First memory 26
= memory 26 =
最初にステージに立ったのは〈Noon 〉のJAZZバンドの人たちだった。
『皆様、お疲れさまです!〈Noon〉のアイドル、彩のしばしの別れのために、壮行会を開いていただきました!オーナーありがとうございます。みなさん、今夜は彩を肴に飲んで、食べて、歌って、大いに騒ぎましょう!』
おおーって地響きみたいな歓声が消える前に、ステージが始まった!〈TAKE 5〉!
「かっこいいー!」
思わず声が出ちゃった。と、ゴリさんが呼びに来た。
『cherry、ママが呼んでる。オーナーに挨拶に行くわよ。』
ドキドキです。
ゴリさんに手を引っ張られて人の間をすり抜けて、ホールの中央に辿りついた。
ママさんがうなづいて、オーナー様の耳元で何かを囁いた。私は車椅子の横まで行って直立不動です。
オーナー様はこちらを見た。ママさんに似てる。
「はじめまして。大下朋です。この度は採用をしていただいてありがとうございます!」
がちがちです。
チャーンチャーンチャーンって、お辞儀の音が聞こえそうな私のお辞儀に、まずママがふいた。
『ねー、こういう子なのよ。かわいいでしょ?』
『でも、歌はなかなかですよ。』
一緒にきてくれたゴリさん。
ハードルあげてます。このあと聴かれるのに。
『そうか。"CHERRY "やったね?Jに合格もろて、ゴリにそう言わすとは楽しみやね。このあと聴かせてもらえるんやね?』
小さな声でそういうと、にこっと笑ってくれた。
『が・・がんばります!』
ガチガチのままです。ママさんがまた笑った。
『ねー!こういう子なのよ~!』
オーナー様もつられて笑ってくれた。
『あんまし、緊張せんと、内々の会やから。楽しみなさい。』
「ありがとうございます!」
お礼を言うけど、どうしても運動部になってしまうよ。ゴリさんも笑っている。
彩さんと違いすぎるね。大丈夫なのかな、私。
ステージでは彩さんが〈TAKE 5〉を歌ってるみたい。すごい。Jさんのピアノもいつもとは感じが違った。私の心がまた見えたのか、
『Jは天才なのよ!』
とゴリさんが耳元で言う。
JAZZバンドの演奏で次に歌ったのは、ツーちゃんだった。
彩さんに対抗してか、いつもに増して色っぽいよ。ツーちゃんの歌を聴くのは、初めてだけど上手だ。
さくらんぼの枝をあっと言う間に結ぶだけあって、英語もなめらか。
ツーちゃんステキだよ!
あっちからも、こっちからも歓声が上がる中で、ツーちゃんはドレスの裾を持ち上げてお辞儀をした。その動きも滑らかだ。
<SHERRY>のショーが見たくなる。
歌い終わると、オーナーのところに走って行った。オーナーの横には赤いドレスの彩さんと、白いドレスのツーちゃんがいる。まるで年末の紅白歌合戦みたい。
ステージには、SHINさんがあがった
〈HELP!〉。
この間 聞いたのは2曲ともスローな感じだったから、声も歌い方も優しかったけど、こんな風に歌うとこんな声になるんだなあ。
間奏ではかなりアレンジを加えて、ピアノと遊んでるみたいだ。立ち上がって弾いてる。
なんか、やっぱりかっこいい。
SHINさんが歌い終わったときに、彩さんが叫んだ。
『SHIN―、〈honesty〉歌ってよ~!』
やった!私も聴きたい!
でもSHINさんは
『ヤダーー!』
と言って〈Uptown Girl〉を弾きだした。
え~、聴きたかったなあ、もう一回。
『ねえ、ボツボツ、cherryの番くるけど、準備は大丈夫?』
宴を最高に、ただ楽しんでいる私の様子に気がついて、さすがに心配になったのか、カバさんが声をかけてくれた。
一瞬で血の気が引く。
背中に冷や汗が流れています。
『cherry!顔色がないよ?!』
隣にいるツーちゃんの声が遠くから聞こえる。
逃げたい!
■Today 's Favorite sounds■
TAKE 5 / JUJU
I wanna be loved by you / Marilyn Monroe
HELP!/ The BEATLES
Uptown Girl / Billy Joe
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