First memory 66

= memory 66 =


そんなにすごくは酔ってないよ。

適度に気持ちよくて、なんか目にするものみんなおもしろいくらいだから。

ゴリ曰く『ご機嫌さん状態』が気持ちいい。

ほんとに楽しかったなあ。

この間の壮行会といい、今日のSHOWといい。

こんなに短い間にこんなに楽しいことをふたつも初体験できるなんて、なんてラッキーなんだろう!

こんな世界は知らなかったよ。

でも周りの友達も知らないよなあ、きっと。

教えてあげたい気持ちもするけど、教えられないけど。

電車の前の席にはOLさんが座っている。

さっき〈SHELLEY〉で、ゴリーって叫んでいたのもOLさんだったなあ。

ゴリの言葉を思い出す。

自分の楽しいことを考える。

壮行会みたいなのがいい。みんな一緒に楽しめるの。

ツーちゃんみたいなドレスや、葵ちゃんみたいな衣裳を着たいと思ってるOLさんっているんじゃないかな?

もしかしたら、ドレス着てみたい男性も。

いつもの顔じゃない顔をしてみたい人って多いかもしれない。私がCHERRYになってるみたいに。

・・マスカレード・・

スタッフもキャストもなんらかの形で変装して楽しむイベント。

できればみんなハメを外しまくって、SHELLEYBOMBって叫ぶ!

絶対、すっきりする!

そんな一夜限りのイベント<Crazy night>!

私はそのイベントをみんなに知ってもらうためのツールを作ろう!ポスター、チラシ、チケット、他はなに?

ポスターのモデルは、ツーちゃんのマリリン!

それに葵ちゃんのシェリー!

もうSHELLEYのみんな!

カメラマンはもちろんSHIN!

男も女もオカマもなんにも関係なくて、聴きたい人が聞いて、歌いたい人が歌うステージ!参加したければ、一緒に踊れる。

空想の中のことだもん。好きに考えるよ!

なんかすごく楽しい!!

ポスターのデザインを手帳に画いてニヤニヤしていたら、乗り越しそうになった。


そーっと玄関を入って、キッチンを通り過ぎようとしたらお母さんがいた。お茶漬け食べてる。

私もびっくりしたけど、お母さんもちょっとびっくりしてる。今日は友達のとこ泊まるって言ってたから。

『・・ケンカしたの?』

えっ?友達とってこと?

『まったく、あなたも孝も。』

お母さんはちょっと笑った。

『まっすぐに育ってほしいとは思ってたけど、大丈夫なのかしらね。そんなわかりやすくて。』

ばれてるのかな?

『どんな人なの?あなたのことだから、年上?』

言葉が出てこない。当たりです。

「・・大切にしてくれる。」

そう感じてる。

お母さんはふーっと息をついた。

『保健体育で習ったことはわかってるでしょ?ちゃんとしなさい。まだ親になる覚悟がないなら。』

お母さんが見つめてくるから頷く。

『病気もね。慎重だから、変な人には近づかないだろうし、まじめだから、軽い遊びでないのはわかってるけど。今の子たちを見てるから、自分の時代の貞操観念押しつける気はないけど。自分も相手も大切にしなさい。』

お兄ちゃんにも言われた。

『孝にもバカな嘘いらないって、あなたから言っときなさいよ。お父さんにはうまく言っとくから。

犯罪や他人の人生を狂わせないかぎり、やってみたいと思ったことをやってみなさい。してしまったって後悔より、しなかったって後悔の方が、生涯引きずるから。』

お母さんの言葉に

「ありがとう」と声に出して頷いた。

そして、進路のことを話した。

相談にはいくらでも乗るけど、自分で決めなさいって。やっぱり。

『よく考えればいいのよ。学校が決めた締め切りなんて学校の都合だから。これから長い人生なんだから。たっぷり悩めばいいから。』

ここにも無償の愛があったんだよね。

近すぎて気づかなかったけど。

ありがとう。

嘘ついててごめんね。お兄ちゃんの分も。

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