の前後に、直方体の消しゴムを並べて涎を啜る眼鏡の少女が居た。聞いていた話と大分違うが…そこはきっと屋台の親父が愛嬌で以って噂を意訳したのだろう。粋なことをしてくれるぜ。急にフェチ衝動に襲われ、男子トイレに駆け込んでいったΩ九郎を待つほうが安全と言えば安全だが、やはり気になるのは悪の組織の闇の魔手。ここは俺一人で乗り切るしかない。俺は右後輪側に屈みこむ少女を目指し、ゆっくりと相手に気付かれぬように、背後から近付いていき…。
「ばぉっ!!」
「ッぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!」
少女は体を跳ね上げ、その拍子に並べていた消しゴムを倒してしまう。
「あっ!!」
少女が声を上げたときには、既に並べられていたドミノは倒れ、4輪近くに並べたもの全てに作用するように配置されていたため、少女の地道な努力が水泡に帰した。少女はその場に女の子座りで崩れ落ち、眼鏡に隠れる純情な瞳から大粒の雨を降らせた。
「あーーーーーーん!!!ぜっがぐ並べだのにぃぃぃぃぃーーーーーーーーー!!!!」
「…。」
これだから最近の若い奴は…。大声であんあんあふ~んと泣き喘ぐ少女の隣に屈み、倒れたドミノを直し始めた。そんな超絶かっこいい俺の姿が目に入らないはずもなく、少女は眼鏡の奥の目の周りを赤く腫らしながら、俺の背中に熱い視線を送った。
「びーびー泣いていてもひっくり返った盆は元に戻らねえよ。一度の失敗が何だってんだ。泣く気力があるなら、黙って手を動かせ。」
「…。」
「確かめたいんだろ?己の限界ってやつを。」
「!!」
お湯にコーヒー粉を溶かしたように茶色由来の真っ黒に染まっていた少女の瞳に、ハイライトが蘇る。週刊世界のハイライト、初回分は税込み価格5万80円。詳しくは書店にて。エアボプティーニ♪しかして、少女もまた、倒れたドミノを直し始めた。やる気を取り戻した彼女を見て、俺の心も多分救われた。
それから18時間後、車の持ち主何してんだよと思いながらも、俺と少女は駐車場全面にドミノを並べることができた。真剣な表情を浮かべて見てくる少女に、俺は力強く頷く。それを合図に、少女は始点となる消しゴムを指で小突くと、連鎖して立て続けに小さな直方体が倒れていく。円状、鍵型、螺旋状…。倒れた消しゴムは様々な模様を呈し、その全てが地に横たわった時には、ナスカの地上絵さながらの一つの美しい駐車場アートが出来上がっていた。
「やったーーーーーーーーーーー!!!!」
少女は歓声を上げながら、俺の体に飛びつき、全身で喜びを表した。俺もまた、少女と気持ちを共有するように不知火型で賛美を代弁する。
「金色の河童さん、ありがとう!」
「泳げない河童は、陸生河童だぁ…。」
俺は少女と固い握手を交わし、駐車場を去っていった。一人の少女の大成を心より願って…。
おでん屋の屋台で、ビールを片手につくねをペロる。残念ながら、今回もフェチの会のメンバー候補を見つけることができなかったが、砂漠で苦しむらくだ売りの少年を救うことができ、俺の心はトノサマバッタを捕食したカエルのように満ち足りていた。ガンモドキをしゃぶり尽くしながら、Ω九郎は不機嫌そうに目を360度回転させている。
「かーっ!一仕事終えた後のビールはうんまい!(あそこの駐車場のおトイレ、すっごくバッチくて最悪だったわ!タバコは捨て放題だったし、湿った土色のあれが吸血ヒルのように側面に…思い出しただけでも悪寒がするわ!!)」
きっと、少年に引き取られたらくだの母親の安否を案じているのだろう。震える相棒の肩を組み、俺はスマイリースマイルを笑顔った。
「心配すんな。きっと今頃は、国立自然保護区で、ライオンの餌にでもなっているさ!」
「心配すんな。きっと今頃は、国立自然保護区で、ライオンの餌にでもなっているさ!(そうよね…!ちゃんと投書しないと施設管理側は動いてくれないものね!私、明日区役所に行ってくる!)」
気を持ち直したブラザーとノリに相乗りしてきた屋台の親父と、3人で肩を組みながら、肩叩き県民の歌を賛唱する。俺たちの、崇高なフェチの会の、新時代に向けての再興と恒久なる繁栄を胸に抱いて…。
「てか今思ったんだが、これもしかして、俺の心情描写一つで世界を自在にできるんじゃ…?」
試してみた。
それから世界は、フェチストたちによる大革命によって、この俺、すぅぱぁKを国王としたフェチの楽園に生まれ変わった。そこに生きる民が、獣が、植物たちが…生きとし生けるもの全てが、俺の意のままになったすんばらしい世界。俺は、小鳥ちゃんのさえずりを聞きながら、フェチ宮殿でのどかなティータイムに耽っていた。するとそこへ、おぞましいほどの轟音が。異変に気付き、外に出てみると、巨大でギガンティックな緑の河童が薙刀を振るい、楽園を血で染め上げていた。フェチストたちの幸福をハエを払うように一蹴する魔界の貴公子…俺が絶対に許さない!
次回、すぅぱぁK列伝 第3話 地獄の沙汰も金次第 絶対に見逃すな!
「お客さん、世界は変えられたかい?」
「駄目でした☆」
☆今日のぷーたん☆
「下ばかり向いていても、何も見えてこねぇぞ?」
人気声優ぷーたんのハスキーボイスに、世の奥様方はメロメロ。幼児向けアニメのヤリイカからえっちすぎる大人のおじ様まで、幅広く演じ分けることができるよ。七色に輝く虹のような人生だね!
明日はどんな顔を見せてくれるかな? ぷーたん、またね!
☆ーーーーーーー☆
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