First memory 50

= memory 50 =


『顔洗ってきて。朝ごはんは僕が作ります!昼だけどね。』

洗面所から出てきたSHINさんはそう言うと、やっぱり鼻歌を歌いながら、とっても手際よくご飯を作りだした。

買ってきてもらった歯ブラシで歯を磨いて、買ってきてもらった洗顔で顔を洗った。

ちょっと迷ったけど、歯ブラシをSHINさんの歯ブラシが入っているコップに入れてみた。

いいのかな?やっぱり出して洗面台の上に置いた。洗顔も並べて。

買ってきてもらった化粧水をつけて、

買ってきてもらった口紅をつけてみた。

桜色。


手持ちぶさたになって、ベランダに出る。

夕べはわからなかったけど、マンションの隣には公園がある。

公園の木が目隠しになって、部屋の中が見えないからか窓にはカーテンがなかった。

小さな子供たちの笑い声が聞こえる時間。

おそらく学校では1限目の授業が終わった頃、なんの授業だっけ。

さっき干したシーツが風に揺らぐ。

それを見て思い出して赤面している。

部屋に入ると、もうテーブルにご飯が並べられている。手際よすぎ。

私がんばらないと。

チーズトーストと目玉焼きとサラダ、ミネストローネ!きれい。

『食べよ。』

SHINさんに言われて椅子にかけた。

さっきの買い物の残りはまだテーブルの上に並んだまま。

それを見てまたうれしくなる。

「いただきます。」

手をあわせて言うと、SHIN さんも同じように

『いただきます。』

と言った。

すごくお腹減ってるのに、恥ずかしくて食べれない。

ハンバーガーじゃないけど。

あの時とはなんか違う恥ずかしさだった。

あの時と違って、SHINさんは別に見つめていないのにね。

牛乳を飲んでサラダを食べていたら、ふいにSHINさんが目をあわさずに言った。

『cherry 、シーツ洗ってくれてありがとう。それから、おかえりなさいって言ってくれてありがとう。ここに来てくれてありがとう。』

はずかしくて、うれしくて、ますますご飯食べれなくなっちゃうよ。

SHINさんは夕べからずっと、私のことを

『cherry 』って呼んでくれてる。

『cherryちゃん』じゃなくて。

そう言えば、追いかけて来てくれた日も

『cherryー!』って叫んでくれたなぁ。


スキヤキパーティーを無断欠席したことを<SHELLEY >に謝りに行くと言ったら、SHINさんもついてくるって言ったけど、それは丁重にお断りした。

私がした約束を私が破ったんだから自分で謝らなきゃ。

それに・・・

二人で顔揃えていくのは恥ずかしすぎるじゃない。考えただけでも赤面が止まらない。

あんまり早く行ったら、ゴリさんに学校さぼったことばれるから、いつもの時間に行くことにして午後を二人で過ごした。

これまでSHINさんが撮ってきた写真を見せてもらった。

外国の子供の写真が多かった。

中にヘルメットを被ったSHINさんの写真があった。

笑ってる顔だったけどちょっと辛くなる。

ゴリさんの言葉を思い出す。

『cherryには厳しいでしょ?』

がんばるもん。

kissしてほしくなる。言わないけど。

SHINさんが、コーヒーを入れてくれた。

コーヒーよりもkissしてほしい。

そう思いながら受けとった。


SHINさんに駅まで送ってもらう。

今日は手を繋いで歩いた。

ツーちゃんに教えてもらったみたいに。

『ほんとに行かなくていい?』

SHINさんが聞く。

『はい。大丈夫です。そのまま練習して〈Noon 〉に行きます。』

それもこれも日常になりますように。

『今日は聴きに行けないけど、がんばってね。』

「はい」

頷いた。そこでやっとkissしてくれた。

お外ですけど。

『俺、カバに殺されるよね?』

そう言って軽く抱きしめてくれた。

『金曜日に会える?』

頷く。

『Noon に聴きにきて。』

「はい」

頷く。

シャワーを借りたとき、私の歯ブラシがSHINさんの歯ブラシと一緒にコップに入れてあった。

うれしかった。

でも、週末にも外泊って許してもらえるかなぁ。

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