第80段 藤の花に雨そほふる 【古】
昔、衰微した家に藤の花を植えた人がいた。三月末、雨がそぼふる日に、その藤の花を折ってある人のもとへ奉ろうとして詠んだ。
雨に濡れながら強いて折りました。今年の春はもう何日も残っていないと思ったので。
【定家本】
昔、おとろへたる家に、藤の花植ゑたる人ありけり。三月のつごもりに、その日、雨そほふるに、人のもとへ折りて奉らすとてよめる。
ぬれつつぞ しひて折りつる 年のうちに 春はいく日も あらじと思へば
【朱雀院塗籠本】
むかし。おとろへたる家に藤の花うへたる人ありけり。いとおもしろうさけりけり。やよひのつごもり。雨のそぼふるに。人のもとにおりてたてまつるとて。
ぬれつゝそ しゐて折つる 藤の花 春は幾日も あらしと思へは
【真名本】
昔、
【解説】
『古今集』0133
やよひのつごもりの日、雨の降りけるに、藤の花を折りて人につかはしける
在原業平
濡れつつぞ しひて折りつる 年の内に 春はいくかも あらじと思へば
「やよひのつごもり」とは春の終わりの日という意味。今で言えばゴールデンウィークの終わり頃。
『玉勝間』
「やよひのつごもりに、その日」云々、「その日」といへる詞、いたづらにてつたなし。
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