First memory 67
= memory 67 =
マスカレード〈crazy night〉のことを話したら、ゴリはフーンって言った。
カバはおもしろいって言ってくれたのに。
『よくわかんないわ。そうだ企画書、書いてよ。』
企画書?私の頭の中のことに?
レポート用紙に簡単に書きながら説明する。
手帳に描いてたポスターの落書きも見せた。
『これしたら、うちはいくら儲かるの?経費どんくらいかかるの?』
そんなの知らないよ。
『イベント企画するなら、そういうこと含めてないとだめでしょ。作ったあんたはいくら儲かるの?』
楽しくないじゃない!楽しいこと考えろって言ったくせに。
「・・楽しいこと考えたのに。」
『企画するときはそれでいいのよ。でもそれを形にするときは楽しいだけじゃだめでしょ。商売なんだから。"創る"と"作る"は違うの。』
私の手帳に漢字を書く。
『創るときはご機嫌さんで、作るときは汗をかくの。』
「なにをすればいいのさ。」
ゴリは私がとんがらせた口をほっぺたを引っ張って直した。
『まず"企画書"書きなさい。お金の計算は手伝ってあげるから。それからポスターと、チケット、チラシ、リクエストカードだっけ?サムネイル描いて。ポスターのは10本ね!』
って。ゴリ、学校の課題は制作物だけでいいんだよぉ。
『明日、見せてね。』
ゴリはそう言うと、どっか行った。
ひどいよ、自分でご機嫌さんでやれって言ったのに。
ほっぺたを膨らませてたら、カバがアボカドミルクを持ってきてくれた。最近、おいしく感じる。
『ゴリはここのイベント企画とか、経理のこととかいろいろ全部やってるからねえ。厳しくなるのかもね。でもきっと勉強になるわよ。』
そう言って頭を撫でてくれた。
そうだ気になってたこと。
「カバ、昨日SHINどうした?ちゃんと帰れた?私、帰ってて怒ってなかった?」
あれからSHINとはまだ話してない。
『ここで寝かせて、朝帰ったわよ。あなたがいないって言って、ゴリに叱られてたわ。ちゃんと連れて帰れない状態になったもんが悪いって。』
「SHIN、お酒呑めないの?」
『ちょっとは呑むけど、すぐ寝るわね。ずっと呑まないできたからね。』
そうなんだ。
『お酒呑むとお金かかるからね。その分、あっちにまわしてるんじゃない?カメラの方に。』
(SHINはお金貯まったら、戦場へ行く)って
ゴリが言ってた。
楽しいこと我慢して、お金貯めて戦場へ行くの?どうしてなんだろう。
『オーナーとかスポンサーにお金出してもらうから、自分が遊んで使うのは遠慮してるんじゃない?あの子らしいけどね。』
って。どうしてそこまで危ないところに行きたいんだろ?仕事だから?
「なんでそんな仕事を選ぶんだろ?」
私の質問にカバは困った顔をした。
『それはいずれ自分でSHINと話すことでしょ?』
カバに言われてそれもそうだと思ったし、何よりも会いたかったから、そのままSHINのマンションに行った。
でも合鍵持ってないから公園で待っていた。
ブランコに乗りながら、ゴリの言ってたことを考える。
SHINの写真の仕事のこと。昨日のツーちゃんの完璧。壮行会でどんなリクエストにも答えて演奏してたJ さんとSHIN。いっつも遅くに帰ってくるお母さんとお父さん。朝練があるからって学校の近くに引っ越したお兄ちゃん。〈SHELLEY〉のみんなの練習を重ねたラインダンス。
ブランコを降りてベンチに座って、レポート用紙を出した。
まず〈crazy night〉のコンセプト。
中身、場所、SHELLEY だけじゃ狭いから姉妹店のNoon も。それぞれのお店の使い方。参加可能人数。お客さんができること。スタッフがやること。
いろいろ書いて、ゴリに教えてもらいたいことをひとつひとつの隣に赤字で書いていった。
しんどくなってきたら、サムネイルを描いた。
そっちは楽しい。
気がつくと公園は暗くなっている。
ベンチの私に、園灯のスポットがあたってる。
※サムネイル→〈親指(thum)の爪(nail)〉
ポスターなどのデザインを、何十分の一の小さなサイズで簡単に書いたもの。写真の位置や文字とのバランスがわかる程度の、小さく描いたアイデアスケッチ
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