第89話

 side シル

「ふう・・・ごちそうさまでした」

 ・・・やっぱりおいしくなかったけど、魔力はかなり増えたわね。

 でも・・・ハルオミさんの魔力に比べたら、ちっぽけだわ。

 ハルオミさんの魔力の味は・・・ああ!

 っとまずいわね・・・他のところ行かなきゃ。

 もっと頑張ってハルオミさんに褒めてもらいたいわ。

「さてと、まずはお母さんのところに行きますか」

 私は龍化した脚で空を駆ける。

 一回跳躍するだけでお母さんのところにたどり着く。

「大丈夫、お母さん?」

「・・・もう私の立場はない気がするのお」

 ・・・そんなことはないと思うのだけれども。

 さて、そんなことより炎龍をどうにかしないと・・・って、え?

 私は緊張を解いてしまった。

 だって・・・

「えと?炎龍さん??」

『いかがいたしましたか、新しい主様』

 そこには私に頭を下げる炎龍帝の姿。

 先ほどまでのお母さんとの戦いはどこへやらだわ。

「なんで私があなたたちの主人になっているの?」

『・・・あなた様からイフリート様の魔力を感じることができます』

 ・・・要するにこういうことかしら。

 あの火の玉を食べたせいで契約者認定されたということかしら。

『で、ありますので主様であるあなたに敵対することはありえないのです』

 そういって敵対の意思がないというように地に伏せていた。

「・・・シルよ」

「何かしら、お母さん」

「いろいろと言いたいことはあるのじゃが・・・ますます旦那様に似てきているのお」

 ・・・だめかしら。

 まあ、それは置いておいて。

「本音は?」

『・・・』

「言わないなら次はないわ」

『も、申し訳ございません!ぶっちゃけもう敵対しても勝てないので降伏したいです!』

「正直でよろしい」

「・・・炎龍帝の威厳皆無なんじゃが」

 いまさらよ、お母さん。

「で、私はあなたの主人になったようだけど・・・送り返したいのだけどどうしたらよい?」

『え!そ、そんな!』

 え?なんでそんな捨てられた犬のような顔を?

『せっかくあんな暑苦しいやつから逃れることができ、こんな美しい方に従うことができるのにもかかわらず、使えないもの認定されるなど炎龍帝の名が泣きますので・・・』

「すでにボロボロじゃがな」

『ぐ・・・貴様あの男がきた途端強気になりおって・・・』

「あーいまさら気づいたのじゃが、正直旦那様に比べれば、全然ビビる必要がないなと」

『・・・あのものは何ものだ』

 炎龍帝は先ほどの恐怖を思い出したのか冷や汗をかいている。

「「・・・」」

 私はお母さんと向き合った。

 ハルオミさんが何者ですって?

 あの人は、


「「私たちの大切な人」じゃ」


 最強無敵のね。

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