第97話

 「・・・これが今回のシルの急成長の原因だ。ってな感じだけど」

ある程度話し終わった俺はゆっくりと飲み物を飲む。

うーん・・・すごい頭抱えてんな二人とも。

でも、やっぱりそこはハクとヘファス。すごい睨んできているがまっすぐとこちらを見てくる。

「ああ。なんとなくだが原因は分かった。で、魔力をお前から与えられ続けた結果、炎やブレス以外の魔法でも食べることができるようになったのだな?」

「そういうこと」

「にわかには信じられないんだが・・・そんなことってあり得るのか?」

ヘファスの方も頭を抱えながらも、質問する余裕はあるようだ。

そして、ハクはヘファスに向かって答える。

「ないことも・・・ない。ネームドモンスターがそれを物語っているではないか」

「「え?」」

ハクが意外ではないということに驚く俺たち。

「なんでネームドモンスターの話が出てくるんだ?」

「ああ、魔力と何の関係性があるんだ?」

「ふむ。やはりこれは人間とモンスターでは違いがあるのか・・・それとも知られていないのか・・・」

「いいからもったいぶらなくていいから答えてくれよ」

「旦那様は厳しい」

いや、なんか回りくどいからつい・・・

「まあ、いい。ネームドモンスターになるためには二つ方法があるのだ」

俺にピースサイン・・・ではなく指を2本立てて2つをアピールしている。

「まじか・・・今までモンスターを研究している奴もなぜネームドモンスターになるかなんて発表できないし、正確ではないって言ってたぞ・・・」

へーそうなのか・・・てっきり俺だけ知らないものだと・・・

そんなことを思っているとヘファスが

「これ俺らが初めて知っていいのか・・・?また、巻き込まれそうなんだが・・・」

とか言っている。あきらめろ、もうすでにだいぶ巻き込まれているから。

まあ、今更やめてくれって多分言っても聞かないだろうし、ハク。

「おい、聞いているのか」

「悪い悪い、ヘファスが冷や汗かいてるからさ」

「お、おい!ハルオミ!!いいい言いがかりはよせ!!」

「まあ、なんでもよい。続けるぞ?」

「おう」

「は、はい」

そして、ハクは俺の机の上に座りこちらを見ながら話をし始める。

「まず、1つ目はテイマーと契約を結んだ時だな」

「ああ、それなら、研究している奴とかテイマーが言ってますよ。契約時に他の個体と区別するために名付けを行うらしいんですが、そのとき、他の個体より明らかに強くなるそうなんですよね」

「その通りだ。やはりヘファスはしっかりしているな」

「お褒めいただき光栄であります!!」

きれいな敬礼だな。そして、本当に何も知らんのだなとかいう目で見んな。

「旦那様がボケっとしているからだ」

「・・・お前も心読めるようになったのか?」

「旦那様がわかりやすいのだ」

おいおい、俺はそんなわかりやすい男じゃないぜ。

「そういうとこだ」

・・・。

「まあ、まあとりあえず本題を話そうぜ」

「ふふ、そうだな」

ちくしょう、久々に負けた気がする・・・

「で、2つ目なんだが・・・これは進化とは別・・・とは言えないが魔力を多く吸収した者がネームドモンスターになる」

「「!!!」」

これにはさすがに驚いた・・・というかやってしまった感。

ということはなにかあ・・・俺はネームドモンスターになっているシルをさらに強くしたってわけか?

少しまずったと思った俺はヘファスの方を見る。すると意外な光景が目に入ってきた。

「なるほどな・・・だからモンスターの成長は早いのか・・・そりゃ、人間相手にしてるんだがら魔法使いにも出会うだろうから、そういう形でネームドモンスターにもなるってわけか。それなら納得もいくものも・・・オークキングがネームドモンスターになることが多いのもあいつらが捕食することが多いのが原因か?」

なんかぶつぶつ言ってんな・・・とりあえずスルーで。

「まあ、そういうことなら納得いくんだろ?」

「そうだが・・・それでもいろいろおかしいのだがな・・・なぜ成長したのかとか魔力喰らいになるほどってどんだけ魔力を注ぎ込んでいるのだとか・・・あきらかにお主の影響を受けている言動とか・・・最近は思春期の娘を持った気がするし・・・ママと呼んでくれない・・・」

マンガならズーンって効果音が出るほどがっくりしながらハクもブツブツ。

・・・それはごめん。

「と、とりあえず、シルの件はとりあえず解決も何もないからな・・・ちなみにギルドは報告は上げないそうだ」

そんなことを思いながら飲み物を飲んでいると・・・ヘファスが現実に戻ってきた。

「そりゃ、そうだ。ユリアは俺の不利益になることは言えないからな」

「・・・本当にお前はそういうところも含めて化け物だよな・・・どうやったらユリアにメイド服着させて、いじめる奴がいるんだよ・・・」

「そこは今後話すさ」

「もちろんだ。それよりも・・・あの二人はどうなったんだ?」

「あの二人って?」

「ゴウガとレイナだよ」

ああ、あの二人か。

「なんで俺に聞くんだよ」

「・・・大方なんか考えて、その場でノックアウトするんじゃなくて遥か彼方まで吹き飛ばしたんだろ?今どうなっているかも予想できるように」

・・・こういうとこみるとヘファスってすごいって思うんだがなあ。

日ごろのヘファスを見ているとそう思えないのが悲しいのなんの・・・

「よくわかったな。もちろん考えてるよ。で、あいつらなんだが」


「それ私も聞きたい」


話をしようとした俺を遮るように声がする。

その声の主は、


「お、仕事はどうした、ミア」

「ん、いったん休憩になったから来た」


箒を持ったメイド服のミアだった。

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