First memory 40
= memory 40 =
控室を出るときに、SHINさんを振り返らなかった。振り返ったら魔法が解ける―そんなお話なかったっけ?
廊下を一歩づつホールに向かう。
さっきまで8センチヒールを履いていたのが、3センチ低くなったからか5センチヒールが歩きやすい。SHINさんのプレゼントだからかな?
ホールに出るドアを開けた。
客席は暗くてわからないけど、そんなに混んでない。
そう言えばキャンセル入ったって、さっきっスタッフの人たちが話してたな。
ちょっとよかったよ。でもキャンセルしたこと、その人たちが後悔するくらいのシンガーになろう。
今日は無理でもいずれそうなろう、6ヶ月の間に。マイクスタンドまでの間にそんなことを考えていた。
マイクスタンドについた。
Jさんを振り返る。ちょっと笑って頷いてくれた。私も同じようにちょっと笑って頷いた。その様子にJさんが少し驚いているみたい。私だって驚いているもん。
4人の魔法使いの魔法はすごい。
今、ここに立っているのは、朋でもcherryでもない気がする。
客席を見た。スポットがあたる。
IT’S SHOW TIME!
「・・・皆様こんばんは。ようこそ Noonへ。CHERRYです。どうぞお楽しみください。」
さすがにドキドキしたけど、Jさんと何度も練習したから大丈夫。
ここが終わったらだいぶ気持ちが落ち着くよ。
マイクの前で話すより、歌う方が好きだもん。
Jさんのピアノが歌いだす。
さあ一緒に歌おうって誘ってくれる。
(allelujah)が始まるー歓喜のときだよ。大丈夫。大丈夫。最初はそう思っていたけど、1コーラス終わったらそれも思わなくなった。
大好きな歌を一人で。
魔法をかけてもらって。
こんなステキな場所で。
こんなステキなドレスで。
こんなステキな靴で。
(100万回のkissの最初のkissをしよう)
6ヶ月間で私は何曲歌うんだろう?
それはわからないけど、今が最初の1曲。
それはまちがいないから。
歌い終わった。
Jさんのピアノの余韻が残っている間に拍手がおきた。ちょっとホッとする。
(Raining)ーこの娘の不安がわかるよ。言い様のない孤独もわかる。リアルタイムで。
大人になっても歌えるかもしれない。でも、今ほど気持ちに寄り添って歌えるかな?
思い出は思い出でしかないから。
また、拍手をもらう。日本語の歌も合格かな?
そして、(Desperado)ー今日はたった一人の人を想いながら歌わせて下さい。
さっきから、ホールの一番後ろで、他のお客さんが引くんじゃないかってくらい拍手をしてくれている、たった一人の人を。
どうしようもなくても止められないって、歌の中だけならいいよね?せつないけど。
客席から拍手をもらった。
誰も"Bravaー"って言ってはくれないけど。でもお客さんはこっちを見てくれてる。フォークを置いて。
終わった。できた。
大丈夫?J さんを振り返る。
しっかりと頷いてくれた。
その時、誰かが椅子をガタガタ言わせて立ち上がったみたい?
ホールは暗くてはっきりとは見えないけど、男の人が近づいてくる。
酔っぱらってるのか、ちょっとふらふらしてる。
でも拍手してくれてる?
『うまいなぁ~リクエスト頼むわあ。』
そう言いながら近づいてくる。
知らない!リクエストってなに?!
酔っぱらってるよね!来ないで!怖い!
■Today 's Favorite sounds■
allelujah /Fairground Attraction
Raining /Cocco
Desperado /Eagles、Carpenters
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