第117話 住吉の岸の姫松 【古】
昔、帝が住吉に御幸なさった。
住吉の岸の姫松は、私が初めて見たときからずいぶんと月日が経ったが、いったいどのくらいの世を経ているのだろうか。
御神が姿を現しなさって
私はあなたと親しい仲であるが、あなたはそれをご存じないようだ。ずっと久しい昔から、私はあなたをお祝いしているのです。
【定家本】
昔、帝、住吉に行幸し給ひけり。
我見ても 久しくなりぬ 住吉の 岸の姫松 いくよ経ぬらむ
おほん神、現形し給ひて、
むつましと 君はしら浪 みづがきの 久しき世より いはひそめてき
【朱雀院塗籠本】
無し。
【真名本】
昔、帝、住吉に行幸し給ひたりけるに。
吾れ見ても 久しくなりぬ 墨吉の 岸の姫松
【解説】
『古今集』0905
『玉勝間』
「昔みかど住吉に云々」、此條すべて詞たらず、
「我見ても」の歌も、たが歌ともわきまへがたく、大神の現形も俄なり。
他條の例にならひていはば、「昔男、みかどの住吉に行幸し給ひける、御供につかうまつりてよめる、「我見ても云々」、とよめりければ、「大神云々」」、などこそあるべけれ。
「むつましと云々」の歌は、何事ぞや、二の句を、「君はしらずや」とすれば、大かた聞ゆるやうにはあれど、猶いとつたなし。
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