第102話

「ふふ・・・それでこそタウお姉ちゃんだね」

「シル様・・・」

 聞きたい言葉を聞けたからなのか満足そうにするシル。

「じゃ、ちゃんとそれをハルオミさんに伝えよう!」

「ええ?!」

 おーと腕を上げるシル。しかし、その言葉に動揺するタウ。

 ・・・まあ、そりゃそうか。というかこれ俺聞いちゃいけなかった奴じゃね?

 それに、

「ついにタウちゃんも気づきましたか~」

「ふふ、これは面白いことになりそうじゃな」

「・・・お前らいつからいたの?」

 俺の後ろにいたのはアストレアとハク。

 まあ、分かってはいるのだが、一応聞いておく。

「シルちゃんがかっこいいところからですね」

「そう、旦那様がこっそり隠れた頃からじゃな」

 ほぼ全部じゃねえか。やばい、気づかなかったんだが。

 アストレア気配遮断系の魔法こんなにうまかったか?

「頑張りました!」

 むふーと鼻息を荒くして嬉しそうにそう答えるアストレア。

 ・・・ち・・・夜が心配だぜ。

「頑張ります!」

「何をだよ」

「そんな・・・私の口から言わせるんですか?」

「やっぱり黙れ、変態」

 こいつもう一回縛っとくか。

「ハルオミさん・・・?」

「あ、主様??!!!!」

 おっとそんなことよりこっちが問題か。

 俺が振り返るとそこには仁王立ちのシルと真っ赤になっているタウ。

「ハルオミさん・・・?」

「は、はい、何でしょうか?」

「覗いてたの??」

「はい」

「言い訳もしないの?!」

 予想外の反応だったのかツッコミを入れるシル。

 だって、言い訳してもしょうがないし。

 さてと、

「タウ」

「!!!」

 ビクッとして顔を隠すタウ。

 ったくしょうがねえな。

 そう思い俺はタウの目の前に行く。

「あ、あう、心の準備が・・・」

「頑張ってタウお姉ちゃん!!」

 慌てふためくタウを応援するシル。

 本当に天使だなあ。

「ハルオミ様」

 おっといけない。またトリップしかけた。

 俺は気を取り直してタウの手をつかむ。

「さて、タウ。俺は君に問おう」

「は、はい」

「君が求めるのはただの力か?」

「い、いえ!」

 仰々しく言うのはしっかりと意志を持って言ってほしいから。

「では、なんのために力を求める?」

「私は・・・あなた様のために!主様のお傍であなたを守るために!!!愛する主様のために!!!」

「・・・OK」

 こんなにもはっきりと好きだと言われると照れるが、タウにとって良くなることなら甘んじて受けよう。だが、

「夜はまだ勘弁してくれよ?」

「は、はい!!!」

 欲にまみれた変態アストレアも抑えるためにな。

「じゃあ、眷属化解除するぞ」

「は、はい」

 まあ、俺が念じればいいんだけど、それじゃ味気ないからな。

 そう思い、俺は噛んだあたりを指でなぞろうとする。

「っつ!」

 するとなぜか、タウが少し痛そうな表情する。

 いったいどうした・・・ってあれ?

「なんだ、俺の噛み跡治してもらってなかったのか」

「は、はい」

「なんで?」

「そ、それは・・・」

 しどろもどろするタウ。いったいどうしたんだ?

「それはですね~タウちゃげふうううううう!!!」

 アストレアがなにか言いかけると、目にもとまらぬ速さで見事なラリアットをアストレアにくらわすタウ。

 見事なラリアット。調子出てきたんじゃないか、タウよ。

「い、痛いですタウちゃん・・・」

「アストレア様が余計なことを言おうとするからですよ!!」

「だって・・・ごにょごにょ」

「・・・それはそうなのですか・・・恥ずかしさとアストレア様と同じ扱いは嫌なので」

「ハルオミさま~タウちゃんはですね~」

「やめてください~!!!」

「ちょ・・・きまってます・・・タウちゃんそれくびやばい・・・ぐふう」

 いったいどうしたっていうんだ?

 まあ、変態アストレアの仕置きもしてくれたし、ナイスだな。

 ちょんちょん。

 ん?いったい誰が。

 俺がタウに感心していると後ろから可愛らしく背中をつつかれる。そして、後ろを振り返ると、

「まださっきの覗きについて説教が終わってないよ?」

 怒りオーラ満載の天使シルが。

 その後ろですでにハクが正座させられていた。

 ・・・うん。怒っているシルも可愛いな。

「いいから正座」

「はい」


 そうして、なんやかんやあって、脚のしびれに耐えながら、タウの傷も治しつつ、眷属化を解除して、タウの問題に関しては解決した。

 なんか傷治したとき、タウが複雑な顔してたんだけど、ま、気にしなくていいか。

 ん?それでおしまいか?

 ・・・それならよかったんだよ。

 だが、そううまくもいかないもので・・・


「さて、では、タウが強くなるために次のような提案があるのだが」

「ハルオミー!!!」

「ハルオミ殿ー!!!」

「ん、どうし・・・は?」

 和気あいあいとしていた俺たちの所にミアとセリスが連れてきたのは、

「「女の子が流れてきたー!!」」

 あきらかにトラブルになりそうなものであった。

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異世界の職業集めよう! 甘川 十 @liebezucker5

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