Second memory 17
= second memory 17 =
お休みはあっさりともらうことができた。
佐々田部長は
『ゆっくり温泉でも行っておいで』
と呑気なことを言ってくれた。とりあえず愛想笑いはできた気がする。
カバの言ったように、SHINは毎日忙しそうだ。帰ってくるのも遅い。
私は出来る限り残業を減らした。考えてみると同期のお姉さんたちは、ほとんど残業をしていない。私は佐々田部長関係の仕事があるとしても、二人に比べて残業が多すぎると思う。
ちょっと二人のデータ集計の様子を見ていたら、アンケートの自由記述部分をほとんど読んでいなかった。私は1枚1枚読んでいたのでそこでもだいぶ違ってたんだ。
せっかく記述をしてくださった方々には申し訳ないけど、この10日間だけは許してください。心の中でそう思いながらアンケート集計をしていた。
ただわかったことは、この仕事の仕方は楽しくない。アンケートの記述部分にはいろんなヒントが隠れているから。いろんな人の想いが溢れているから。
だから10日間だけ許して。佐々田部長は気がつくだろうか。
〈SHELLEY〉で決めたように、仕事が終わるとそのままSHINの部屋に帰って、掃除をしてご飯を作ってお風呂の準備をする。
SHINは一緒に行動するグループの大阪の事務所に行ったり、スポンサーのところに行ったり、報道関係者のところに行ったりしてるらしい。毎日、ちょっと疲れた顔で帰ってくる。行く前に疲れちゃって大丈夫なのかな。
Rudrakshaのネックレスは、SHINの部屋の住所に届くようにしてある。毎日ポストを見ているけどまだ届かない。ガネーシャ、お願い。
土曜日の朝、とても早い時間に目が覚めた。
いつものようにSHINの右手が私の上にある。あの日からずっとそうだ。目が覚めると必ず。
そのまま彼の寝顔を見ていた。私の大好きなスースーという寝息。私の前で安心しきって眠ってくれている感じがうれしくなるから。
ほとんどの日、私が先に起きるけど、眠りに墜ちるのも私が先だな。私はどんな風に墜ちるのだろう。SHINはそんな私をどんな風に見ているのだろう。
今夜はSHINに先に眠ってもらおう。スースーの始まりが見たい。
今日は二人でオーナーのお宅に招待してもらっている。ほとんど着ないワンピースのアンサンブル姿の私に
『帰ってきたら、そういう服装で出かけるところに、もっと行こう。』
って。
「こういう服装が好きなの?」
って言ったら、
『そういう服装も、好きなの。』
って。一文字で嬉しさは倍増する。
オーナーのお宅は神戸の高級住宅街にあった。
車のまま門を入って庭に停める。豪邸。呼鈴をならすとママが出てきた。一緒に住んでるのかな?
ママとは時々〈SHELLEY 〉で会うから久しぶりじゃない。オーナーに会うのはX'mas以来だ。
ママに案内してもらって大きな部屋に入ると、車椅子のオーナーと、その隣に藪さんのゴリがいた。
オーナーに挨拶をすると、
『久しぶりやね。仕事はどう?ちょっと痩せたね。』
と笑ってくださった。
「なんとか頑張ってます。大変ですが楽しいです。」
そう言うと頷いてくださった。
『オーナー、今日はご招待ありがとうございます。彼女を連れてきたのはいずれパートナーになってもらいたいと思っているからです。きちんとオーナーには話したかったんで。』
いきなりのSHINの言葉。うれしいけど。
でもSHIN、多分、そういうことは私に先に何か言ってからだと思うよ。
『そうか。私はCHERRYのファンやから泣かすなよ。今回も。』
オーナーは最後は真顔で言った。SHINは
『はい。必ず帰ってきます。』
と頭を下げた。私も一緒に下げたけど、あってるのかな?
ゴリも、ママもそんな私たちのことを、ちょっと微笑んで見てくれてる気がする。オーナーも。
頭、下げてるからわかんないけど。
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