Second memory 6

= second memory 6 =


自分の誕生日がこれほど憂鬱だったのは初めて。

SHINは私の誕生日も、二人で静かに過ごそうと言ってくれた。

そうだね。二人でゆっくり過ごしたい。誕生日の次の日からカウントダウンが始まるなら。

SHINはどう思ってるんだろ?自分が言ったタイムリミットの話を覚えているのかな?

それともそれはあくまでもひとつの通過点で、その先の時間は彼の中ではもう少し長いのかな?

でも『次のX'masまで』でも『cherryの夏休みまで』でもなかったから。


SHINはびっくりするくらい大きな熊のぬいぐるみを抱えて帰ってきた。そして片手にはケーキの箱とかすみ草の花束。それで電車乗ったの?それとも歩いてたの?

プレゼントもケーキも、もちろん嬉しいけど、一番嬉しいのはそうやって帰ってきてくれたことだよ。

私のためにプレゼントを考えてくれていた時間と、私が喜ぶものは?って想いを巡らせてくれたことだよ。

玄関で熊のぬいぐるみとかすみ草を受けとって、両手で抱き締めながらちょっと泣けた。


夕食は二人でお鍋を食べる。一人暮らしのSHINの家にはお鍋の道具がなかった。

『一人でお鍋は食べないかな。食べてもコンロのとこに椅子持って行ってた。あんまり美味しくないよ。』

って言ってたから、冬に二人で卓上コンロと土鍋を買った。それから何度かしている。

向かい合って、何かが出来上がるのを一緒に見てるのは楽しい。SHINも同じことを言ってた。

食事のあとの片付けは、SHINが一人でやるって言ってくれたけど、一緒に並んでしたかったから私も手伝う。

二人で歌を歌いながら、ハモりながら片付ける時間も楽しい。

SHINは片付けのあと、ケーキの準備をしてくれる。数字型のロウソク、21。

テーブルから離れて、部屋の電気を消してピアノに向かう。

そして(allelujah)を歌ってくれる。

私のためだけに歌ってくれると約束してくれた特別な歌。何度聴いても心を掴まれるけれど、今日は小さな刺のようなものがチクチクする。

窓から漏れる月明かりと、ロウソクの灯りだけでSHINの姿を見つめている。はっきりと見えないけど、まだSHINはここにいる。私の大好きな彼の声がこの部屋に響いている。彼の声に共鳴されてロウソクの灯が揺れているんだ。

きっとこれが目に見えるSHINの声。

(allelujah)のあとに、Happybirthday。

『~happy birthday dear.cherry ~』

そこまで歌うと私の隣にくる。

『Happy birthday to you』

そして優しいkiss。

私はロウソクを小さく吹き消した。

ケーキには溶けたロウソクが少し落ちている。あのロウソクの部分を食べたら、SHINの声を食べたことになりそうな気がした。

SHINの声も、彼自身もすべて食べてしまいたい。私の中に。

そうしたら私が行くのかな?私の中のSHINと一緒に。

ロウソクを消したあと、SHINの首に腕をまわして抱きついた。そのまま跨いで彼の上に座る。できる限りの力で抱き締めた。

彼の肩に頬をのせて。何も言わずに。

強く抱き締めかえしてくれながら、SHINは私の背中をポンポンと静かなリズムで叩いてくれる。

しばらく黙ってその状態を続けていた。ロウソクの灯りも消えてしまった真っ暗な部屋で。

SHINには私の不安が伝わっていた。自分の言ったタイムラインのことをわかっていたんだ。

私の耳に唇をつけながら囁いた。

『まだ行かないから。』

彼の肩から顔をあげて、私からkissをする。

食べてしまうことができないから、密着した部分からひとつになっていくことを願いながら。

彼の体の変化を感じて唇を離した。すぐ目の前にあるSHINの顔が少し微笑む。

『・・でもcherry、今日はテーブルでケーキを食べよう。』

私もちょっと笑えた。

SHIN の鼻に軽くkissをする。

「そだね。」

この間、大変だったもんね。

二人で笑った。私も笑えた。

まだタイムアップではないよね。

カウントダウンは始まっていても。

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