First memory 72

= memory 72 =


9月30日土曜日。

当日はam7時半に〈SHELLEY〉に入った。

そんなに早く行っても、やることはないかもと思ったけど、ゴリもカバもツーちゃんもママももう来ていた。ゴリとカバは昨日帰らなかったみたい。

ゴリに言われて、更衣室に借りたレンタルスペースにツーちゃんと行く。

10時にレンタル衣裳屋さんから衣裳が届く。

結局かなりの量になった。

ツーちゃんと二人じゃチェック厳しいかも。

誰かが来たら応援に来てくれることになる。

レンタルスペースは〈SHELLEY〉のすぐ近く。

歩いて3分くらいのビルの会議室。

男性用と女性用とおかまさん用を借りた。

ゴリは二部屋でいいって言ったけど、それもこのパーティーのコンセプトの一環で、それを伝えるための広告費に含んでほしいとがんばったところだ。

三部屋目は小さい部屋だけど、ツーちゃんみたいな人が着替える部屋をどうしても作りたかった。

それぞれの床にブルーシートを広げて、靴を脱いであがれるようにする。

結構肉体労働。二人でふらふらになった。

ブルーシートを敷き終わったところで、ツーちゃんと雑談をする。

今回のイベントをすることになった経緯や、イベントのツールが私の卒業制作になる話を一から説明した。

『なんかcherryって、ゴリの掌の上で転がされてるみたいだよね、いっつも。あのkissした日からずっと。』

やっぱり?でも転がっていく方向は、いっつも最高の結果に繋がってるけどね。

『cherryがゴリの言うこと聞かなかったのって、SHINのことだけだよね。』

缶コーヒーを飲みながらツーちゃんがポツンと言った。

そうだった。反対されたんだ、最初。

でも今は応援してくれてるよね。

『私、時々思うんだけど、ゴリって本当にオカマなのかなあ。なんか違う気がする。女性ホルモンだめだし。お客さんもオンナばっかだし。もう一個の仕事のときはスーツ着るし。』

スーツ着るんだ?!似合うだろうな。

「でもお化粧して〈SHELLEY 〉で働いてるよ。ドレス着てるし・・」

私の言葉が終わらないうちに、レンタル衣装屋さんが来た。荷物がどんどん運ばれてくる。

早く誰かきてー!


スタイリスト ツーちゃんは私の衣装を妖精にした。

緑のかつらを被れって。

一生の間に緑のかつらを被る日がくるとは思わなかったよ。これからも二度とないと思う。

衣装はツーちゃんとお揃い。

今日、ツーちゃんには役がある。

「シェイクスピア(夏の夜の夢)の妖精パックになって!」

って言ってある。

『ツーのパックっていいわねぇ!適役!』

ってゴリ。そうでしょ!

ツーちゃんは目をパチパチした。

『えー?何するの?』

ツーちゃんに(夏の夜の夢)の簡単なストーリーを話した。

真夏の夜に森の中で起こってしまうグチャグチャ。パックのせいでいろんな人が、間違った相手に恋をしてしまって起こるハプニングたち。

シェイクスピアの喜劇。

「お客さんを巻き込んで、舞台にあげちゃったり、ゲームをしてもらったりするの。あのツーちゃんの演技力で!」

ツーちゃんは演技力って言われて、その気になったみたい。

カバは主役の恋人たちの女性ハーミア。

衣装はお姫様みたいなドレス。本当はツーちゃんが着たかったやつ。

もちろんゴリが男性のライサンダー。

王子様のちょうちんブルマーに最後まで抵抗してたけど。でもきっと似合うよ。

始まる前に見に行きます。プロデューサーとして。

今日の〈SHELLEY〉は夏の夜の夢の森。

観客を引っ張りこんで。

簡単なストーリーとシナリオはあるけど本当に簡単なので、あとはその場の成り行きに任せていく。

その中で何回かのShowもある。

ちなみにママは着物じゃなくてドレス。

どこにいてもわかるようにって、マリーアントワネットみたいなかつらを被されてた。

〈Noon 〉は私が妖精で、J さんは袖にはのれんみたいなのがついてるプレスリー。

SHINはCrown。

『えー』って言ってたけど、気に入ってるよね?

夕べも部屋で着てたしね。

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